鬼畜と心配性とサポート役 第1章 3話 | Another やまっつぁん小説

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「そーいや、帝。よくお前のおふくろさん一人暮らしを許してくれたなぁ。あんなに過保護だったのによ。」
 アリスは思い出したように帝に言った。
 

 実を言うと、帝の父は大会社社長で、帝はその次男坊に当たる。
 長男と違って帝は会社を継ぐ必要がなかったため、帝の母親は長男の分も帝を可愛がった。
 そのため帝はあのような傍若無人・ワガママ大魔王のような性格になってしまったのである。


 そしてそのような過保護マミーが、帝の一人暮らしに賛成するはずがない。
「あぁ、母さんのことか。それについては父さんがいろいろと説得してくれたみたいでな。10人世話人をつけるっていうんでようやく納得してくれたんだよ。」
 帝はこそこそと言った。


 帝にとっては世話人がいるのが当たり前。
 この島に急遽新しく建てられた、帝用別荘も、島にある病院並みにでかい。
 あまりでかい声でそのような話をすると、耳ざとく聞きつけてきた女生徒たちに群がられる。


「へ~ぇ、10人か。さすがだな。ま、これからよろしくな!」
「・・・え?」
 有栖のよろしくという言葉に、帝は戸惑う。
 そしてどういうことかと聞こうとしたとき、廊下から台車を押すような音が聞こえた。


 振り返ると凍静が廊下から手招きしている。
 3人は顔を見合わせると黙って部屋から出た。
 野次馬達が何事かと3人を見ている。


 廊下には凍静と一緒に小奇麗な台車が置いてあり、その台車の上にはいかにも高級そうなノートパソコンが3つ置かれていた。
 3台のうち一番大きな黒いパソコンがきっと帝のものだろう。
 そしてそのパソコンの両脇にはマリンブルーとワインレッドのパソコンが置いてあった。


「これらがあなたのお父様からお預かりしたパソコンよ。真ん中のパソコンがあなた、ブルーが有栖君、レッドが黒さん専用のものよ。」
 凍静はパソコンをそれぞれ手で示した。
 その凍静の声は他の生徒たちのいる部屋まで届いており、野次馬生徒達のざわめく声が聞こえる。


「ねぇねぇ、あのメガネの人って何者?」
「え~、知らな~い。」
「どっかの御曹司じゃない?」
「あ~、そ~かも~!」
 女子たちが妄想を膨らましている声まで聞こえた。
 実際帝は名門の子息なので女子たちの会話はあながち間違ってはいなかったのだが。


 3人はそんな生徒達の声は気にせず、それぞれのパソコンを受け取った。
 パソコンはどれも薄くて軽い最新型、さらに高級高性能ときている。
 黒はそれを大事そうにかばんへとしまった。


 だが、有栖と帝はまるで極普通のノートを持つかのように小脇に抱えている。
 お坊ちゃま育ちは感覚が違うのか、と黒は帝を見て軽くため息をつく。
 有栖もお坊ちゃまではないのだが、いつも帝の両親の世話になっており、金で苦労したことはない。
 二人とも多少金銭感覚がおかしいのかもしれないと、黒は思った。
 といってもいまだに機械は叩けば直ると思っている有栖はただ機会音痴なだけかもしれないが。


 そして3人がパソコンを受け取ったのを確認すると凍静は台車を廊下の隅に移動させ、部屋へと入っていった。
 3人もそれについて部屋へと戻る。


 凍静はしばらく生徒達の様子を見て、全員がパソコンを受け取ったのを確認すると、生徒達に向かって話し始めた。
「それでは全員パソコンを受け取ったので、これから教室に向かい、学校生活についての説明を行います。ついてきてください。」
 凍上はそう言うと部屋を後にした。


 そしてこぞって男子生徒たちが凍静の後を追いかけていく。
 3人は先に行く生徒たちの後をゆっくりと追った。