小泉すみれ『バージョンアップ はちきれそうなあたしの12か月』 | 映画な日々。読書な日々。

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バージョンアップ はちきれそうなあたしの12か月
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livedoor BOOKS
書評 /国内純文学

………変わりたい!恋も仕事もままならない山田まゆ、28歳。 3年で13キロ太ってしまった「あたし」に、転機は訪れる?痩せたら何かが変わるかも! バージョンアップを目指す女子たちに捧ぐ最高にチャーミングな物語。


本が好き! より献本していただきました。


これを読んだら「私も頑張ろう!」とダイエットしたくなるような本なのかと思っていたのですが、ちょっと違いました。


3年間で13kgも太ってしまっていた主人公の山田まゆがダイエットに励む話ではあるのですが、そんなにダイエットに重きを置いた話ではなく、また設定自体もリアリティがなさすぎでした。


まず山田まゆが元芸能人という設定がイマイチです。つまり一般人の私たちからはちょっと遠い存在すぎる。そして親友のエミはスポーツキャスター、姉のナオミはアナウンサー、まゆはテレビ局の広報部とこれまたちょっと違う世界な感じなんですよね。お金の使い方も豪快だし、ちょっとセレブな感じ?


また自分が13kgも太ってしまったことを人から指摘されるまで気づかないなんてことはありえない。だって158cm、48kgだった人が、61kgになるって相当でしょ。そんなになるまで自分で気づけないなんて女じゃないですよ。


物語はダイエットを決意した12月から1ヵ月ごとに、まゆの1年間を描いています。

ジムに通って筋肉を語れるような女になったり、占い師を頼ったり、はかるだけダイエットをしたりと、一応ダイエットしようとはしているものの、その頑張りはたいして描かれていません。つまりたいしてまゆはダイエット頑張っていないんですよ。その為に体重の変化もなし。でもこのあたりは結構気持ちわかりました。ダイエットしようと思っても、よほどの決意がないとなかなか頑張れないものなんですよねぇ。ダイエットとか言いながら結構食べちゃったりするし。


その代わり、まゆに変化があったのは男関係と仕事。

元彼の結婚式で再会した二ノ宮先輩に誘われて、先輩が経営するハウスウエディングの会社でウエディングプランナーへの道を歩みだしたまゆ。そしてカリスマプランナーと呼ばれる中谷ユキにも認められ、彼女の元で研修を受けることになるのですが、これまたちょっとご都合主義。上手く行きすぎな感は否めないです。


また痩せて綺麗になってからならまだわかるのですが、まだ全然痩せられていないのにまゆはモテモテ状態。痩せるまで恋は封印!と言っているまゆに沢山の男たちが寄ってきます。二ノ宮先輩、元カレの藤森君、小学校の同級生だった後谷グループ御曹司の後谷君・・・。

二ノ宮先輩なんか、彼氏でもないのに花束持ってきたり、クリスチャン・ルブタンの靴を2足も買ってくれたり、ちょっとありえませんよ。超金持ちの御曹司後谷君は、小学生以来の再会なのに、小学生の時からずっと好きでした、って・・・。


痩せて綺麗になってモテたいって思ってる太めの女の子の為の本なのかと思っていたのに、主人公のまゆがデブでもモテモテ、仕事も順調って、これじゃあ痩せて頑張ろうと思ってる人の共感は得られないでしょ、と思ってしまいました。


そしてたいしてダイエットの頑張りがみられないまま、最終的にはいつの間にか痩せてるまゆ。おいおい、結局どうやって痩せたのよ?どうやって辛い時期を乗り越えたのよ?どうすれば痩せられるか、読者はそこが知りたいのに、これじゃ全然だめじゃん。


また物語もあれだけ思わせぶりな態度をとっていた二ノ宮先輩の行動や、後谷君に起きた出来事は突然すぎて、そんなのあり?と言いたくなるような展開でした。二ノ宮先輩については、中盤まで結構いい男っぽく描かれていたのですが、後半に起きた置き去り事件には閉口。ありえない!!なんだこの男は。


随所に実在の芸能人やブランド名を羅列している箇所がみられるのも、わかりやすいといえばそうですが、物語に入れるのはちょっとどうかと思いました。


とは言え、全然つまらなかったわけではないです。テンポは良いし、ananウェブに掲載されていただけあって、華やかでおしゃれな感じが漂っていて、イマドキっぽい感じでした。そしておっと私も飲んで食べてばっかりいる場合ではない、という気持ちにはなれました。


ちょっとセレブな女の子のダイエット&お仕事&恋愛物語といったところでしょうか。良くも悪くもananらしい感じがしました。


★★☆