さよならダイヤモンド・カット | ヘタレ車掌の戯言

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毎日惰性だけで生きているヘタレ車掌の日常です。

最近は実家の自室を片付けに行くばかりで何ヶ月か撮り鉄からご無沙汰しておりましたが、10日に3ヶ月以上ぶりに今年初の撮り鉄をしてきました。

どこへ行ったかですが、引退が近いと言われていた東京急行電鉄7600系を撮りに池上線の五反田駅に・・・

本来なら駅ではなく、線路沿いで撮りたかったのですが、影の具合などを考えると、まだらに建物の影が落ちる沿線よりも、いっそのこと電車全体が影に入ってしまう五反田駅のホーム先端でと考え撮り鉄開始です。池上線はワンマン運転実施にあたって、ホームにセンサーつき固定柵がありますので、停車中の電車を撮影するのには難儀しますが、ホームへ進入する電車を撮影するのには転落・接触の危険性は低く、決して余裕があるとは言いがたい五反田駅でも、比較的安全かと思われます。もっとも、人数が多すぎるとそうもいかないのは当然ですが・・・

1000系7000系(2代目)、7700系などが到着しては短い折り返し時間で発車していき、やがてシルバー一色の7600系が・・・


五反田駅に進入する7600系クハ7601

すると、7600系が進入しようとするホームの反対側からは1本前となる7700系の蒲田行きが発車・・・


7700系クハ7914の蒲田行き㊧と7600系クハ7601の五反田行き

7700系7600系は、どちらも既存車の改造によって出現した系列で、7700系7000系(初代)を、7600系7200系を種車とし、1980年代後半にVVVF制御車に改造した車両です。
改造にあたっては、電装品はほぼ新品に取り替えられているものの、車体そのものは種車のものを活かしているので、形態的には冷房改造が実施されていることを除けば種車のイメージを残しています。
ただ、両者の改造に至る経緯は必ずしも同じではなく、7700系7000系(初代)のままでは困難とされた冷房改造を実施するために電装品を取替えVVVF制御化(全電動車から半数を付随車化し、冷房対応の補助電源搭載)したのに対し、7600系7200系の編成替えにより余剰となった7200系付随車(クハ7500形)を種車にVVVF制御の電動車に改造したものです。7600系は1986年に7200系のクハ7500形6両を種車に改造されましたが、当初はブレーキ方式や運転台が7200系と同様で、実際に7200系と組み合わせて大井町線と池上線(目蒲線かも?)に導入されました。
その後は、7200系から3両(クハ7500形2両と中間電動車デハ7400形1両)が加わり3両編成3編成となり7200系との混結を解消、1994年度に実施された車体更新では内装の更新やブレーキ方式・運転台の改造(電気指令ブレーキ・ワンハンドル化)、ワンマン運転対応及びカラーリング変更(8000系更新車と同様)がなされました。
2010年以降、7000系(2代目)導入及び東横線から転用された1000系改造車導入に伴い2編成がすでに引退しており、7601Fが最後の1編成として活躍していました。引退を意識した昨年11月より前面と側面のカラー帯を撤去し、クラッシックスタイルとして活躍し、去る7日には蒲田駅で開催されたイベントに併せて行先表示や運行番号も往年の仕様を模して運行されました。7日は有給休暇が取得できず、公休の10日に五反田駅へ向かい撮影、乗り込んだ雪が谷大塚行きが最終運用となったようでした。その後は12日に雪が谷検車区から長津田車両工場へ廃車のため回送されたようです。

7600系の種車である7200系は、1967年から田園都市線(大井町駅~長津田駅間)導入された18m片側3扉車です。
前作7000系が地下鉄日比谷線直通用に開発された全電動車編成だったのに対し、7200系では日比谷線直通規格を放棄し、将来の池上線転用や地方私鉄譲渡を見越してか車体幅を若干狭くし、電動車はユニット方式から1両に走行に必要な機器全てを搭載した1M方式を採用しました。
車体は日比谷線直通規格にとらわれないため、屋根高さが高くなり、また、オールステンレス車体が故に鋼製車のような車体腐食も気にする必要はないことから側窓は一段下降式となり、以後の東急車両の基本となりました。
しかし、そんなことよりもこの7200系を強く印象付けるのは、“ダイヤモンド・カット”と称された前面形状かと思われます。
ステンレスという金属は、曲げ加工が普通鋼より難しいと言われ、ステンレス車は鋼製車のような滑らかなラインを描く前面形状は難しいようで、FRPや普通鋼を併用した車両を除けば角ばった形状ばかりになりがちなのですが、この7200系では左右方向だけでなく上下方向にも後退角をつけたことで、その形状から冒頭の“ダイヤモンド・カット”と称されるようになりました。ただし、やはり製造コストに影響があるからか、この形状が東急及びその他の車両に波及することはありませんでした。
7200系は1993年から廃車が始まり、長野県の上田交通(現・上田電鉄)、愛知県の豊橋鉄道、青森県の十和田観光電鉄へ譲渡され、東急では2002年までに全廃(アルミ車体の動力車・検測車2両除く)されました。以後、東急で“ダイヤモンド・カット”と言えば、7600系と言うことになるのですのですが、それもこの7601Fの引退により、過去のものになろうとしています。
一方、東急から旅立った7200系にも動きがあり、上田電鉄では同じく東急から譲渡された1000系導入によって一部が廃車となり、豊橋鉄道と東急車輌へ譲渡(豊橋鉄道では部品取り用に確保してあった車両と組み合わせて1編成増備、東急車輌へはモハ7200形を背中合わせに連結して7000系動力車の代替へ。相方のクハ7500形は解体)されています。十和田観光電鉄へは2002年に両運転台化の上2両が譲渡されましたが、十和田市駅の立ち退き問題から路線廃止にまで発展してしまい、2012年3月31日を以て廃止、職を失った7200系は静岡県の大井川鐵道へ譲渡されています。

7600系に戻りますが、最近は調子が悪く故障も多かったようですし、保守部品確保の点からも他社への譲渡はなく、おそらくこのまま廃車解体となってしまうのではないかと思われます。


デハ7661の車内銘板
濃紺の東急車輌昭和42年は7200系クハ7503として製造された時のもの、オレンジの東急車輌昭和63年改造は7600系デハ7661に改造されたときのもの。
左側の“7600 DEBUT STYLE”とその下の説明文は銘板を模したステッカーです。


こちらは禁煙プレートと車号銘板



これから年度末にかけて京成3300形阪急2300系の引退があります。実家の片付けも進めつつ、これらの撮影も行きたいところですが、果たして日程の調整がうまくいきますかどうか・・・

同じように考えている方もいらっしゃるかと思いますが、安全運行の妨げになることはやめましょう。
あと、他の乗客や乗務員に不快感を与えるような行動も・・・
我々乗務員兼鉄ヲタとしても、控室などで「マニアがさぁ・・・」とか鉄ヲタでない乗務員が話しているのを耳にするのが心苦しいので・・・