- 柴崎 友香
- フルタイムライフ
喜多川春子、22歳。美術系の大学を卒業し、思いがけず包装機器会社の事務職についた-。四季を通して細やかに綴る、新入社員の10か月。「はたらく生活」をはじめて体験する女の子のゆるやかな毎日、恋を描いた長編小説。
「きょうのできごと」の作者柴崎友香の本です。
社会人1年目の春子が5月から2月までに少しずつ会社に、フルタイムライフに慣れていく姿がかわいく描かれています。
柴崎さんの本は関西弁なので余計かわいく感じられますね。
同じOLとして、最初のシュレッダーの話でグッと心を掴まされました。
私は春子みたいに一日中シュレッダーやらされるなんてことはないんですが、『ホチキスの針がついたままだと飲み込んでいってくれるけど刃が欠けて傷みが早くなるらしい』とか、『10枚以上入れてしまうと動きが止まって途中まで切れ目が入った状態で逆向きに吐き出される』とか、結構リアルなんですよ。
そうそう!と思ってなんだか読みながら笑ってしまいました。
あと親近感を覚えたのは、外部のセミナーの受付をするところですかね。
私の働いている会社でも外部セミナーに出展することがあり、私もたまーに受付に行きます。
この本にもあるように、キャンペーンガールを雇っている会社が半分以上なので、結構キャンギャルの衣裳を見て楽しんだりしてます。
新人さんの冬のボーナス31万も結構リアルな感じ。
ちなみに私の会社の新人の冬ボは基本給の2か月分です。
でもそれ以外はちょっとリアリティが足りないというか、現実とはちょっと違うと思います。
私は転職したことがないので他の会社の雰囲気とかはわかりませんが、今どきここまでおきらくなOLでいられる会社ってあんまりないでしょ、という感じです。
後半、仕事にだんだん慣れてきた春子が時間に追われつつも頼まれた仕事をちゃんとこなせるようになって来た感じを表現してる場面がありますが、この「時間との戦い」な感じは同じような事務の仕事をしている人にはかなりリアルですけど、全然違う仕事をしている人にはあんまり伝わらなそうな気がしました。
しかもそんなに大変そうな仕事ないし。
結構すぐできそうだし。
まぁ、でもあくまでもこれは事務職についた新人さんのお話ですからね。
私は結構自分もおきらくOLだと思っていましたが、これ読んだら「なんだ、私結構仕事してんじゃん!」という感じです。
OL気分を味わいたい人、新人の気分をもう一度味わいたい人、事務のお仕事をしている人は読んでみるとおもしろいかもしれません。
ゆるい地味なOL気分に浸れます。
★★★