私は、記事「短答本試験での現場思考法(短答過去問知識の応用)」で、H28予備短答商法第22問の記述3後段を正解するために最小限必要だったものとして、「④監査等委員=取締役(399条の2第2項)という知識or監査等委員という制度は複雑でよく分からんものといったイメージからの想像力」と分析した。
しかし、本問を全体としてみると、「監査等委員=取締役(399条の2第2項)という知識」を持っていない方が、少なくともH28予備短答本試験現場では正解しやすかったと考えている。
まず、H28予備短答で合計200点超えを果たした方が作ってくれた、H28予備短答商法第22問の短答再現をご覧いただこう。
1 正直わからない→果たして両者を区別する必要があるのか?
2 これも確信を持てない
3 監査等委員であっても取締役であることを考えると、監査役と比較して任期は短いはず→○
4 競業取引の場合は356の規定に違反しない場合は損害の額推定されない→他方利益相反取引の場合は356の規定に違反しない場合にも任務懈怠推定されるはず→×(不正解)
したがって4(不正解)
まず「3 監査等委員であっても取締役である」という記載から、この方は、「監査等委員=取締役」という知識を持っており、ここから適切な現場思考を展開した結果、記述3については正解したことが分かる。
他方、この方は記述4で、「利益相反取引の場合は356の規定に違反しない場合にも任務懈怠推定されるはず」としている。
ここから、“事前に当該利益相反取引につき監査等委員会の承認を受けたとき”という問題文の事情を、365条1項・「356の規定に違反しない場合」≒“事前に当該利益相反取引につき取締役会の承認を受けたとき”へと読み換えたことが伺われる。
この読み換えには、「監査等委員=取締役」という知識を使ったはずだ。
しかし、このプロセスで、“監査”等委員会という事情が切り捨てられてしまった。
そのため、記事「短答本試験での現場思考法(短答過去問知識の応用)」の解答プロセス⑤で示した、“監査等委員会の承認を受けた”以上、“監査”の専門家からお墨付きをもらったようなもの…といった現場思考をするチャンスを失ってしまったのだ。
その結果、記述4を×と判断し、不正解となったといえないだろうか?
…もちろん、423条4項を的確に使いこなせれば、記述4が〇だと判断できる(ちなみに、H28予備短答本試験より前に実施した2016年合格目標の4A条解講義でも、423条4項の文言を読み上げ、その趣旨まで説明してはいる)。
しかし、H28予備短答本試験当時、423条4項を的確に使いこなせた受験生は、どのくらいいただろうか…“H28予備短答で合計200点超えを果たした方”ですら、423条4項を使いこなせていなかったのに(ひょっとしたら見聞きしたことはあったり、知っていたりはしたかもしれないが)。
このように、司法試験系の本試験問題は、むやみに知識を増やすことがかえって有害となるように作られているものも結構あるのだ。
…ちなみに、私の個別相談で短答・論文再現等を持って来てくれたら、ある特定の問題の敗因をこんな感じで分析した上で、より根本的な敗因の分析へと展開する手法を採ることが結構あります。
直近では2017年1月中旬ころ~2月初めころに予定しているので、良かったらご利用くださいね~ただし先着順なので、ご予約はお早めに!o(〃^▽^〃)o