- 高校入試 (単行本)/湊 かなえ
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旅行会社勤務を経て英語教師となった春山杏子は、県下一の進学校である橘第一高等学校に勤務している。教師になって初の入試を迎える前日に、教室に「入試をぶっつぶす!」と黒板に書かれているのを発見する。 その後入試の最中にネットの掲示板で入試問題がアップされたり、教室内の出来事が実況中継されたりするなど問題が起こる。その後もネットの掲示板が止まらない中、なおも騒動は起こる。入試をぶっつぶすということの真意は? また、果たして誰が首謀者なのか?
最初は先が気になったけれど、読み進んでいくうちにどうでもよくなってきました。
まず不愉快なのは、県で一番レベルの高い公立高校の第一高校卒業至上主義。
非正規の市役所臨時雇いより大手(中堅だったかも)電機メーカー社員の方が、明らかに社会的に格が上。収入も上。それなのに電機メーカー社員の方が少しレベルの落ちる第三高校卒業だということで、非正規の市役所臨時雇いが「格下だから結婚できない」とかぬかすのです。
結婚生活は収入が大事な要素の一つなのに! っていうことは置いといて。
自分がバリバリ稼いでいるならともかく、非正規なのに馬鹿にする。それがまかり通っている。
そもそも、最終学歴の方が高校よりも大事だし、最終学歴よりも仕事内容や勤務先、年収の方が大事じゃないのか? 高校至上主義はありうるのだろうか? 高校だけで時が止まっているような人がゴロゴロいるのだろうか? いくら田舎でもおかしくない?
それに本当に頭がいい人って学歴をひけらかさないような気がする。
上には上がいるし、そんな自慢をする暇があったら自分を向上させるほうがいいから。
高校の自慢をするっていうことはそれ以外誇れるものがないっていうことの現れでもあるから。
ある受験生の携帯電話が受験中に鳴ってしまう場面がある。
電源を入れて、その上呼び出し音が鳴るようにしていた理由は記述されていない。自分の人生がかかった入試だというのに、「携帯電話を持っていない」と嘘をついて試験官に預けることをせず、危険を冒してまで自分で持っていた理由は想像するしかない。友達と繋がっていたかったのかな、とか試験中に友達からのメールが来るのを待っていたのかなとか。考えてもしっくりこない。
黒幕もそんなことする前に被害者に謝罪して、その後の人生をよりよくするための方に協力しろよとしか思わない。
掟破りや不正をした受験生がお咎めなしなのはそういうこともあるでしょう。
でも物語の根幹に不自然な点がいくつもあるので入り込めない。
それにこの作者は、複数の人物の視点で一つの出来事を追って、一つのキーになる物を大なり小なり関連させるという書き方をよくするので食傷気味。特にアイテムの方が何度も出てくると鬱陶しく感じてしまう。