大いなる眠り The Big Sleep | 前山和繁Blog

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このごろ、過去に書いた記事の誤っている箇所が気になり始めてきた、直したい箇所もいくつかあるが、なかなかできないでいる。

英語学習の記事も時折書くことにした。

『大いなる眠り』


『The Big Sleep』


チャンドラーの日本語訳の『大いなる眠り』は品切れのようですね。


しかし、有名な本なので古本屋を探せば必ず見つかる。


楽天のリンク先のコメントはきびしいですが、その理由はおそらく双葉十三郎の翻訳のまずさにあるのだと、推測できます。


双葉十三郎も時代や年代を考えれば、がんばっているような気もするのですが、訳として不自然な箇所が目立つし、チャンドラーの文体の面白さを日本語にうまく再現し切れていない。


チャンドラーの原文は明晰でタイトでありながら、それでいて遊びや余裕がある独特な文体で、いま読んでも古びてはいないと思います。


チャンドラーの翻訳なら清水俊二の訳はわりによくできている。


物語の序盤にカーメン・スターンウッドが登場する場面で、


She walked as if she were floating.


という箇所があるのですが。


双葉十三郎は


水面を流れる見たいな歩き方だった。(7ページ)


と、訳しています。ぎこちない訳ですね。これならもっと平凡に


(彼女は)浮遊するように歩いた。


としたほうが、まだましなのではと思います。


次の箇所もおもしろい。


She came over near me and smiled with her mouth and


she had little sharp predatory teeth, as white as fresh


orenge pith and as shiny as porcelain.


近づいてくると、彼女は口もとだけで微笑した。小さな鋭い犬歯が見えた。新鮮なオレンジの髄みたいに白く、陶器みたいに光っていた。(8ページ)


Porcelainは陶器ではなく陶磁器です。しかしこの箇所は、まだましな訳文でしょうか。


チャンドラーの魅力は原文を読んで見なければ、わからないです。


日本語に翻訳されたものだけしか読まないで、たいしたことがない、と考える人がいたらそれは間違いです。


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