重荷 | 現・代・音・痴

重荷

僕は若い頃サムライだった。全身全霊、余力残すことなく力を抜かず身体を鎧と化し、相手に向かってゆく。遊び心など相手にも自分自身にも失礼だと思っていた。
もう30年前に元、全日本キックボクシング・チャンピオン(現在65才?)に云われた言葉が今でも僕の中に棲んでいる。
「市丸君、動きが硬いよ」
その時の僕には云われている意味がよく理解できなかったが、今では僕にしかない素材を引き出す為の方法論の一つになっている大切な言葉だ。
僕が26才の時に空手団体の極眞会の全日本オープントーナメント大会に他流派として出場が決まってから、当時、東京・高円寺でやきとり屋「ファイター」を営みながら仙人のごとき修行を継続中のチャンプを頼り、九州・唐津から武者修行に上京した。遺書のようなものをしたため、身辺整理をして家を発ったことを覚えている。
若い時分は器械体操に長年携わり、20代になってからは空手やプロのキックボクシングのリングに選手として上がり、後継者や有志たちも少しは育てた。僕の妻や子どもたちもそれにつき合ってくれた。

自己満足の美学もありき。
僕は知らず知らず、自身の歩みとともに美学を積み重ねてきた。今、それらを削ってゆく勇気と会話しているところだ。
現・代・音・痴-011.jpg「重荷おろせ兄弟!」