恩田陸 『チョコレートコスモス』 | 映画な日々。読書な日々。

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チョコレートコスモス
¥1,600
株式会社 ビーケーワン

「まだそっち側に行ってはいけない。そっち側に行ったら、二度と引き返せない。」幼い時から舞台に立ち、多大な人気と評価を手にしている若きベテラン・東響子は、奇妙な焦りと予感に揺れていた。伝説の映画プロデューサー・芹澤泰次郎が芝居を手がける。近々大々的なオーディションが行われるらしい。そんな噂を耳にしたからだった。同じ頃、旗揚げもしていない無名の学生劇団に、ひとりの少女が入団した。舞台経験などひとつもない彼女だったが、その天才的な演技は、次第に周囲を圧倒してゆく。稀代のストーリーテラー・恩田陸が描く、めくるめく情熱のドラマ。演じる者だけが見ることのできるおそるべき世界が、いま目前にあらわれる!


面白かったです。

この本を読んだら、「ガラスの仮面」を思い出しました。佐々木飛鳥が北島マヤ、東響子が姫川亜弓っぽいなぁなんて思って読んでいたら、どうやらこの本、恩田さんが「ガラスの仮面」のオマージュとして書いていたようです。どうりで。

ガラスの仮面ファンの私は、ガラスの仮面と同様に物語にぐいぐい引き込まれました。


芸能一家に生まれ、物心ついたときから当たり前のように舞台に立ち、20歳そこそこですでに演劇界のトップにいる女優、東響子。天才的な感性を持ち、観るものを魅了しながらもまだ自分の実力に気づいていない演技をはじめたばかりの佐々木飛鳥。物語はこの二人天才の他に脚本家の神谷、劇団員の巽の視線を交えて進んでいきます。


飛鳥が1回で台詞を覚えてしまったり、一度観ただけで完璧に同じ演技ができるところなんかはマヤとそっくり。ただマヤが演技を初めて観た時から演技をしたくてしたくてたまらなかったのに対して、飛鳥は演劇に対して全くと言っていいほど執着がなかったりして、天才的なところは似ていても”飛鳥=マヤ”では決してないです。そして同様に”響子=亜弓”でもない。


ゼロ公演「目的地」での飛鳥の演技は、読みながらぞくっとしてしまいました。
そして女二人芝居のオーディションのシーン、特に二次オーディションのシーンなんかは、役者さんたちが演技をしている様子や緊張感がひしひしと伝わってきて、本当に演技を観ているような感じがしました。それぐらい描写が見事です。

同じ脚本でも役者によって全く違った演技をしていることなども、活字だけできちんと伝わってきます。


「あなたと同じところに行きたい」


ここから飛鳥が役者として本当のスタートラインにたったような気がしました。


響子と飛鳥が「欲望という名の電車」を演じ終わった時は、演技を実際に観たわけではないのに妙に感動してしまいました。活字だけでここまで演劇を表現できる恩田さん、すごいです。


そしてこの本、いつか続編が出そうな終わり方ですね。ちょっと楽しみ。


この本を読んだら、無性にガラスの仮面を読み直したくなりました。今日からしばらくガラスの仮面漬けになりそうです。


★★★★

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