“昭和歌謡再訪”Ⅱ 「恍惚のブルース」「女のためいき」 | 薩摩琵琶・後藤幸浩の-琵琶爺、音楽流浪

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先日、中古CD・レコード屋をぶらぶらしていたら、こんなのを見つけて即買いした。珍しい盤ではないし、バーゲン価格だったのでコーヒー代以下だ。




♬ 青江三奈は66年5月30日に発売された「恍惚のブルース」と、そのB面だった「ひと知れぬ愛」の2曲を、森進一は、やはり66年、一月後の6月20日に発売された「女のためいき」とそのB面だった「恋に泣きたい」を収録。2人のデビュー・シングルの曲でもある。

サイズはEP盤と同じだが、33回転のコンパクト・ディスクと呼ばれていたもの (コンパクト・ディスクの呼び名ですが、CDとは違うんですよ- 笑) 。

♬  それぞれのシングル盤は実家にある。亡父の所有物だったもので、これをさんざん、小学校低学年の頃聞かされた。もちろん、ぼくに曲を覚えさせようというのではなく、父親が宴会で歌うために聞き込んで、レコードに合わせて練習するのだ。父親はふつうの公務員で、当時はうちに人を呼んでの宴会をよくやっており、その際の出し物の準備というわけ (カラオケなどない時代なので、本番は完全アカペラで、まあ、失敗が多かったようだ-笑笑) 。

子供心に “恍惚” 、“女のためいき” て何ね?と思いつつも、そういう環境だと、自然に曲を覚えてしまう。つい口ずさんでいると “子供は歌 (うと) おたらいかん” と怒られる。理不尽ではあったが、こういう歌、曲を、リアルタイムで体験できたことは父親に、たいへん感謝している。

♬  青江三奈、森進一、2人の声はじつにハスキー、雑味にあふれていて、語尾の処理もヴィブラートではなく、揺り、と言った方がぴったり。ほぼ伝統芸の語りもの・歌ものの手法につうじる。ぼくは小さい頃から声がかすれていて、合唱部に入ろうと思ったら、後藤君はかすれ声だから合唱は合わんよ、と先生に言われた記憶や、琵琶の師匠には、君の声は森進一に似てるからそれを活かして云々、と言われた記憶もよみがえる。青江さん・森さんの声をさんざん聞かされたため、そっちに変声したのか (笑) とも思うが、今の琵琶弾き語りの立場としては、体験しておいてじつに役にたった声だ。

♬「恍惚のブルース」はじめ全4曲メジャー・キイ、曲じたいはカラッとしていて、いわゆる  “ど演歌” ではない。サックスは良い感じでブロウするし、3連感もあるので、アフロ・アメリカン音楽のジャンプやR&Bも思い出させる。「ひと知れぬ愛」はヴィブラフォンやストリングズもよく、ジャズ的お洒落感もある隠れ名曲だと思う。ハスキーな声色に、和の伝統ものともつうじる節廻しと、R&B感覚…うまい具合に、音楽的日米同盟?が凝縮された4曲だ。

♬  お盆でもあることだし、今夜はこれを聞いて、亡父の供養としよう。