2014.4 福島白河 城下の桜 その3 | あおいとあさぎの旅行記 blue × blue journey

あおいとあさぎの旅行記 blue × blue journey

カメラの蒼生≪あおい≫と一緒にまわった、ひとりとひとつの旅のきろく。

誰もが楽しめる憩いの場という理想を掲げて造られた、

日本最古の公園・南湖公園の湖畔を歩く。

*その2~楽翁桜~はこちら


まだ頂に白雪を残す連峰から吹きおろす、少し肌寒い風が

湖面をさざめかせ、太陽の光に反射してキラキラと光る。

光の加減から季節を知れるのも日本のいいところ。


南湖には、日本庭園らしく立派な松の木もたくさん植わっています。




湖面を滑る。







老齢な大木は重たい枝を支え木に支えられながら、

どっしりと水の上に立つ。

松の枝とは不思議なもので、湖面すれすれを這うように伸びていくんですね。


芝生の上には様々な種類の桜木が、まるで額縁を彩るように

湖に沿って花を咲かせていて。

花の咲くところには、人が集まり、そこにひとつの輪っかができる。






母と娘。











こういう風景が日常的にありふれることを願って築かれた公園だから、

その願いは叶えられたということで、それはとても尊いなぁと思う。

この時見た桜の色や形は、たぶん大人になっても思い出せる。

柔らかい曲線を描く花びら、その薄さと儚さや束になって咲く力強さ。




花束を。







花曇りの日は桜を撮るのって本当に難しいのですが、

この淡白は、青空の下だととても際立つ。


で、こういう濃い色が飛び込んでくると火花のようにとても鮮明に映る。




線香花火。







紅しだれの濃緋色は、湖の碧に映えて。

さざ波から午後の日射しがひるがえって、輝く湖面には希望ばかりが見える。

このきらきらしたものを手のひらにすくって、閉じ込めておきたい感じ。


花は桜だけではなく、春の訪れを喜ぶものたちはほかにもたくさん。

地面にほど近いところで、その存在を主張はせずにひっそりと咲く姿もまた

静かに心打たれます。




春を待つ人。







スミレの花言葉は、「謙虚」「誠実」「小さな幸せ」だそうで、

これほどぴったりな言葉チョイスもないだろうというくらい。

こうありたいものです。


湖の端まで来ると、映画のワンシーンのような桜並木のトンネルを、

自動車が数台だけ通り過ぎていき。

とても素敵だったので、車がいなくなるのを待ってからカメラを構える。





祝福の道。






自転車を公園の入口に停めてきてしまったことを少し後悔。

この真っ直ぐな桜のトンネルを二輪で駆けて行ったら、とてもとても

爽やかな、炭酸水のような気分に満たされただろうに。

青春の1ページみたいな風景。


南湖公園のそばには小高い山があります。

眺望を期待しつつ、少しだけ山道を登ってみる。


高い木に覆われて、急に視界が狭くなるなか、

山道の途中にはぽつぽつと民家があり、とある一軒の広い庭先の先に

大きな大きな、しだれ桜が凛と立っている。

樹齢どれくらいなんだろう…大層立派な木でした。







存在。










まだ枯れた色をしている芝の庭にはこの木しかなく、

この木だけがものすごい存在感を放ってそこにあった。

生まれたときの時代をそのまま引きずってきたかのように、

時間の流れがそこだけ少し違うような。

この桜を見るためだけでも、坂道を登ってきた甲斐がある。


もう少し道を行くと、子供たちが集っている場所があって、

おそらく児童館?みたいなところなのかなと。

広く、起伏のある芝生の上を駆け回り、ずっと何かを探している少年。




さがしもの。







地面をときおりじっと見つめて、また走り出す。

何を探していたのかな?

何か木の実みたいなものが落ちていたのか、花なのか虫なのか。

周りのことが見えなくなるほど真剣に、集中して。

この一心不乱さ、ぜひなくさないでほしい。


そんな人と自然の営み、四季の繰り返しを何十年も見守るこの存在。

一年ごとその身体に刻まれる、確かな輪線の証。

なんだかとても印象に残った。




年の功。







年輪っていうシステム、いいなと思う。

自分が一年間生きたという事実を残しておける。

人よりも長い年月を生きる生き物だからこそかもしれないけど、

別の誰かが見ただけで、その生き方が直感的に伝わってくるような。

そういうシステム。



日も暮れかけてきたので、次回は南湖公園を後にしつつ、最後の目的地へ。

小さなお寺に咲く、三種の桜に夕日が射すと、これほど素晴らしく切ないのかと、

しばらく佇んで見つめてしまうような桜たちがいます。

*その4~花は聯芳~はこちら