新兵器、爆誕。 | 続・我が逃走

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不完全密室殺人/JONNY/パイプカツトマミヰズでベースギターを担当する舟橋孝裕のブログです。

友人の飛田君(地慕里ジャンクション )はエフェクターの自作が得意らしい、という話を耳にしたのは今から一月半程前の事。

そういう面白い事を、何で今まで知らなかったのだろう。


すかさずコンタクトをとる。

「あのさ、エフェクター作るの得意って聞いたんだけどさ」

『うん、作れるよエフェクター。ぶっちゃけベース弾くのより得意かもしれない(笑)』

「そんな馬鹿な(笑)。あのね、ループスイッチャーが欲しくてね」

『お、スイッチャーか』

「そうそう、仕様はね・・・・」

以下略


実は相当に大変な事をお願いしているとは、その時の僕はまだ知る由もなかった。

飛田君は自分も相当なエフェクター愛好家で、殊にベース・シンセサイザーへの拘りは並々ならぬものがあり、なかなか手が届かないような変り種から一般的に普及しているモデルまで、或いは愛情を持って或いは自分仕様にカスタマイズして愛用している。

その彼が、まさか好きなだけではなく「Weather Report」 という屋号を掲げてエフェクターの自作にまで手を出しているとは露知らず、僕はどこかに自分の理想通りのエフェクターを、堅牢な作りでかつ手の届く価格で提供している所はないものかと探し回っていたのだった。

早速、飛田君に自分の欲するループスイッチャーが作成可能か訪ねてみる。


常日頃から、自分の思い通りのサウンドをアウトプットする事、それを演奏する曲を活かす方向で行使する事に精力を傾けていたものの、実現するには複雑なシステム、或いは物凄く俊敏な速さで動く足、或いは3本目の足が必要だと感じてきた。

例えば「歪み→ベース・シンセサイザー→クリーン」と音色を切り替えるとする。


1.歪みエフェクターのスイッチをオン 

2.ベース・シンセサイザーをオンにすると同時に歪みをオフ

3.その後にベース・シンセサイザーのスイッチをオフにする


という一連の作業がこの工程には必要なのだけれども、ここで問題になってくるのが2.である。何て事はない、右足と左足を同時に使えばいいのだけれども限られたスペースにエフェクターを収めた場合、簡単にこれが出来るような配置になっているとは限らないし、第一興奮状態にあるライブ中にかような正確さを要求される作業を両足を使った極めてフィジカルな部分で実現出来るかどうか。そこに神経を使うよりかは他に集中したい部分があまりにも多いため(それは気迫というライブにおいて何よりも僕が重視する部分だったり、転ばないようにするという基本的な部分だったりする)、僕は不本意ながらこの一連の音色切り替え作業を放棄し、ベース・シンセサイザーのセクションをすっ飛ばしたりもしていた。或いはほんの数拍の間、2台のエフェクターが同時にオンになっている瞬間もあったかもしれない。しかしてこれらはやはり当初描いたイメージからは逸脱するものであり、それというのは一種の罪悪感すら抱かせるものであったのだ。


これから解き放たれるには

「相応のチャンネル数」を持ち、「それぞれが独立してオン・オフ可能」であり、なおかつ「他チャンネルを踏む事でそれまでオンになっていたチャンネルから一発切り替えが可能」であり、猥雑さから解き放たれるためにも「オン状態のスイッチをもう一度踏む事で、ループ・スイッチャー自体がバイパスになる」物が必要だったのである。

で、飛田君にオーダーする事一ヶ月。

飛田君は期待以上の作品を仕上げてくれた。


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3チャンネル、そして一発切り替えが可能であり、バイパス状態にするのも容易。

そして更には堅牢であり、興奮状態でも踏み間違えがないようにスイッチ感覚も適度な距離が設けてあり、それでいて視認性に優れたLEDを搭載した、嗚呼、これこそまさに理想のループ・スイッチャー!


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製作過程に於いて、様々な苦労があったらしい。

自身もベーシストである飛田君は、自分自身の拘り、そして美意識をも投入してこのスイッチャーを仕上げてくれたのだった。ジャックはスイッチクラフト、配線材もベルデンを使用と電気信号レベルで不足のないものを選定、さらにはあらゆる使用状況での使用を想定して(電圧というものが関わってきたらしい。一度組み上げた物に特定の電圧状況で使用した場合、誤作動が認められたそうだ)部品を追加、そして各チャンネルにはバッファが内蔵されている。中身の基盤(何と業者に発注したそうだ)はしっかりと絶縁された上でスポンジ材で固定されており、堅牢な厚さ2mmのアルミケースがそれらを保護する。

「これなら暴れて踏んでも大丈夫だよ」とは飛田君の弁。


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エフェクターを接続して、早速使ってみる。

・・・・・うん、素晴らしい!パーフェクト!エクセレント!ブリリアント!

理想通りの、否、理想以上のものがそこにはあった。

現在相応の大きさ/高さのアルミケースが本作には使用されているが、発注してあるこれより高さが低いケースが届き次第ver2.0に中身を移植してくれるそう。たまらんな!

僕の足元のエフェクターそれぞれが内臓ならば、それらを司る脳の役割を果たしてくれるこのスイッチャー。

これはどのバンドでも重宝しそうである。


「Weather Report」 では他にも歪みモノからトレモロまで様々なエフェクターを作ってくれるとの事(今回のループ・スイッチャーは13000円程度で製作/販売可能との事)。かくいう僕も既に2台目の製作を依頼しており、そちらの仕上がりも相当楽しみである。

興味のある方は気軽に本人まで!