◎前回のお話
初夏。
息子の3回目の誕生日。
ごちそうやケーキ、プレゼントを用意して両親も呼んでお祝いをする。
毎日ピリピリしていた私はこんな席でも怒ってしまっていた。
『あーあ!何でこぼしちゃうの??よそ見しないで食べてよ!』
『そんなに怒らなくてもいいじゃないの!可哀想に…』
『私が見てるんだから黙ってて!お母さんにもほとんど預けすに見てるじゃない!』
今思えばこんな無駄な労力をどうして【怒る事】に向けてしまったのか…
『ほら!おいしそうじゃない!食べようよ。』
母は持ち前の明るさで場を和ませてくれる。
父は息子を抱っこし一緒に食べてくれる。
旦那は私の肩に手を乗せて落ち着かせてくれる。
半べその息子は父の膝に乗り笑顔にはなるが何度も私の顔を見た。
息子と2人きりになるとことあることで怒ってしまう。
未だにテーブルにあるものを口に入れてしまい目が離せない。
ある日は家計簿をつけていた私の横に近寄ってきた息子。
『ちょっとおりこうにしててね?』
そう言いながらお金の計算をしているとふと斜め前にあった500円玉が無いことに気付いた。
『?…あれ??』
次の瞬間息子の顔が青ざめていることに気付く。
『まさか!飲み込んだの!??』
私は急いで息子を逆さに抱えた。
みぞおちに両手を押し当て数回圧迫すると息子の口から500円玉が飛び出した。
息子の顔に一気に赤みが戻る。
『何してるの!??』
私は冷や汗と動悸が止まらないまま大声で叫び平手打ちした。
『うわぁーーーん!!!』
全てにびっくりした息子が火がついたように泣き出した。
ねぇ…いつまで赤ちゃんみたいなの?
いつになったらまともにしゃべるの?
どうしたらみんなと同じになれるの?
『泣きたいのはあたしだよぉ…』
同じ部屋で子どもと親が一緒に泣いた。
【子どもが子どもを生むんだから】
いつか言われた言葉が私の心に突き刺さった。
【柏崎さん…子どもに冷たくない?】
冷たくしたいんじゃない…
息子が生まれたたくさんしたいことがあったんだ。
一緒に絵本を読もう。
おえかきもしよう。
おしゃべりもしよう。
世界一幸せになろう。
どうして?
どうして普通にみんなが出来ることが出来ないの?
私は育児書を読み返した。
もう3歳の頃のページなんてたったの少し。
ねえ!まだ誤飲する?
ねえ!まだヨダレは止まらない?
ねえ!こんなに言葉は出ない??
ねぇ!ねぇ!ねぇ!!!
息子はいつの間にか泣きつかれて眠ってしまった。
私は乾いた涙をそのままに自分の悲しい過去を思い出していた。
すみません。イラストが載ってませんでした。
載せ直しますね。