自転車に乗る人が誰に教わるでもなく自然に習得する“立ち漕ぎ”と言うテクニック。
しかし、スプリントだろーが登りだろーが、正確なシフトと正しいシッティングこそ最速と考えていた小生は当初立ち漕ぎの必要性など感じた事が無かった。
事実、大抵の立ち漕ぎローディーは登りながらみるみる失速するので、正しいギアでケイデンスを維持していればシッティングで楽々追い越せた。
しかし、テクニックの一つとしてダンシングを使い始めてみると世界が変わった。
ダンシングとは一時的に一回り大きなパワーを得られるブーストのようなものだ。その分心拍は上がりやすいし、心肺への負担も大きい。
立ち漕ぎとダンシングの細かい定義は知らないが、その目的には違いがある。
ギアを持たないママチャリなどが低ケイデンスのパワー不足を補う意味で、高トルクを得る為に立ち姿勢になるのが立ち漕ぎなのに対し、ダンシングは大パワーを得る為に用いられる。
つまり、サドルから腰を上げれば、すべて立ち漕ぎだが、サマになってる立ち漕ぎはダンシングと言う見解で良いだろう。更に言えば、無様なダンシングは悲しいほど進まない。
それでは、サマになってない立ち漕ぎとはどんなものだろうか?
無様な立ち漕ぎ その1-ローケイデンス
進まない原因の9割はこれだろう。坂でペースを下げないようにダンシングをするのでは無く、シフトダウンするタイミングを逃して登りながらズルズルスピードが落ちてしまい、しょうがなく立ち漕ぎ…典型的な受動的ダンシング。
「うんしょ…うんしょ…」と聞こえて来そうな登り坂でよく見るあれである。
一度回転が落ち、高トルクで乗り切ろうとすると、チェーンがビンビンに張った状態となり、シフトダウンも出来なくなり、更にズルズル回転が落ちると言う悪循環に陥る。
回転数で言うと軽く70rpmを下回るような立ち漕ぎは無様で全くダンシングっぽくない。
ケイデンスが表示出来ない人の為に言えば、「うんしょ、うんしょ」では無く「キャンキャンキャンキャン」って感じでやるとダンシングっぽい。
効率のみで言うと80~95rpm、パワーが欲しい場面では120くらいまでが一般的なダンシングの実用域だろう。
パワー=ケイデンス×トルク
つまり、登りを60rpmで立ち漕ぎする人について行くのに、自分のケイデンスが100rpmなら6割のトルクしか必要無いと言うことである。
足への負担が少ないのがどちらかは言うまでも無いだろう。
ついでに高ケイデンス×低トルクならシフトチェンジもスムーズかつスピーディーに行われると言う点も見逃せない。
無様な立ち漕ぎ その2-上下動
ダンシングは基本上体をあまり揺らさない。というか、ある程度のケイデンスが維持出来ていれば、自然に上体の動きは少なくなるはずである。
「ダンシングは体を横に振るのでは?」と思う人もいるかも知れないが、振るのは自転車のみであり上体がブレてはいけない。
無様な立ち漕ぎ その3-せすじが伸びちゃう & お尻突き出しちゃう
まず、ハンドル高めのロードやクロスに多いのが背筋伸びちゃうパターン。大パワーを得る為に空気抵抗を増やしてりゃ世話無いが、腕が伸びるとハンドルがしっかる振れない。
しかし、お尻突き出しちゃうパターンも問題。一見前傾で見栄えは悪くないようだが骨盤が寝てしまってパワーが乗らない。
よく進むダンシングのフォームは横から見るとアーレンキーの様な形になる。お尻で無く背中で体を曲げ、骨盤は寝かさない。腕は軽く折る。
ダンシングの理想の腰の位地はタイムトライアルバイクに近い。つまりクランクの真上付近である。逆に言えば、腰を浮かすのはフォームを変える事が目的で、ペダルに体重を乗せることではないのである。
ダンシングは腕に体重を乗してはいけないと言う記述を目にするが、クランクに乗っかってしまうと踏むだけのペダリングになり易く、高ケイデンスまで回せなくなる。
そもそもペダルに体重をかけない為にサドルがあるのであり、クランクが垂直状態でも体重が乗ってしまいパワーロスを生じるのがダンシングの欠点である。
≪追記…下死点での踏み込みはダンシングの場合バイクを振り返す力となるので、全てがロスになる訳ではない。また、脚力が上がるにつれてハンドルは引くのみの動作になる。≫
以上の三つが無様な立ち漕ぎの条件だが、それらを満たしただけではまだ立ち漕ぎの域を出ない。
ダンシングの最大のメリットは腰を浮かせる事で自転車を左右に触れることにあるのだ。
それではなぜダンシングでは自転車を左右に振るのか?
人の足は伸ばした状態に近い角度ほど高トルクを発揮出来る。だから足が伸び切らない範囲でサドルを高くするのだ。サドルを5センチ下げれば全く力が入らないのは誰でも理解出来るだろう。
一方、ダンシングでは自転車を左右に振る事でペダルの上死点と下死点の距離を縮める事ができる。そのため、膝を曲げる角度はシッティング時より遥かに少なくて済む。それがダンシングの高トルクが得られる秘密である。
また、慣れればダンシングで引き足をかけることも可能だが、これをやると踏み込み側の足に、体重+引き足分の急激な負担が掛かるし、バイクを振りにくくなるので、小生の場合は基本的に足の自重を持ち上げる程度の引き足しかかけない。
≪追記…ハンドルを振ると言っても、実際は踏み込み側のハンドルを引くだけで、腕で左右に引く訳ではない。クランクの真下まで踏み込むとペダルに残った体重でバイクは起き上がるので、逆の脚を踏み込みつつ同じ側のハンドルを引く。リズムが掴めると、トップチューブが邪魔になるほどの角度で軽々バイクを振れるようになる≫
ただ、体重をクランクで支えなければならない事でペダリングが少なからず阻害され、エネルギーの変換効率はシッティングに比べると若干劣る。
それでも120rpmくらいでスムーズにダンシング出来るようになると、力を込めなくても正にブースト、色々な場面で活用できる切り札となる。
例えば、軽く登って軽く下るようなちょっとした橋。普通に行くと、軽く減速し、下りで巡行速度に戻ると言うのが以前のパターンだが、登りで軽くダンシングをかけて巡行速度をキープしたまま登り切り、下りで休んだ方が楽で速かったりする。
上達してくると、楽をするために自然にダンシングを用いるようになってくる。
ダンシングによる登りは最も自転車の軽さを実感出来る瞬間でもあり、こうなって来るともうダンシングが爽快で仕方無くなる。
いつしか登りがいのありそうな坂を見ると、ついほくそ笑んでしまうキモイ自分に気付くだろう。
追記…質問を頂いたので参考程度に。小生はスプリントの際、引き足も回す事も意識しない。それはペダリングモニターのデータからも見て取れる。通勤で毎日同じポイントでもがき、千回以上いろいろ試した結果今のペダリングに至っている。
しかし、スプリントだろーが登りだろーが、正確なシフトと正しいシッティングこそ最速と考えていた小生は当初立ち漕ぎの必要性など感じた事が無かった。
事実、大抵の立ち漕ぎローディーは登りながらみるみる失速するので、正しいギアでケイデンスを維持していればシッティングで楽々追い越せた。
しかし、テクニックの一つとしてダンシングを使い始めてみると世界が変わった。
ダンシングとは一時的に一回り大きなパワーを得られるブーストのようなものだ。その分心拍は上がりやすいし、心肺への負担も大きい。
立ち漕ぎとダンシングの細かい定義は知らないが、その目的には違いがある。
ギアを持たないママチャリなどが低ケイデンスのパワー不足を補う意味で、高トルクを得る為に立ち姿勢になるのが立ち漕ぎなのに対し、ダンシングは大パワーを得る為に用いられる。
つまり、サドルから腰を上げれば、すべて立ち漕ぎだが、サマになってる立ち漕ぎはダンシングと言う見解で良いだろう。更に言えば、無様なダンシングは悲しいほど進まない。
それでは、サマになってない立ち漕ぎとはどんなものだろうか?
無様な立ち漕ぎ その1-ローケイデンス
進まない原因の9割はこれだろう。坂でペースを下げないようにダンシングをするのでは無く、シフトダウンするタイミングを逃して登りながらズルズルスピードが落ちてしまい、しょうがなく立ち漕ぎ…典型的な受動的ダンシング。
「うんしょ…うんしょ…」と聞こえて来そうな登り坂でよく見るあれである。
一度回転が落ち、高トルクで乗り切ろうとすると、チェーンがビンビンに張った状態となり、シフトダウンも出来なくなり、更にズルズル回転が落ちると言う悪循環に陥る。
回転数で言うと軽く70rpmを下回るような立ち漕ぎは無様で全くダンシングっぽくない。
ケイデンスが表示出来ない人の為に言えば、「うんしょ、うんしょ」では無く「キャンキャンキャンキャン」って感じでやるとダンシングっぽい。
効率のみで言うと80~95rpm、パワーが欲しい場面では120くらいまでが一般的なダンシングの実用域だろう。
パワー=ケイデンス×トルク
つまり、登りを60rpmで立ち漕ぎする人について行くのに、自分のケイデンスが100rpmなら6割のトルクしか必要無いと言うことである。
足への負担が少ないのがどちらかは言うまでも無いだろう。
ついでに高ケイデンス×低トルクならシフトチェンジもスムーズかつスピーディーに行われると言う点も見逃せない。
無様な立ち漕ぎ その2-上下動
ダンシングは基本上体をあまり揺らさない。というか、ある程度のケイデンスが維持出来ていれば、自然に上体の動きは少なくなるはずである。
「ダンシングは体を横に振るのでは?」と思う人もいるかも知れないが、振るのは自転車のみであり上体がブレてはいけない。
無様な立ち漕ぎ その3-せすじが伸びちゃう & お尻突き出しちゃう
まず、ハンドル高めのロードやクロスに多いのが背筋伸びちゃうパターン。大パワーを得る為に空気抵抗を増やしてりゃ世話無いが、腕が伸びるとハンドルがしっかる振れない。
しかし、お尻突き出しちゃうパターンも問題。一見前傾で見栄えは悪くないようだが骨盤が寝てしまってパワーが乗らない。
よく進むダンシングのフォームは横から見るとアーレンキーの様な形になる。お尻で無く背中で体を曲げ、骨盤は寝かさない。腕は軽く折る。
ダンシングの理想の腰の位地はタイムトライアルバイクに近い。つまりクランクの真上付近である。逆に言えば、腰を浮かすのはフォームを変える事が目的で、ペダルに体重を乗せることではないのである。
ダンシングは腕に体重を乗してはいけないと言う記述を目にするが、クランクに乗っかってしまうと踏むだけのペダリングになり易く、高ケイデンスまで回せなくなる。
そもそもペダルに体重をかけない為にサドルがあるのであり、クランクが垂直状態でも体重が乗ってしまいパワーロスを生じるのがダンシングの欠点である。
≪追記…下死点での踏み込みはダンシングの場合バイクを振り返す力となるので、全てがロスになる訳ではない。また、脚力が上がるにつれてハンドルは引くのみの動作になる。≫
以上の三つが無様な立ち漕ぎの条件だが、それらを満たしただけではまだ立ち漕ぎの域を出ない。
ダンシングの最大のメリットは腰を浮かせる事で自転車を左右に触れることにあるのだ。
それではなぜダンシングでは自転車を左右に振るのか?
人の足は伸ばした状態に近い角度ほど高トルクを発揮出来る。だから足が伸び切らない範囲でサドルを高くするのだ。サドルを5センチ下げれば全く力が入らないのは誰でも理解出来るだろう。
一方、ダンシングでは自転車を左右に振る事でペダルの上死点と下死点の距離を縮める事ができる。そのため、膝を曲げる角度はシッティング時より遥かに少なくて済む。それがダンシングの高トルクが得られる秘密である。
また、慣れればダンシングで引き足をかけることも可能だが、これをやると踏み込み側の足に、体重+引き足分の急激な負担が掛かるし、バイクを振りにくくなるので、小生の場合は基本的に足の自重を持ち上げる程度の引き足しかかけない。
≪追記…ハンドルを振ると言っても、実際は踏み込み側のハンドルを引くだけで、腕で左右に引く訳ではない。クランクの真下まで踏み込むとペダルに残った体重でバイクは起き上がるので、逆の脚を踏み込みつつ同じ側のハンドルを引く。リズムが掴めると、トップチューブが邪魔になるほどの角度で軽々バイクを振れるようになる≫
ただ、体重をクランクで支えなければならない事でペダリングが少なからず阻害され、エネルギーの変換効率はシッティングに比べると若干劣る。
それでも120rpmくらいでスムーズにダンシング出来るようになると、力を込めなくても正にブースト、色々な場面で活用できる切り札となる。
例えば、軽く登って軽く下るようなちょっとした橋。普通に行くと、軽く減速し、下りで巡行速度に戻ると言うのが以前のパターンだが、登りで軽くダンシングをかけて巡行速度をキープしたまま登り切り、下りで休んだ方が楽で速かったりする。
上達してくると、楽をするために自然にダンシングを用いるようになってくる。
ダンシングによる登りは最も自転車の軽さを実感出来る瞬間でもあり、こうなって来るともうダンシングが爽快で仕方無くなる。
いつしか登りがいのありそうな坂を見ると、ついほくそ笑んでしまうキモイ自分に気付くだろう。
追記…質問を頂いたので参考程度に。小生はスプリントの際、引き足も回す事も意識しない。それはペダリングモニターのデータからも見て取れる。通勤で毎日同じポイントでもがき、千回以上いろいろ試した結果今のペダリングに至っている。
ルーラーの小生にとってスプリントは苦手分野なのでパワーは大した事がないが、うまく足を残せれば長距離でパワーを浪費したスプリンターとそこそこ競る事ができる。
もちろん誰にとってもこのペダリングがベストと言う訳では無いが、まっすぐ踏み下ろすのも一つの答えであると言うこと。
ダンシングでありながら6時の荷重が体重より遥かに少ない点にも注目していただきたい。