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先日友人のシオリと山形に行ったとき、夕食をどこでとろうかすごく悩んだのです。JR山形駅のすぐ近くには、とても目立つ居酒屋がドーンと一軒あり、その他小さな居酒屋がそれぞれの通り沿いに並んでいるという感じ。その目立つ居酒屋は電光掲示板で「いも煮!!!」と派手にアピールしていたり、「ここ一軒で、山形県。」という弾丸旅行者には嬉しいキャッチコピーが書いてあるのぼりが立っていたり、地酒の名前を書いた木札が何十枚もずらーっと並んでいたりさらにそれが下からライトアップされていたりして、なんだか圧倒されるビジュアル。その存在感はJR山形駅をも凌いでいたように思う。当初、ひきこまれるようにすーっとこの派手な居酒屋の前まで歩いて来てしまった。

でも、待って。本当にひきこまれるようにこの店に入ってしまって良いのか。長いものに巻かれるような感じで、なんだかつまらない。ついさっきまでシオリと「やっぱり名物のいも煮が食べたいね」と話していたけれど、私たちが食べたいいも煮は、電光掲示板で「いも煮!!!」とかピカピカやられるようなそういうものじゃないのでは。もっともっと素朴な、家庭で出てきたときは「なんだい母ちゃんまたいも煮かい」とか文句言いながら食べていたのに上京したら急にステーキでも寿司でもなくあのいも煮が食べたくなった、そんなことがあったっけなあ、と旅先でふと思い出すようなそういうものなのだ。せっかくだから地酒もちょっと飲んでみたいと思ってたけれど、ここは山形の地酒だけでなく全国の地酒をも全て網羅してそうな勢いがあってなんだか恐ろしい。「ここに入るのは、悔しいね・・・。」と言い合って1時間ほど歩き、結局1日目は宿のご主人におすすめを聞いて「味の店・スズラン」に行くことになったのでした。

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(念願のいも煮。肉の味がいもにしみこんでる。)


「味の店・スズラン」は地元の人がよく行くお店とのことで、サラリーマン風のおじさんたちでにぎわっていました。念願のいも煮やあけびや380円の日本海すしセットなどなどを堪能。安くておいしかった。いも煮は1つ注文したつもりが2つ運ばれてきてしまい、まあいいかということで1人1杯のいも煮をがつんと食べた。すごく多かった。いも煮過剰。ダシがいもにしみておいしかったけれど、素朴でセンチメンタルな気分になる暇はなかった。胸までいもいっぱい。


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(「花笠踊り」に盛り上がるお客さんたち)


翌日。夜行バスで東京へ戻る予定だったので夕食もゆっくりとれる。30分ほど歩き回った末、「昨日いい感じのお店に行けたし、今日は長いものにまかれるか。」ということで例の派手な居酒屋へ。入り口はジブリに出てきそうな小さなくぐり戸。ほう・・・。なかなか素敵・・・と思う心をなぜか押さえる。だまされないぞ。少し混んでいたため10分ほど待って入店。和風の下駄箱にズラっとならんだ醤油の瓶。少し暗い照明。和装の袖をまくった店員。例えるなら『千と千尋の神隠し』みたいなムード。通された席は半個室のこたつ席。うわああああなんだこれ、めっちゃ雰囲気いいいいいい!!「お客様、こちら、あたたかいおしぼりの入ったつづらと、冷たいおしぼりの入ったつづらが御座います。どちらになさいますか?」と若い男性店員が聞いてくる。つづら?!つづらとか、「舌切りすずめ」でしか聴いたことのない単語だっ。メニューも、郷土料理のオンパレード。知ってる料理がないくらい。うっ、楽しい。楽しいよお。さらには、「ただいまから、『花笠踊り』のショーを行わせていただきます。」と、店員総出の踊りタイム。沖縄の民謡居酒屋みたいだ。うわああ楽しい!助けてえええ!


というわけで2日目もとても楽しい夕食でした。山形サイコー。


山形がサイコーなのはいいとして、話を戻すと、なぜだか私はできれば長いものに巻かれたくない。でも。「長いものに巻かれたくない層」というものもきっと大きいのだろう。もはやこの世には「長いものに巻かれたくない層向けの長いもの」も存在してしまう。あぁ。長いものがぼくをせめる。本当は長いものも長くないものも何も意識せずに素直に世界を感じていたいだけなのに。この自意識過剰を葬り去るにはどうすべきか。今後の研究を待ちたい。