- 青木 和雄, 吉富 多美
- ハッピーバースデー
話題になっていたので読んでみました。
面白い本ではありません。でも大切な何かを教えてくれる、そんな本です。
この本は大人にも子供にも読んでもらいたいです。
実の母親に愛してもらえず、誕生日さえ忘れられてしまった11歳の少女・あすかは、声を失ってしまう。しかし、優しい祖父母の元で自然の営みに触れ、「いのち」の意味を学ぶ。生まれかわったあすかがどんな行動を起こすのか。そして、母親の愛は戻って来るのか…リアルな展開に、5頁に一度は、涙が噴き出る物語。
もともとこのお話は児童書として出版されていたものを、大人にも読んで欲しいと言う声が多く、今回文芸書として出版されたようです。
「おまえ、生まれてこなきゃよかったよな」
物語はあすかの兄、直人のこの一言から始まります。
自分の思い通りに生長した直人に比べ、できの悪いあすかを愛せない母静代。
「ああ、あすかなんて、本当に生まなきゃよかったなあ。」「消せるのは声だけ?姿も消してみたらどうなの。」そんな容赦ない言葉をあすかに向かって吐く静代。
心理的虐待です。
最初は母親に愛されていないあすかをからかっていた直人も、あすかの声がでなくなったことで、やっとあすかの辛い気持を理解し、そして優しいお兄ちゃんになっていきます。
直人が優しくなった時に、小説なのにまず「よかったー」と思ってしまいました。
そしてその後あすかはおじいちゃん、おばあちゃんの元でたっぷりの愛情を注がれ、そしてあすか自身も変わって行きます。
このお話は虐待、いじめが主なテーマになっていますが、それと共に人間の成長の物語でもあります。
あすかは直人に言います。
「人は変わるために学ぶんだよね。」
強くたくましく変わったあすかに影響され、直人もそしてあすかの友達やまわりの人たちも変わっていきます。
この本にでてくる人たち、親に虐待されるあすか、虐待してしまう静代、子供のことを理解しない父裕治、いじめる子、いじめられる子、いじめを見てみぬふりをする子、生徒のことを考えられない教師黒沢・・・
みんな現実にいる人たちだと思います。
途中ちょっと話がうまくいきすぎるなと思う部分もありましたが、とてもいい本だと思います。
なぜこんなに話題になったのかもわかる気がします。
心がすさんだ時、人に優しく出来なくなってしまった時、人を信じられなくなった時、勇気をもらいたい時。
そんな時には読み返したいです。
★★★★