鬼畜と心配性とサポート役 第2章 3話 | Another やまっつぁん小説

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 空間移動した(させられた)3人は、ついさっき門を出たはずの学校の体育館裏にいた。


「さっさと来い。」
 ついたとたん、歩き始めた帝は、いったん立ち止まると、呆けたように突っ立っている黒と有栖にそう言ってから、また歩き出した。


 空間移動特有の意識が散漫になる感覚を振り払いきれず、呆然としていた二人は、ハッと我に帰り、あわてて追いかける。
「テメーら情けねぇなぁ。俺に力には慣れてんだろーが。」
 横に並んだ有栖と黒に、帝があまりといえばあまりの言葉に有栖の額にピキッと青筋が浮かんだ。


「~っ!!何なんださっきからっ!一人でさくさく事を進めやがって!!一体何がしたいんだっっ!!」
 声の限り叫んだ有栖は、外見とあわせて、結構な迫力があるのだが、しかし、本当にキレた有栖の恐ろしさと怖さを知っている帝は、そんな有栖に
「わめくな。」
 の一言。
 その一言により、有栖の怒りはさらに高まった。


「ふっざけんなよ帝っ!!!テメーのわがままにこっちがどれだけ振り回されたと思ってんだ!!いや、それはいい!!もう慣れた!でもせめて理由くらいは言ったらどうなんだっ?!」
 大音声でわめく有栖を見て、黒は周りに人がいなくてよかったと心底思った。
 人がいたら有栖の声を聞きつけて、大変な騒ぎになっていたかもしれないからだ。
 それに、誰にも見られないのなら自分が力を使って二人を止めても、とやかく言われることもない。


「・・・・・・二人とも。やめて。」
 言いながら黒の髪がざわりと蠢く。
 途端、二人の口論がピタリと止まる。
 有栖はそろりと、帝はチラッと黒のほうを見る。


 黒の力は回復などのサポート系が多い。
 だが、攻撃手段がないかといえば、ないわけではない。
 それどころか、帝、有栖という要注意人物が敵に回したくはないと思うぐらいには強い力だ。


 黒の力は髪を媒介にする。
 そのため、黒の髪が蠢くのは、力を使う直前、ということになる。


「いや、だって、紫園。悪いのは帝だぜ?!」
 有栖が冷や汗を流しながら言うと、帝が
「何でだよ。先につっかかってきたのは零斗、お前だろーが。」
 と反論。


 すると、カチンときた有栖が、声のトーンを上げる。
「それはお前がつっかからせるよーなこと言うからだろーが!!」
「あぁ?!俺がいつそんなこと言ったっつーんだよ!!」
「いっつもだろーが!!」
「んだとテメー!!」
 また口論になっていく二人に、黒はため息をつく。


 すると、黒の髪が有栖と帝に巻きつき、持ち上げる。
「うわっ?!」
「なっ?!」
 二人同時に声を上げる。


 黒が
「二人とも、やめてって言ってるのが聞こえないの?」
 と、言うと、また二人同時に声に詰まった。
「うっ・・・。」
「ぐっ・・・。」


「帝。あなただってこんな風にいきなり持ち上げられたら嫌でしょう?私の場合は髪で支えているのが見えるからいいけど、あなたの力は見えないんだから、そこの所は、いくら慣れてるとはいえいきなりやられると零斗だって驚くに決まってるわ。零斗もいくら驚いたからって、少し言葉が過ぎるわ。帝にも理由があるかもしれないんだから。」


 黙って聞いていた有栖が、そこで、
「だって帝がその理由を言わないから・・・」
 と、ぼそぼそ文句を言う。


 しかしすかさず黒が、
「人の話を切り出すタイミングは人によって違うんだから、それまで待ってあげてもいいんじゃない?」
 とたしなめると、バツの悪そうに黙り込む。
 黒は二人がおとなしくなったのを見ると、そっと下におろした。


「さて、話を元に戻すけど、帝。何でいきなり学校に戻ってきたの?」
 黒が問うと、帝は視線を泳がせながら答える。


「・・・・あの赤眼ヤローのことが気になったから、少し調べようと思ったんだよ。」
「赤眼って生徒会室に来たあの人のことか?」
 有栖が思い出したように言うと、帝は無言でうなずいた。


「何でまたいきなり。」
 有栖が聞くと、帝はそんなこともわからないのか、とでも言うように、フン、と鼻で笑って吐いた。
「俺がしりたいと思ったからに決まってるだろう。」
「・・・・・・いきなり?」
「いきなり。」
「ハァ~。」
 有栖は大きなため息をつく。
 ものすごい俺様的思考回路に。


 さすがの黒も少し呆れ気味だった。
「なんというか・・・ものすごく帝らしい発言ね・・・。」
「そうか?」
 しかもその考えを地でいっているから余計悪い。


「まぁ、いいわ。それならパソコンで人名検索したら良いと思うけど。」
「だな。」
 有栖と黒は互いに顔を見合わせ、またため息をついた。


「ため息ばっかりついてねーでさっさと行くぞ。」
 帝ただ一人が我が道を突っ走っていた。