カラフル[森絵都] | 毒か薬。

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日記と、本の感想について。

それ以外にもちょこちょこと。ホラーやギャグマンガの紹介もしていきたいです。

森 絵都
カラフル
「おめでとうございます! あなたは当選しました!」天使のプラプラが川を流れる僕をすくい上げて宣言した。僕には記憶がないけれど、自称天使のプラプラが言うには、僕は一度死んでいて、生前に重大な罪を犯してしまったため、このままだと輪廻に組み込まれず、そのまま消滅してしまうという。しかしいくら罪を犯した者でもそれではかわいそうなので、神様が抽選でやり直しをするチャンスを与えることになった。僕はこれから小林真の体に入って、自分のしたことを思い出さなければならない。 小林真の目から見た世界はさまざまな色に満ちていた。



人の成長物語です。直球の物語なのですが、おもしろい。

中学生日記みたいな感じで、家に問題があったり学校で浮いてしまって友達がいなかったりするのを、「僕」が気張りすぎずがんばっていく話です。


がんばりすぎていないところが私の中ではヒット。「なんでこんなことしなきゃいけないんだよ」と悪態つきながらも日々を過ごしていって、前向きになっているところが好き。その過程も嫌味じゃない。


家族と学校のことが中心ですが、最近の小説によくあるように引き伸ばしてダラダラ書いていなくてテンポがよく、とても楽しんで読むことができました。文章が生き生きとしているし先が気になるしで、途中でやめることができず一気読みをしてしまいました。


キャラクターもおもしろい。

習い事ばっかしている母親、のんきで人のよさそうな父親、口が悪い兄、天然そうな下級生の女の子。

ステレオタイプのようだけど、キャラクター設定が工夫されています。でも不自然じゃない。


どの人も現実にいそうなほど普通に見えるけど、実はそれぞれ人間として汚い部分や隠された部分があって、それでもがんばっていて。そういうところも身近に感じてしまいました。


人物に危うさもあるけど、きっと光の部分のほうが強いのでしょう。



「カラフル」っていい題名だなあ。