小手鞠 るい 『空と海のであう場所』 | 映画な日々。読書な日々。

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空と海のであう場所/小手鞠 るい
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わたしたちは、27歳だった。好きで好きでたまらないのに、互いを傷つけ合うことでしか、その気持ちを表現できない、棘だらけの薊のようだった。会いたい。どんなに今は離れていても…。恋愛小説の名手による、魂の愛の物語。


ファンタジーっぽい、優しいお話でした。


13歳の時に風の子学園という施設で出会った木葉とアラシ。その頃からよく嘘をついたアラシ。いや、アラシにとっては嘘ではなくて希望だったのかもしれない。そして風の子学園で一夏を一緒に過ごした後、アラシとは離れ離れになった。


それから10年後、二人は再会し、一緒に暮らし始める。アラシのことをずっと想っていた木葉。木葉のことを想っていたアラシ。木葉はアラシの作家になるという夢を応援し続けた。けれども一緒に暮らし始めてから4年後、二人に悲しい別れがやってくる。


アラシと別れて5年後、イラストレーターとなった木葉の元にアラシが書いた童話の挿絵の依頼がくる。それはかつて約束した木葉のお話、「泥棒猫」の物語だった。


出会いと別れを繰り返してきた二人。アラシが書く童話、泥棒猫の物語にはアラシの想いがたくさん詰まっています。そして物語からアラシのメッセージを受け取る木葉。二人の偶然の再会は必然だったのかもしれない。


大人になっても地に足がついていない感じで危ういアラシは、とても幼くて守ってあげなくてはいけないような青年。正直私はアラシみたいな人は面倒くさすぎて嫌ですが、でもきっとそれは彼が幼いころに受けた傷のせい。アラシは木葉を失って初めて一番大切なものは何なのかに気づく。そんなアラシが書く童話がとても優しくていいです。そしてその泥棒猫の物語と現実がリンクしていきます。


「きみが信じればこのお話は真実になるし、信じなければ・・・ただの嘘っぱちになる。嘘と真実は紙一重ってこと。」「僕の言ったこと信じる?」


真実は何なのかではない。信じれば真実になる。そんな考え方はとても夢がある。そして大人になってもそんな夢を持ち続けていた二人。子どもの頃、アラシが話した「魂が粒子となって会いたい人の所に飛んでいく」その空飛ぶ粒子の存在を信じ続けた木葉に起きた奇跡。


大人目線で突っ込んでしまうと元も子もないですが、恋愛ファンタジーとしてこの世界に浸かって読めばなかなか素敵な物語だったと思います。


★★☆