その後教室では改めて学校生活の注意について話を聞いたり、ノートパソコンを使った授業の受け方等の説明を受けた。
話が終わった後はすぐ解散となり、生徒達は早く学校が終わったのをいいことに、早速島のカラオケやゲーセンなんかに新たな仲間と連れ立って向かっていく。
だいたいどの生徒も同級生達に何かと話しかけ、グループを作り上げていったが、3人に話しかけてくるものはいなかった。
きっと有栖の見た目のせいだろう。
と、いうわけで3人はさっさと家へ帰ることにした。
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「で、何でお前はついて来るんだ?」
不機嫌そうな顔をして帝は隣を歩く有栖に聞いた。
ちなみに黒はというと、帝の父親の援助で高級マンションに一人暮らしをすることになったようだ。
まだ引越しの片づけが終わっていないらしく、学校を出た後急いで帰って行った。
黒のマンションは学校から程近い町のはずれに立っており、残念ながら帝の家とは方向が違っていたので、帝はなんとなく有栖と二人っきりで下校していたのである。
「お前話聞いてなかったのか?」
有栖がそう聞き返すと帝は話という言葉を聞き怪訝そうな顔をした。
「やっぱ聞いてないか。実は今日から俺の家はお前の家になったんだ。」
「・・・は?」
帝は思わず立ち止まる。
有栖は数歩先で立ち止まるとくるりと振り返って、何も言わずただニッカ~と笑った。
少し間が空いた後、帝は有栖に食って掛かる。
「おい!何勝手に決めてんだよ!住むとこ別に借りてやっから出てけ!」
「まーったく、照れちゃってよ~。だいたい、そんなこといったってお前の一人暮らしの条件に俺という見張り兼護衛がつくことっていうのがあんだぜ?」
有栖はそう言うと大げさに肩をすくめた。
「な、何言って・・・」
「ほんと、ほんと!俺を追い出したらどうなるか知らね~ぜ~。」
有栖はへらへらと笑った。
帝は大きくため息をつく。
「さ!早いとこ帰ろーぜ!俺まだ引越しの準備できてねーんだ。」
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「お帰りなさいませ、帝様、零斗様。」
帝たちは広い庭を抜け、家の中に入ると一人のメイドが出迎えた。
「あぁ。」
「ど、どーも。」
帝は慣れたようにそっけなく返事を返すが、さすがに有栖は様付けで呼ばれるのには戸惑ったようだ。
「そういや、使用人は10人いるのに迎えは一人だけか?」
お坊ちゃまがそう聞いた。
「はい、申し訳ありません。ただいま他のものは家具の設置、片付け等で・・・」
「あぁ、もういい。それより早く部屋に案内してくれ。」
深々と頭を下げるメイドを見下ろす帝の態度は相変わらずそっけない。
「かしこまりました。それでは、こちらに・・・。」
彼女は帝の態度についてはまったく気にしていない様子で先立って歩き始めた。
彼女もどうやらプロらしい。
すぐに帝がメイドの後ろに続いた。
有栖も少し遅れて二人の後を追う。
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「帝様のお部屋はこちら、零斗様のお部屋はそのお隣のあちらにございます。」
メイドは部屋を手で示すと
「鍵はこちらです。」
と、部屋の鍵を差し出した。
どちらの鍵も少し古風なデザインで、帝の部屋の鍵は金、有栖の部屋の鍵は銀主体だ。
二人は黙って鍵を受け取る。
「お二人のお荷物にはどちらにも手をつけておりません。手伝いの者が必要な場合は呼び鈴を鳴らしてくださいませ。」
メイドはもう一度深々と頭を下げる。
「ん。そんじゃ、俺は片づけしてくっから。」
「わかった。」
二人はそう言うとお互い割り振られた部屋へと入った。