元気のない企業の多くは、業績低迷や人材確保の難しさを、地域性や属する業種、あるいは企業規模にあると言い訳します。

しかし、伊那食品工業は斜陽産業と言われる寒天業界にあって、伊那食品工業は創業以来48年間、連続増収増益を実現したばかりか、その経常利益率は10%以上を維持する超優良企業。

2015年度の年商は181億円、社員数は465人を数えます。

 

 

 

 

主製品は寒天応用商品で、国内で80%のシェアを誇ります。

近年では、食品以外にも化粧品や医薬品、また細胞を培養するための素地などさまざま用途に対応した商品を開発。

激変する時代にあって、伝統産業を守りながら新しい価値を付加して商品価値を高めています。

同社に入社を希望する学生の数は、20数名の採用枠に対し、毎年2000人以上に上るそうです。

その理由の一つに、「いい会社をつくりましょう」という経営理念に基づいた3つの経営方針があります。

 

無理な成長を追わない

景気や流行を追わないということです。

景気を追っていると、好況のときに設備投資などにお金をかけてしまいがちですが、一転して不況になるとそれが過剰投資となり、そのあおりで商品の価格を下げたりして苦しむことになります。

景気に踊らされた成長は一瞬の打ち上げ花火のようなもの。

無理な成長を追っていると、不況になったときに社員をクビにしたり、賃金カットをしなければならなくなり、結果的にそれは社員の幸せを奪うことになります。

それは会社の存在目的から外れる――そうした考え方があるから、同社は「景気や流行を追わない」という経営方針を掲げているのです。

 

 

 

 

敵をつくらない

多くの企業にとって同業者はライバルであり商売がたきです。

しかし、会社を取り巻くすべての人々が「いい会社だ」と言ってくれる会社を目指すのであれば、誰もが共感してくれる会社でなければなりません。

それは同業者も例外ではありません。

いい会社はけんかをしません。

けんかをしないということは見積もりで戦わず、「オンリーワンを目指す」ということです。

これまでこの世になかった商品、他社にはマネできない商品、しかもお客さまがのどから手が出るほど欲しい価値ある商品を作り続ければ、敵などできるわけがないということです。

 

成長の種まきを怠らない

では、なぜこれほど長期にわたり安定的な成長ができ、次々に新商品が出すことができるのでしょうか。

同社の塚越寛会長はさんは、こう言います。

「会社を永続するための成長の種まきをしているからです」

同社は、研究開発という未来に対する種をまき続け、継続的に水とこやしを与えています。

同社で最も大切なことは業績を高めることではなく、企業の継続だからです。

会社を永続させたいという思いがお客さまや社員の心を打ち、それが結果的に業績に結びつき、ひいては多くの人財が殺到する要因になっているのです。