高野和明 『6時間後に君は死ぬ』 | 映画な日々。読書な日々。

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6時間後に君は死ぬ/高野 和明
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回りつづける運命の時計未来を賭けた戦いが始まる!稀代のストーリーテラーが放つ、緊迫のカウントダウン・ミステリー運命の岐路に迷う時、1人の予言者が現れる。「6時間後に君は死ぬ」。街で出会った見知らぬ青年に予言をされた美緒。信じられるのは誰なのか。「運命」を変えることはできるのか。未来は決まってなんかいない 明日を信じて、進むだけ


タイトルにすごくインパクトがあったので手に取りましたが、タイトルからくるイメージとは若干違う作品でした。でも面白かったですよ。


人の非日常の「ビジョン」が見えるという山葉圭史を裏の主役とした連作短編集。そうそう、てっきり長編だと思っていたので、短編だったのも少し驚きでした。


『6時間後に君は死ぬ』

24歳最後の日、渋谷で友達との待ち合わせの場所に向かう途中、原田美緒は青年に告げられる。「6時間後に君は死ぬ」と。最初は取り合わなかった美緒だが、その青年・圭史がすぐ未来のことを言い当てたことと、自分を殺すかもしれない人物に心当たりがあった美緒は、圭史と共に未来を変えようとする。


あと6時間、5時間・・・死までのカウントダウン。登場人物は少ないので結構すぐに犯人は予想できましたが、それでもドキドキハラハラしながら読みました。


『時の魔法使い』

シナリオライターを目指しながらも、なかなか夢は叶わず、プロットライターと呼ばれる仕事をしながらぎりぎりの生活をしていた未来。幸せだった子ども時代のことを思い出し、郷愁にかられて郷里を訪れた未来は、そこで9歳の時の自分と出会う。


これはミステリーというよりも、ファンタジーっぽいお話でした。夢がなかなか叶わなくて、どんなに苦しくて辛い生活でも、「今のままの自分でいい」、そう思えるっていいな、と思いました。何かを得る為には何かを捨てなくてはいけないかもしれない。今の自分自身を愛しいと思えるって本当に素敵なことだなぁと。


『恋をしてはいけない日』

常に男をとっかえひっかえしていて、彼氏を切らしたことがなかった未亜。いつものように突然彼氏を振ったものの、めずらしく二週間新しい人を見つけられずにいた未亜は、友達の知り合いの占い師として紹介された男から「今週の水曜日、その日は恋をしてはいけない」と告げられる。しかしその男に恋をしてはいけないと言われたまさにその日、未亜は運命的な出会いを果たす。


一見モテモテで男に不自由していなそうな未亜。それどころか、付き合う男は突然捨てる、ある意味高飛車な女に見える未亜ですが、本当はすごく恋愛が下手なんでしょうね。自分が傷つくのが怖くて本当の自分を見せることも、本音を言うこともできない。そんな未亜が初めて素直に自分を出せる相手に出会えたのが、「恋をしてはいけない日」。展開は予想のつくものでしたが、初めて本当の恋に出会った未亜の気持ちの切り替えがあまりにも早いのが少し気になりました。未亜はちゃんと変われたのか??


『ドールハウスのダンサー』

プロダンサー志望の香坂美帆は、実力はあるのにいつもあと一歩のところでオーディションに不合格し続けていた。それでもいつか自分がステージで踊ること、心から笑える日を夢見て頑張っていた美帆。

もうすぐ閉館するドールハウスミュージアム。そのミュージアムは開館する前から閉館する日が決まっていた、そして最後にやってくるたった一人のゲストの為に作られたのだという。そしてそのミュージアムにはダンサーの生活を描いた7つの模型があった。


これはよかったです~。ドールハウスで働く主婦が7つの模型を順に観て行くのと、美帆の生活とが交互に描かれていきます。そして報われない美帆のオーディションの結果を知りつつも、ドールハウスで働く主婦と同じようにステージでスポットライトを浴びて踊るヒロインの姿に希望を見出していました。これは物語の展開がとても上手いですね。そしてこのミュージアムを作った今の館長の叔母さんの思いが胸に響きました。「あなた一人を幸せにするのが、叔母の最後の夢だった。」


『3時間後に僕は死ぬ』

今まで自分のビジョンは一度も見たことがなかった圭史は、ある人のビジョンで自分が死ぬ姿を見てしまう。しかも自分だけではなく、その会場にいるほとんどの人が死ぬ未来を。圭史は自分が犠牲になってでも、残された時間でその場にいる人たちが助かる未来を変えようと翻弄する。


タイトルから一話目とのつながりがあるのがわかりますね。読みながら、ほんのちょっと行動を変えるだけで未来なんて絶対変わるはずなんだから、と思いながら読み続けましたが、圭史が見たビジョンは未来を変えようとして起こした行動まで加味された未来だったのがちょっと怖かったですね。本当に未来は変えられないのか??圭史のビジョンは今まで一度も外れたことがないという前提があったのでちょっとドキドキでした。この話の展開については、若干こじつけっぽいような感じもしてしまったのと、惨劇の原因がイマイチな感じでしたが、一話目からの繋がりはよかったです。


自分の未来はちょっと知りたかったりするし、知りたくなかったりもする。でも知ってしまったらやっぱりつまらないし、人に決められてしまっているような気がしてちょっと嫌かな、と思います。結局自分の行動の一つ一つが未来につながっていくはずだから、いい事も嫌なことも、楽しいことも辛いことも全部含めて自分で未来は切り開いていくべきだと。でも誘惑には負けてしまいそう。「これはやらないほうがいいよ」とか「こっちを選んだ方がいいよ」とか、教えてもらえたら人生うまくいきそうだもんなー。


個人的には毎回登場する山葉圭史がすごくかっこよくて気に入りました。ミステリーというより、ヒューマンドラマっぽいお話が多い短編集だったかな。


★★★