日本中が「パブロフの犬」化している~消費増税 | イイケン先生かく語りき

日本中が「パブロフの犬」化している~消費増税

何か、日本中が「パブロフの犬」化しているようで、恐ろしい。

「日本は財政破綻」「高齢者を3人で1人が1人で1人ささえなくてはならなくなる」「現役世代の負担が大きくなる」──「だから消費増税が必要」というのが増税の理由である。

マスコミ、とりわけ大新聞は、各社そろって「消費税増税キャンペーン」の展開中だ。

 

8月末、消費税率の引き上げについて、有識者の意見をきく政府の「集中点検会合」とやらの結果、はっきり「反対」はわずか5人、条件付きを含めで「賛成・容認」が9割を超えた。マスコミ発表の「賛成」が7割というのは、間違い、「反対」は5人しかいなかった…が事実である。

 

60人の識者のうち40%が学者・金融大企業系のエコノミスト、23%は大企業(労組含む)、消費者団体、NPO16%、中小企業代表が13%、その他政治家・行政マンとなっている。

中小企業代表の中身をみると、会議所会頭が東芝相談役、後は各団体のトップ、真の中小企業代表は1社のみ。しかもこの企業、かなり優秀企業で、天皇陛下が視察をされているモデル企業、異例中の異例である。中小企業代表の「増税反対」は誰もいなかった。

代表の識者の中に、法人会、間税会、納税貯蓄組合連合会等納税協力団体は含まれず、中小企業を熟知している税理士や中小企業診断士のお呼びもなかった。

 

このメンバーでの意見聴取とは、識者選定の段階から「出来レース」、「増税に向けて十分に検討しましたよ」というポーズに過ぎないと言っても過言でない。

何でおかしいかの理由を書く。

 

まず大学教授やエコノミスト、中小企業の現状と消費税の実態を何もご存じない、マクロの数字を睨めっこする、「オタク族」である。

「人」の顔を見ないのか、実体経済を体得せずして、マクロ数値を信じる連中である。

相も変らぬ御用学者と、高給取りの大企業系サラリーマンエコノミスト達。

決して悪人とは言わないが、中小企業の消費税期限内納税の苦悩の実際を知らないから、賛成するに決まっている。

 

米倉経団連会長は住友化学、豊田氏はトヨタ自動車、岡村日本商工会議所会頭は東芝等々、日本を代表する巨大輸出企業。

これらの大企業は実質的に払ってもいない消費税を返してもらっている、「輸出戻し税(還付金)」制度の恩恵を受けている。トヨタ自動車に5年間で13000億円の還付金、輸出大企業上位10社に年間約8700億円の還付金を支払ってきた。

 

これらの還付を支払う税務署は、当然赤字になる。

赤字の一番大きい税務署はトヨタ自動車のある愛知・豊田税務署だが、管内の消費税収入より還付金額が1153億円も上回っている(09年度分、5%分)。しかも遅れると莫大な利息が付くから、税務署の管理運営部門は、税金の徴収でなく支払いに没頭する毎月である。

 

還付金をもらっている企業は全国でおよそ155000社、そのほとんどが輸出企業。

政府の予算書では、こうした還付金は約3兆円(10年度)あり、消費税の総額(約125000億円)の約3割に上るという。仮に10%に引き上げられれば還付金は単純計算で6兆円にも達する計算になる。極論すれば、増税で潤うのは大企業だけ、少なくても、これらの会社は増税の痛みを全く受けない企業群であると言って良い。

 

消費税増税は景気悪化を招き、国民の生活を苦しくさせる上に、税収増にも財政再建にもつながらない。国の財政が厳しいから増税はやむを得ない、というマスコミの論理は詭弁だ…最初から、こんな意見は出るはずがない設定になっている。

 

その中にあって増税反対の論陣を張ったのは、なんとアメリカの「ウォール・ストリート・ジャーナル(日本版)」だった。

76日付社説で、「消費税増税の議論を今、強いるのはおかしい。デフレにあえぐ日本経済は消費拡大を必要としている」と指摘したうえで、肥大化した政府の無駄を削り、規制緩和を進める必要を説いている。

 

消費増税が経済に与える影響について、消費増税後の20144-6月期実質GDP(国内総生産)成長率は、前期比・年率で約5%落ち込むと予想され、最悪のケースではマイナス8%成長、経済産業省の試算はそれ以上と算出され、財務省の見解と大きく違っている。

 

今回の「集中点検会合」は、…60人の国民代表の識者達の意見は、反対が5人しかいなかった…という消費税増税を既成事実化させるための、陳腐な政治的パフォーマンスなのか、

思わず「自民党、お前もか!」と叫んでしまう。

 

8月末に実施した「共同通信」の世論調査によると、来年4月に消費税率を8%に引き上げる方針に、予定通り実施すべきだとの回答は225%にとどまり、見直しあるいは反対が大多数となった。「読売新聞」の世論調査も、賛成35%、反対57%という結果であった。

サイレント・マジョリティsilent majority物言わぬ多数派)は果してどこにあるのだろうか?

 

ペンを置くに当たり、自分に言い聞かせるために毎日Facebookに「今日の言葉」を掲載している。その786回(2013.9.5)、「西郷隆盛」の言葉を記(しる)す。

 

国家の基盤は、財政でも軍事力でもない、

民族の持つ颯爽(さっそう)とした士魂にある。