「それじゃ、隠し通路とかないか、調べてみる?」
僕はとりあえずシーにそう提案した。
さっきの泥お化けが出てきたところにはできれば戻りたくないからね。
隠し通路があるようなら先にそっちを調べてみよう。
もしリクがさっきの泥お化けに終われてここに逃げ込んだのなら、真っ先に部屋の中を調べて、隠し通路があるなら入っていくだろうし。
「うん、わかった。」
シーは素直にうなずき、僕らは手分けして、部屋の隅から隅まで、何か仕掛けがないか調べてみることにした。
でも、もしこの部屋にリクが逃げ込んだのなら指輪がそのままおいてあるっていうのはちょっと不自然かな。
リクならお宝とか装飾品とかになったら目がなさそうだし。
そう考えると、この部屋にはリクはきていないような気がしてきた。
だってリクなら指輪も取っていくだろうし、何しろ詰まれていた葉っぱだって調べないわけがない。
調べたならそのまま跡が残っているだろうけど、ここに積んであった葉はきれいに積まれていた。
いや、でもやっぱりさっきの泥お化けとあった場所には戻りたくない。
でも、ここにリクやブレイズが来た形跡がないなら調べるだけ無駄な気がしてきた。
「ねぇ、シー。」
「・・・何?」
僕がシーに話しかけると、少し間を空けて返事が返ってきた。
もしかするとシーも今僕が考えたことと同じことを考えていたのかもしれない。
シーの方が僕よりリクとブレイズと付き合いが長いんだから、僕と同じ考えにたどり着くのにそう時間はかからないだろう。
「あのさ、ここにはリクもブレイズも来ていないんじゃないかと思うんだけど、どう思う?」
「・・・今僕もそれ考えてた。」
案の定思ったとおりの返事が返ってきた。
「引き返す?」
「・・・たぶん引き返したほうがいいと思う。」
少し間を空けて振り返ると、僕の反対側の地面を調べていたシーは僕と同じタイミングで振り返り、ばっちりと目が合った。
「・・・行こうか。」
僕とシーは同時に立ち上がると、もと来た道を引き返すことにした。
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幸い、元の分かれ道の場所に戻ってきたときには泥お化けの姿も、泥の塊の姿もなかった。
しかし泥でびちゃびちゃの地面は相変わらず。
泥のない乾いた地面が無性に恋しい。
「どの道を行こうか?」
僕はシーを見下ろした。