夜葬 (角川ホラー文庫) [ 最東 対地 ]
648円
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「最恐スポットナビ」という本に書いてある、とあるページ。鈍振村で行われていた顔をくりぬいてそこに飯を盛る葬式の風習を読むと、スマホのナビが起動し「目的地に着きました」とアナウンスされるとその葬式の風習そのままの姿、通称「どんぶりさん」が現れる。持っているスコップで顔を突かれて失踪者が出たそばには、以前に失踪した人物の顔をくりぬかれた遺体が発見される。どんなに逃げようとしてもどんぶりさんが迫ってくる。逃れる方法は、被害者が増えないようにする方法はあるのか。
これは、本来は何も考えずにばーっと勢いで読んで「あーおもしろかった」と本を閉じるのが正解なのでしょう。
しかし何も考えずに読んで楽しめるまでの文章力はない。短編向きの話です。先が気になって最後まで読んでしまったけど、「だからなんなのさ」というのが最終的な感想でした。
ホラーの長編なら、怪異が起こって事件を調べていくうちに新たな事実が分かり、真相を究明していくことを期待します。なぜこのようなことが起こり、食い止めるにはどうすればいいのか。終盤へ向かうにつれてさらに被害は拡大し、凶悪さも増していく。物語としては盛り上がっていき、そして収束する。
しかしこれは、事件が起こるのみで終わってしまう。
事件を調査するという過程はあるものの大味で、食い止めようとする行為も作中での時間がないにしてもちょっと雑です。怪異が起こるようになった原因も弱い気がする。
物語の大筋を考え、それに沿って忠実に書き上げたような印象を受けます。こういうシーンを入れたい、書きたいという気持ちはあったのかな? もっとおもしろくなりそうなのにもったいない。ある程度は呪逃れの方法も描かれているので、そこはいいと思う。しかし書きながら「どうしてこういう行動をこの人物はとったのか」「なんでこうしているんだろう」みたいな疑問は湧いてこなかったのか。あの刑事さんは危ないことを知っていたのに。
編集者は周りが複数失踪していて、その直前の現象について知らないのは少々不可解。同僚の刑事は知っていたのだから、彼も知っていてしかるべき。それに周りが失踪しているのに落ち着いているのも気になる。しかしなぜ、他の編集者は「失踪」なのだろう。遺体は発見されていないのかな。そうだとしたら彼らだけなぜだろう。
刑事からメールが届いた上司は、なぜ一通だけだったのか。無事だったのか。
しかも最後。「これを描いて驚かせてやろう」みたいな意図は見えるのだけど、なぜそうなったのかはわからない。なんであの状態で話して動けるのか。あの場所の魔力ですか。でも警察が行ったら通常状態に戻ったみたいだし。
それに彼女は木乃伊取りが木乃伊になってしまったようですが、なぜ? 入院していたはずなのに? いろいろ強引です。
データで見ても危ないという話だったのに、一般に販売されても無事だったのはなぜでしょうか。作ったはずのない本だけが危ないのか。
疑問は尽きない。考えているのなら最後にまとめて記述してほしかった。流れでできない部分があっても、できる限りしてほしかった。