2001年9月11日。ニューアークの空港は、朝の喧騒に包まれていた。離陸の準備を整えたユナイテッド航空93便は、40名の乗客を乗せ、サンフランシスコへ飛び立つ。その直後、ワールド・トレード・センターに2機の民間機が激突した。その頃、ユナイテッド93便の機内でも、テロリストが爆弾を持って操縦室を制圧。機内は混乱に陥るが、地上で起こっている事態を知った乗客と乗員たちは、わずかな武器を手に立ち上がった…。[上映時間：111分]
まだ記憶に新しい2001年9月11日の同時多発テロ事件。この映画は、ビルに突っ込んだ飛行機ではなく、ハイジャックされた4機のうち、唯一テロリストの目的地にたどり着くことなく墜落したユナイテッド93便に焦点を当てています。そこに乗り合わせた40人の乗客、乗員達、機内では何が起きていたのか？
混乱する機内、無線から聞こえてきた犯人の声に戸惑う航空管制官、錯綜する情報。携帯電話で家地上にいる家族と話をした乗客は、先にハイジャックされた3機がテロの道具として使われ、ワールド・トレード・センタービル、国防総省に墜落したことを知る。そして自分達の機も間違いなくどこかのターゲットへ向かっていることを確信し、そして絶望する。
それでもテロリストと闘い、最後まで”生きる”ことをあきらめなかった乗員、乗客達。
緊迫した機内の様子、恐怖におびえる乗客たち、混乱する管制センター、防空指令センターなどがとてもリアルに描かれていて、まるで再現VTRを観ているような錯覚に陥りました。最後の方は鳥肌がたちました。
この映画には有名な俳優さんは一切でてきません。リアリティを出すため、実際に搭乗していた人々の年齢などを考慮し、あまり知られていない俳優達や実際のパイロット、や乗務員経験のある人、そして本物の管制官等が起用されています。
ただ、乗客は全員亡くなってしまっている為、この映画の内容が真実なのかどうかは誰にもわかりません。実際の機内がどのような状態だったのか、誰も知り得ることはできない。けれども、スタッフ、キャスト、そして遺族が一丸となって”真実”を描こうとした作品です。
自分の死が迫っていることを知りながらも、ハイジャックされたことを地上に伝えようとしたり、家族に「愛している」と電話したり、そして今自分達にできることをしようと、団結してわずかな武器でテロリスト達に立ち向かっていくのです。極限状態の中でどうしたらそんな冷静な行動ができるのだろうか？生きる希望を捨てなかった彼らの強さに尊敬の念を抱きました。
またこの映画ではテロリスト達も一人の人間として描かれています。祈りを捧げてから飛行機に乗り込み、そしてテロを起こしている彼らも決して落ち着いているわけはなく、不安でそして追い詰められている、そんな精神状態が伝わってきました。だからこそ余計に、彼らには自爆テロ以外の選択肢はなかったのか？とやりきれない気持ちでいっぱいになりました。
私は映画が終わってからもしばらく席を立つことができませんでした。
まだ事件から5年しか経っていない今、映画化することには賛否両論あったようですが、実際当事者でなければどんな大きな事件でもだんだん記憶の奥にいってしまうと思います。ですから私はこの早い時期に映画化に踏み切った勇気は高く評価したいと思います。二度とこのような事件が起きない為にも、そして私達がこの事件のことを忘れない為にも、とても大きな意味を持つ映画だと思います。
ブロガー限定試写会（＠UIP試写室）にて鑑賞
★★★★
