笹井清範の商人応援ブログ「本日開店」

お客を愛し、お客に愛される商人に、元気と役立つ情報をお届けします

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地方のローカルスーパーは、大型ショッピングセンターや全国展開の総合スーパーの地方進出、またコンビニやドラッグストアの隆盛で苦境に立たされています。

大手スーパーによるM&A(吸収・合併)も珍しくありません。

そんな中、地域に密着することで地元の圧倒的な支持を集めるスーパーがあります。

 

 

愛知県豊橋市に本社を置くサンヨネの歴史は古く、創業は1892年。

もともとは家族経営の乾物屋で、1973年に法人化した後も地域密着の地道な経営を貫いてきました。

現在は地元の三河地区に5店舗を展開し、200億円近くを売上げます。従業員数はおよそ650人で、その半数が正社員です。

食品スーパー業界の正社員比率20~30%に対して、同社は非常に高い割合となっています。

 

チラシや広告を一切打たないにも関わらず、連日多くのお客が同社の店に押し寄せます。

私が視察した蒲郡店の客数は平日3800人、土日は4200人。

ポイントカードの類は一切発行していませんが、地元客のリピート率は99%以上だといいます。


「商店の繁昌ということは、たった一人のお客が繰り返し繰り返し買物に店へやって来ることの累積にほかならないという簡単な事実を忘れている人が多い」

これは商業界創立者、倉本長治の言葉ですが、サンヨネはまさに一人のお客さまの繰り返しが繁昌をつくり出している例です。

 

 

サンヨネがお客さまの支持を集める理由は、鮮度が極めて高い生鮮三品にあります。

店舗それぞれにバイヤーがいて、その責任のもとに各店の仕入れと在庫が自主管理されています。

特に野菜は朝一番で採れた新鮮なものが店内に所狭しと並んでいます。


それを実現するのは仕入先である契約農家との強い信頼関係にほかなりません。

契約農家に安定した仕入れ価格を保障しており、豊作のときでも安く買い叩くことはせず、通常の仕入値で買い取ります。また、お客さまの嗜好や売れ方などの売場情報を共有しており、そうした契約農家との強いパートナーシップが同社の圧倒的な商品力を支えているのです。

 

商品はどれも96円、113円と中途半端な価格設定になっています。

これは奇をてらったものではなく、徹底的に適正価格を追究した結果だといいます。

つまり、「必要以上の利益をとらない」という意思によるものです。

チラシや広告を打てば、それは商品の価格に上乗せされます。

同社はそれを一切やらないため、その分のコストが浮きます。

それを原価に充当し、お客と仕入先の利益に回しているのです。

 

 

同社がお客の支持を集め始めたのは今から20年ほど前のことです。

それまでは特に代わり映えのしない食品スーパーで、業績も低空飛行を続けていました。

当時の経営の悩みはお客からのクレームが多いということだったといいます。

「なぜうちの店にはお客さまからの苦情が多いのか」

それは、従業員満足度が低い会社はサービス度が低いからだという結論に至りました。

その後、従業員満足度調査でアンケートをとったところ、従業員の半数が職場に対してストレスが感じているという結果が出たといいます。

ストレスのある従業員が働いている店が、お客さまに感動のサービスを提供できるはずはありません。

 

そこで、経営陣はさまざまな他業種に学び、接客サービスに定評のある六花亭製菓(北海道帯広市)や、従業員満足度の高さで有名な伊那食品工業(長野県伊那市)を訪ね、人本位主義の経営を参考にしました。

経営理念も改め、「すてきな会社をつくりましょう」というシンプルで分かりやすいものにし、お客さま、従業員、取引先の誰もが幸せを感じるような経営を目指しました。

その上で「おいしい、新鮮、安全な食品をより安く」提供することを企業の基本理念としたのです。

その後、同社の店は徐々に地元客の支持を集め、圧倒的な繁盛店に変貌していきました。

 

 

従業員の対応の仕方でその店のレベルが測れるものですが、同社では、接客の第一印象の良さは言うに及ばず、各スタッフの商品知識の高さと豊富さに驚かされます。

どこで、いつとれたものかといった商品情報だけでなく、何の料理に使うのか、今日食べるのか冷蔵庫にストックするのか、お客さまの要望に合わせて的確なアドバイスを提供してくれます。

買い手の立場に立った言動が全社的に徹底されているのです。

販売は会社のファンづくりであり、お客が喜ぶことを第一に考える行動規範となっているのです。

 

同社はまた、「荒利益の50%は従業員に還元する」と公言している。定年は66歳ですが、70歳を超えた従業員も10人ほど在籍しています。

そのせいか、売場に立つ従業員の平均年齢は比較的高くなっています。

この人生経験豊富な従業員たちがサービスの質を上げており、従業員がもたらす付加価値は他社がまねのできない大きな強みになっているのです。

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