実名告発防衛省 | 前山和繁Blog

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このごろ、過去に書いた記事の誤っている箇所が気になり始めてきた、直したい箇所もいくつかあるが、なかなかできないでいる。

英語学習の記事も時折書くことにした。

実名告発 防衛省/太田 述正

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『実名告発防衛省』 太田述正(おおた のぶまさ)

防衛庁の元官僚太田述正による実名告発の書。記述は明晰であり、煽るような印象はなく読みやすい。実名告発ならではの迫力がある。

著者の海外滞在経験の長さが影響しているのだと思うが、遠慮会釈がなく問題を明るみに出している。

太田述正は認識能力が非常に高い。太田述正なみの認識能力を持っている人間が防衛庁(防衛省)に多数いるのであれば、腐敗堕落というのはあまり起きないと思うのだが、そういう認識能力を持っている人間は防衛省に多数いるなら今の日本の国防もずいぶん違った形になっているだろう。

手垢がついている言葉で公表するのは気が引けますが、いわゆる吉田ドクトリンの問い直しが今の日本の国防にどうしても必要な課題であり、避けられない問題なのだろう。

専守防衛という日本の国防の基本方針は9条に由来すると言うよりも、むしろ吉田ドクトリンから生まれたとみなしてもよさそうだ。

吉田ドクトリンとは、吉田茂が定めた日本の国防の基本方針である。その方針とは自衛隊に外征能力を持たせないことにより、防衛費を低い水準に止め、自衛隊の実質的な能力を低いままにしておき、米軍に日本の国防の肩代わりをしてもらう。それにより日本の国民の経済力を増強しようと言う方針である。

吉田ドクトリンという語を見たことのない人でも気がついたと思いますが、2010年現在の日本の国防の方針とまったく同じなわけです。

要するに吉田ドクトリンが登場して以来、じつに60年近くものあいだ専守防衛という日本の国防方針がまったく変わっていないのです。

太田述正は自衛隊の兵站能力は著しく低いと観察している。兵站能力の低さと比較して保有している正面装備(兵器)は数量が多く、偏りのある編成である。と指摘している。これでは自衛隊はイギリスのように外征軍を持つことができない。自衛隊は正面装備だけを見れば外征軍のように見えるが兵站能力が低いので外征軍を保持することはできない。自衛隊にはそういう編成上の特徴と言うのか問題がある。

太田述正は日本はアメリカの軍事力に保護されているのであるからアメリカの保護国、属国であると観察している。

ではどうするべきかと言うと太田述正の意見は日本はアメリカから独立し自前の軍隊を持つべきだという結論である。吉田ドクトリンは廃棄するべきであるという主張である。

多くの日本人はこの意見に抵抗を持つであろう。

太田述正は日本がアメリカの属国のままでいいなら、思い切って日本がアメリカの州の一つになってしまえとも書いている。

それが嫌なら日本が軍事的に独立する必要があるという立場だ。

国防の基本方針が専守防衛のままなら自衛隊は大幅な縮小をするしかない。専守防衛から脱却するなら自衛隊の編成を見直す必要がある。そういう意見ですね。

それから話題がすこし飛んで、冷戦時代には図上演習をしてみるとどうやっても自衛隊よりもソ連軍が不利になってしまう、自衛隊はソ連軍と交戦するさいに米軍の支援などなくても困らなかったと言う。

要するにソ連の脅威などなかったのである。

そして、北朝鮮の脅威やら中国人民解放軍の脅威やらはソ連の脅威よりさらに迫力が乏しいという。

ということは自衛隊の基本方針が専守防衛のままなら自衛隊は大幅縮小するのが筋である。それがいやなら積極的に国際貢献に参加するべきである。と主張している。この主張も吉田ドクトリンの堅持か廃棄かという問題が焦点でしょうね。

沖縄の米軍基地のグアム移転問題の説明もある。結論は日本は米軍基地移転に際しては費用は出してはいけないというものだ。

いくらか説明すると、沖縄の海兵隊18000人のうち8000人をグアムに移転させる計画と言う触れ込みですが、この18000人や8000人という数字は「定員」を意味するようです。グアムに海兵隊8000人を移すというのは定員を8000人移すというだけのようだ、実際は沖縄の海兵隊員は2008年の時点で12500人在住しているのですが、このうち「定員8000人」をグアムに移転し実質的な人員は2500人しか移転しない。だから沖縄には10000人の海兵隊員が残ると言う。

米軍の要求はそのさい移転させる「定員8000人分の施設の建設費用を日本が負担しろ」というものだ。費用は7000億円。

こういう滅茶苦茶な移転計画であるので日本は米軍に金を出してはいけない。と釘を指している。

他にも、もし小沢一郎が実権を持ち9条を改正したとしたら日本は自衛隊を国際貢献目的で派遣しなければならないと観察している。太田述正は小沢一郎が9条を改正しておきながら自衛隊の海外派兵をしないとしたら、もし民主党が政権をとったとしても、その政権は瓦解するだろうと予言している。

上手くまとめられなくてつらいですが肯定するにしても否定するにしても吉田ドクトリンの問い直しが今の日本にどうしても必要だ。これを避けては国防はおぼつかない。


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