1995(平成7)年1月7日に阪神淡路大震災が起こり、多くの貴重な命が奪われてしまったが、実はその年は開成中学の問題が今までの選択肢中心から記述式導入に移行し始めた年でもあった。今までと異なり、初めて50字で考えて書かせる自由記述の問題が出題された。確かに平成5年に50以上60以内の記述問題はあったが、この問題は内容をまとめる問題だったので難しくはなかった。平成7年の記述問題は主題の把握で受験生には難しいかった。話は変わるが、平成7年の漢字の書き取り問題(サイガイにあった地方では、生活のヒツジュ品が不足し、キビしい毎日です。しかし、人々はフッキュウにむけてみな努力しています。)は明らかに阪神淡路大震災を意識して作成したものであった。だから漢字の書き取り問題は大震災以降に作成され、最初の問題と差し替えられたと言える。ふつう中学入試問題は入試の前年の夏休み中に作成されている。これは中学入試だけではなく、高校入試でも大学入試にも当てはまるのではないか。この長い夏休みの期間を利用しなければ、先生達に入試問題を作成する時間はほとんどない。ちなみに開成中学が漢字の書き取り問題の差し替えをしたのは受験生諸君が現在をみているかどうかを試したと言える。新聞を読んだりテレビのニュースを観たりするのも社会を知るのには必要なことだということを試したのである。国語力は学校や塾の学習だけではなく、日常の言語生活など色々なことによって身に付いていくものだ。ちなみにこの年の開成中学の問題は大問3題で構成され、長文読解が説明文と物語文の計2題で、あと1題が漢字の書き取りであった。
 ところで、平成7年の国語で得点差が出たのは2番の平仮名(ひらがな)のみで書かれたシェル・シルヴァスタインの童話『大きな木』だった。『大きな木』という本の表紙は緑色で非常に目立つものだが、お父様方やお母様方の中に『大きな木』を読まれた方や、お子様達に読んで聞かせられた方もいらっしゃるのではないだろうか。この童話を使った開成中学の問題は、それまでの中学受験で童話を使って作成された問題と異なり非常に良い問題で画期的なものだった。
 最後に平成7年の開成中学の2番のシェル・シルヴァスタインの『大きな木』の設問を記しますので、本を読まれた上で問題を見ていただければ有り難い。