2012.7 横須賀・猿島 その1 | あおいとあさぎの旅行記 blue × blue journey

あおいとあさぎの旅行記 blue × blue journey

カメラの蒼生≪あおい≫と一緒にまわった、ひとりとひとつの旅のきろく。

東京湾に浮かぶ無人島。

そこは明治の頃、日本海軍の軍事要塞でもあった。


神奈川・横須賀市の港からわずか1.7kmのところに、

その「猿島」はありました。

小さな島で、夏には海水浴やバーベキューを楽しむ人たちで

表はいっぱいになります。

しかし、一歩島内の奥深くに入ると、ほぼ手つかずのまま

放置された自然と、当時の面影や感触を何となく残す

要塞の一部がひっそりと共存した、不思議な世界。


横須賀・三笠公園から定期船に乗って、10分ほど。

猿島桟橋に近づくと、海水浴を楽しむ陽気な声。

砂浜は人とパラソルで埋め尽くされていました。


下船して海水浴場をぐるりと回り込むと、

「海軍港」の標柱が。

見上げれば、こんもりと深い森に覆われた島の頭部。

急な坂道を上がっていくと、もう喧噪からは遠ざかります。


そして見えてくる、要塞としての猿島のすがた。


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跡。









頭上高くまで茂る木を透かして

夏の陽射しが少しずつ落ちてくる。

雨のあとだったのか、床の木板が生温い光を反射しています。


両側は石壁とレンガ造りの建物に囲まれて、

言葉を発することのない生き物のようにそこにある。

兵舎、弾薬庫などの跡が残っています。

当時、ここで確かに軍人さんが生活していたという

影のようなものが、肌に浸み入ってくる感覚。


どこかひんやりとした空気さえ感じます。

とてもとても不思議な空間です。


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時を隠す。















その過去の出来事を覆い隠して、そっと眠りに包むこむように

木々は無防備に生い茂っていました。

音も消して、ここだけの結界を張っているようにも見える。

自然の深い場所です。


遊歩道はやがて狭まり、暗がりのトンネルの入り口が

口を開けて待っています。

ひとりで入るのは怖いですが、勇気を出して。


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暗がり。









ここに入るカップルは、自然と手をつないでしまうことから

「愛のトンネル」と呼ばれているそうですが…

そんなロマンチックな感じではないです(笑)


トンネルを抜けると、高いレンガ塀に囲まれて

細い道に出ます。

まさに要塞。

探検しているようでもあり、相変わらず「ここに人がいた」

という妙に生々しい感覚は周囲に漂っています。


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迷路。















フランス式のレンガ造りの建物でも、規模が一番大きいのが

この猿島要塞なんだそうです。

壁は苔むしていましたが、良く見ると細長いレンガが

緻密に組まれています。


その後もいくつかのトンネルを抜けると、少しずつ潮騒が

聴こえてくるようになります。


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光の出口。















要塞を抜けると、あたりは自然一色になります。

海が近い。

小さな展望台がある方へ歩いていきます。


砲台跡が残る小さな広場に出ると、

急に視界が開けて、目の前には青い草原。


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淡い境界。









この日はあいにく曇りがちの天気。

晴れた青い空に、別の色をした海の境界がくっきりと一直線に

現れるのも良いですが、曇りで曖昧になった境界が

空と海をひとつのグラデーションのようにしてしまうのも

綺麗だなぁ、とこのとき思いました。


海のすぐ近くまでは、急な階段が続いており

磯に降り立つこともできます。

沖の方へは、漁船なのか軍艦なのか、船がいくつか航路を進んで

いきました。


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磯の浜辺。









釣りをしている人もいましたね。

結構大物が釣れるらしいです。


しばらく海を眺めたあと、再び階段を上がって引き返します。

太陽の光が強い季節、これでもかというくらい葉を茂らせた

木々の中に隠れるようにして、砲台跡が佇んでいました。


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鈍色に光る。









ここからこっそり、海の先に顔を出して

狙いを定めていた砲台があったんでしょうね。

向こうからは見えない角度で、位置で。

この場所や人、あるいは国を守るために。


やっぱり不思議な気持ちになります。


これで猿島を一周。

ゆっくり見て回っても、2時間もあれば十分なくらい。


再び、夏を楽しむ人々の喧噪のなかに戻って、

帰りの船が出るまで時間つぶし。

メインの海水浴場から少しだけ外れると、砂に少し石混じりの

浜に出ます。


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釣り人。









ここも人は多かったのですが、貝殻がたくさん落ちていたりして

海に入らなくても楽しめました。

沖では釣りを楽しんでいる人も。

スズキやカレイなどが釣れるみたいです。


やがて帰りの時間になり、猿島桟橋で待っていると

船が近づいてきました。

海水浴客の笑い声。賑やかです。


島は自然に囲まれて、外から見たら、

中にあんな建物があるとは想像もつきません。

でも、奥深くに入れば、そこに確かに「軍事要塞」という

名残りがあって、その記憶が着実に息づいている。

難しいことは考えられないけど、直感で訴えてくるものが

確かにあります。


とても不思議な無人島は、今日も東京湾の端に浮かんでいます。


*その2~横須賀の街中~はこちら