- 角田 光代
- 夜をゆく飛行機
どうしようもなく、家族は家族--うとましいけれど憎めない、古ぼけてるから懐かしい。変わらないようで変わりゆく、谷島酒店一家六人のアルバム。直木賞受賞後初の長篇。
谷島酒店一家の出来事を、四姉妹の末っ子里々子の視線で描いた作品。
高校生の時に駆け落ちした経験があるが、今は結婚し過去を帳消しにした長女の有子。
無意識に人をいらだたせてしまう喜ばしくない特技を持った、変わり者で大学卒業後も就職をせずアルバイト生活をしている次女寿子。
ファーストクラスの切符を持つことを人生目標とし、物干し台をルーフバルコニーと呼ぶおしゃれに抜かりない合コンに精をだす三女の素子。
姉達が通った名門女子高をドロップアウトし、都立高校に通う四女里々子。そんな里々子は、物干し台から空を見上げ、飛び交う飛行機を数えながら生まれてくるはずだった5歳年下のぴょん吉に語りかけ、自分はちょっとした超能力があると思っている。
平凡な生活をしていた谷島家だったが、変わり者の寿子が書いた小説が賞を取ったことをきっかけに変化が訪れます。
よくも悪くも変わっていく谷島家の人々。そして里々子自身も恋をすることによって自分では気づかなかった自分に気づき、そして変わっていきます。
読み終わった後、思わず巧いなぁと思いました。”家族”を本当にリアルに描き出した作品です。家族って一番長く一緒にいて理解しているようであっても、家族だからこそ理解できないところがあったり、家族だからこそ言えないことがあったりする。
時には疎ましく思い、だけどいつでも帰れる場所であってほしいと願う、そして帰れる場所である。そんな家族の姿をすごく巧く表現しています。
いろんな変化が起きても劇的に変わるわけではない、そして変わらないで欲しいと願っていても少しずつ変わっていってしまう。
バラバラになりそうでも本当にバラバラいなってしまうわけではない、かといって完全に理解し合えるわけでもない。
だけど見えないところで家族は繋がっている、やっぱり家族は家族、家族ってこうだよなぁと。
中間の場所。そこに行けば、好きな人も嫌いな人も、全部いなくならず揃っている場所。
うちも四姉妹ならずとも三姉妹なので、谷島家の姉妹の関係や彼女達の性格の違いなど本当よくわかる、と思いました。思わずそうそう、と思ってしまうシーンもいくつかあったりして。
そしていろんな気持ちをすごく上手く表現しています。その表現力は本当さすがですね。
ドラマ化したらおもしろそうだな、と思いました。
★★★☆