再生エネ、普及に壁 太陽光優遇が誤算 | マクロ経済のブログ

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経済産業省は、4月1日からの再生可能エネルギーの買い取り価格を固めた。太陽光パネルで発電した電気の価格を2年連続で引き下げる一方、風力発電の価格を引き上げる。風力を再生エネの新たな柱に育てる狙いだ。ただ、規制やコスト面など普及への壁はなお高い。

再生エネの買い取り制度は企業や家庭がつくった電気を10~20年、固定価格で買い取ることを電力会社に義務づける仕組み。欧州で再生エネが拡大する原動力になった。

日本も2年前の2012年に導入したが、国内で発電された電気のうち再生エネの比率は12年度で1.6%。ドイツやスペインの10分の1ほど、米国と比べても半分以下にとどまる。

 政府内には電源に占める再生エネの比率を1割、2割に高めるべきだと期待する声があるが、普及には壁がある。

 まず、せっかく導入した制度の誤算が明らかになった。

2年前の制度導入時に政府は太陽光の買い取り価格を40円と、30円台後半といわれた当時の採算ラインより高めに設定した。

この結果、太陽光への参入が相次ぎ、再生エネの発電設備の97%が太陽光に偏ってしまった。原発1基分の発電をするのに山手線内に相当する用地が必要とされるなど、太陽光は国土の狭い日本には不向きとされる。

しかも、国に認定された後も、パネルの価格が下がるまで用地やパネル購入を見合わせ、発電を始めていない業者が多いことも分かってきた。

経産省は3月中にも悪質業者の認定取り消しなど制度修正を急ぐとともに、4月以降の太陽光の価格を下げ、風力など他の再生エネ普及を後押しすることにした。

新たな柱と期待される風力や地熱にも、規制などの壁がある。

風力発電は、陸上では安定して強い風が吹く場所が北海道と東北の一部に限られるため、政府は洋上風力に的を絞って買い取り価格を高くして普及を促す考え。

「事業として成立させるために重要な一歩になる」。風力発電に関わるメーカーから評価する声があがった。

政府が洋上風力を優遇する方針を明確にしたことでコスト削減に向けた目標が明確になり、銀行から融資を受けるための事業計画が立てやすくなるという。

すでに丸紅(8002)などが事業主体となって、合計50万キロワットを超える洋上風力発電計画が持ち上がっている。完成すれば現在の10倍以上の発電能力となる見通し。

風力発電機メーカーでは、日立製作所(6501)や三菱重工業(7011)のほか、独シーメンスや日本への再参入を決めた米ゼネラル・エレクトリック(GE)が商機をうかがう。

ただ、電力を受け入れるインフラ整備や海底ケーブルの技術など克服すべき課題は多い。洋上では、漁業権を持つ漁協との調整も必要だ。

昨年11月に福島県沖で試験発電を始めた政府の洋上風力プロジェクトの場合、担当者が何度も現地に足を運び、漁業関係者の理解を得るために走り回った。

環境影響評価(環境アセス)や自治体の手続きの効率化に加え、洋上風力の専用海域の確保も必要になりそうだ。

地熱も、国立公園の開発規制や温泉事業者の反対で開発が思うように進みにくいという。

再生エネは原発や火力に比べ、発電効率が悪いため、家計や企業の負担が増すのも課題だ。再生エネの買い取り制度に伴う13年度の電気料金への上乗せ幅は、月の電気料金が7000円の標準家庭の場合で月額120円(1.7%)だった。

発電量に占める再生エネの比率を13.5%まで増やした場合、この額は276円(約4%)まで増えると経産省は試算する。

再生エネ先進国のドイツでも負担増への批判から再生エネ設備の新規導入が減っているといい、日本でも利用者がどこまで値上げを許容できるかもカギとなる。



太陽光、税抜き32円に下げ 買い取り価格

経産省が開いた調達価格等算定委員会で示された4月1日からの新しい価格案によれば、太陽光の価格は最も発電量の多い企業向けで1キロワット時あたり税抜きで32円となる。

今年度の36円から4円引き下げる。税込み表記が好ましいとの声もあったが、税抜きで開示した。税込みでは34.56円となる。

パネルの性能向上や値下がりを反映した格好だが、太陽光から他の再生可能エネルギーへのシフトを促し、再生エネの発電施設の大半が太陽光に集中する現状を是正する狙いもある。

一方、風力のうち、海に風車を置く「洋上風力発電」の価格を新設し、風力一般の価格22円から36円に引き上げる。企業向けの太陽光を上回る優遇価格で、参入を促す。

固定価格買い取り制度 地熱など対象5種類

再生可能エネルギーで発電された電力を、各地域の電力会社が一定価格で買い取ることを国が定めた制度。対象となる再生エネは太陽光、風力、中小規模の水力、地熱、バイオマスの5種類。

あらかじめ決められた買い取り価格を設定することで、太陽光や風力発電の普及を加速する目的で2012年7月に導入された。電力会社の買い取り費用については、賦課金の形式で電気料金に上乗せされ、全利用者から徴収される。

買い取りの価格や期間は再生エネごとに事業上のコストや利潤を勘案して算定。第三者委員会の意見を基に、経済産業省が年度ごとに決定する。買い取り価格は導入時の水準が、定められた期間中は固定される仕組みで、事業者の収益を見通しやすくした。

制度導入から13年11月末までに、設備容量で645万キロワット分の発電設備が設置された。当初は住宅用の太陽光発電の設置が大きく伸び、13年春以降は企業の大規模太陽光発電の設置が加速した。

一方、設置場所などで制限が多い風力や水力は、制度の対象になっていても導入が増えていない。導入では欧州が先行する。スペインが1994年、ドイツが00年に開始した。全電源に占める再生エネ(水力除く)の比率は、スペインが10年時点で18.5%、ドイツも14.7%。対する日本は12年度でも1.6%だった。