『ブラックブック』@テアトルタイムズスクエア | 映画な日々。読書な日々。

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ブラックブック
1944年、ナチス占領下のオランダ。美しいユダヤ人歌手のラヘルは、南部へ逃亡する途中、ドイツ軍により家族を殺されてしまう。レジスタンスに救われたラヘルは、エリスと名を変え、髪をブロンドに染めレジスタンス運動に参加する。彼女はその美貌を武器にスパイとしてドイツ人将校ムンツェに近づいていくが、その優しさに触れ、次第にムンツェを愛するようになってしまう。一方、レジスタンス内では裏切り者の存在が浮かび上がる。[上映時間:144分]


面白かったです。よく出来たストーリーで、2時間半近くもあるにも関わらず、最後まで飽きさせない展開でした。


1944年、第二次世界大戦末期、ナチスの占領下に置かれていたオランダ。ドイツ軍によるユダヤ人狩りを逃れるためにオランダ人一家の元に隠れていたユダヤ人歌手のラヘル。しかし連合軍の投下した爆撃機により家を焼かれてしまう。偶然知り合った青年ロブの元へ身を寄せたラヘルだったが、その夜レジスタンスの男・ファン・ハインが訪れ、ドイツ軍が彼女の行方を追っているから逃げた方が良いという警告を受ける。ファン・ハインの手引きにより、家族や他のユダヤ人たちと共に安全なオランダ南部へと脱出することになったラヘル達だったが、彼女達が船に乗り込み出発すると、突如目の前にドイツ軍が現れ、ユダヤ人達を銃で次々と撃ち殺していった。家族もロブも殺されてしまい、海に飛び込んだラヘルだけが辛うじて助かる。そして水中に身を潜めながら、ドイツ軍将校達が殺したユダヤ人から金品を奪う姿を目撃する。


運よくレジスタンスに助けられたラヘルは、名前をエリスと変え、彼らの元で働くことになる。数ヵ月後、彼女は復讐を誓いレジスタンス運動に参加することになる。そして初仕事の物資を調達した帰路の列車で偶然ナチス将校ムンツェ大尉と知り合う。


その後レジスタンスの仲間が武器を運搬中にドイツ軍に見つかり、連行されてしまう。彼らを救うために女の武器を使ってムンツェに近づき、スパイとしてドイツ軍指令所にもぐりこんだエリス。エリスの活躍でドイツ軍の情報を得、ドイツ軍に捕らえられた仲間救出の救出作戦を計画するが、一方で裏切り者の存在が浮かび上がる。またエリスは次第にムンツェの優しさに惹かれ、彼を愛するようになっていた。


レジスタンスの裏切りに始まり、裏切りに終わります。

誰が裏切り者なのか?私は最後まで裏切り者に気づけませんでした。


映画の冒頭は1956年10月のイスラエル。冒頭シーンで主人公エリスが生き残っていることが観客にはわかってしまって良いのだろうか?とちょっと思いましたが、それがわかっていてもドキドキハラハラの展開が待ち受けていました。


金融業などで成功し富を増やし続けたユダヤ人に対するナチスによる迫害。身を守る為に南部へ逃げようとしたユダヤ人達をだまし、殺し、そして彼らが持っていた金品をすべて奪うナチス将校。ユダヤ人たちを全員殺した後、ナチス将校が満足げに「すばらしい」と言う姿はぞっとしました。


海に飛び込んだ後彼女がレジスタンスのメンバーと出会うシーンはないので、いきなり話が飛んだ感じがしますが、ともかく運よく生き延びます。そして危険が伴うことを承知で、これ以上失うもののないエリスは喜んでレジスタンス運動に参加します。エリスは冷静で大胆でそして強い。そんなエリスをカリス・ファン・ハウテンが体当たりの演技で魅せてくれます。惜しげもなく裸体をさらけだし、金髪に染めたことがバレないように念入りに陰毛まで金髪に染めるシーンまで見せちゃうかと思えば、今度は頭から糞尿を被って糞尿まみれにまでなってしまうほど。いやはや恐れ入ります。


ナチス将校のムンツェはエリスが愛してしまうのがわかるほどのいい人。全員がナチス=悪というわけではなかったんですね。でもそれとは対照的にエリスの家族達を皆殺しにしたフランケンはこれでもか、というぐらい残忍で卑劣です。まさに私達が抱いているナチスのイメージ通りの人物。


それでもドイツが降伏し戦争が終わると、今度は立場が逆転した迫害が続くんですよ。今まで迫害してきたナチス側が逆に迫害される、つるし上げられます。ナチス側に協力した人は裏切り者とののしられ、リンチにあったり、無意味に裸にされたり、糞尿まみれにされたりと、ナチスを上回る残虐さ。今までの仕返しなんだろうけど、それにしてもひどいです。


危機を脱してなんとか生き延びたものの、裏切り者の濡れ衣を着せられたエリスは、レジスタンスの中にナチスと通じていた裏切り者を探す為に動き出します。このエリスの行動力といったらすごい。私には真似できませんよ。もう戦争も終わったし、とりあえず助かったんだからそのままひっそり隠れて暮らせばいいのに、と思ってしまいました。その後は二転三転、いったい裏切り者は誰?という感じで話が展開していきます。最初、エリスが南部へ逃げようとした時に、公証人スマールに父が預けていたお金をもらいにいったシーンで、スマールがエリスに「簡単に人を信用するな。」と言うのですが、まさに誰も信用できない展開でした。最初にスマールが忠告してくれていたのに、私も結構だまされてしまいました。

そしてタイトルの「ブラックブック」が出てくるのは結構最後の方。真相は静かに語られました。


難点を言えば、何度も命の危機に面しながらも生き延びたエリスの運の良さ。特にチョコレートに助けられたシーンはびっくりでした。でもこのチョコレートはブラックブック以上にポイントだったような気もしますね。


そしてラストは冒頭のイスラエルのシーンへと繋がります。戦後のイスラエルで幸せに暮らしていけるのかと思いきや、カメラが引くと・・・。エリスは最後まで掴んだ幸せを守りきることができたのでしょうか。余韻を残す終わり方でした。


テアトルタイムズスクエアにて鑑賞


★★★☆