あまり語られないようですが、老人ホームで大きな問題になっているのは、老人同士の恋愛問題だそうです。老人は美しく枯れていくモノという社会通念もしくは常識は、そこでは通用しないそうです。若者と同じように三角関係でもめたあげく刃傷沙汰になったり、稀に殺人事件も起きています。
幼稚園くらいから先生への思慕が始まり、幼なじみにほのかな恋心を抱いたり、小学生にもなれば、女子は恋愛問題に関しては、同じ年の男子を大きく引き離していきます。(男子はその後も追いつくことなく一生を終えるらしい)十代、二十代、三十代ともなれば、男女ともに恋愛問題は結婚や離婚、不倫なども絡んで、ますます大きなイベント化していきます。
中年では、がぜん熟年離婚問題がクローズアップされて、男子は安閑とはしておれません。
そして老人になって、ようやく静かに穏やかに、恋愛沙汰みたいな生臭い話とは一線を画して生きていく。というのが美しいラストステージなのでしょうが、人間の性(さが)はそうは問屋が卸さないみたいです。
「黄昏流星群」(弘兼憲史)はそういう意味で、世間の常識(良識?)をぶち破る問題作にして、問題提起作でもあると思います。中年(老年)に達した男女の生々しい恋愛をきっちり描いています。エンターテインメント性もしっかり意識されていています。このジャンルに着目した弘兼先生の炯眼には恐れ入ります。恋は遠い日の花火ではないんですね……。
漫画の世界では、少女・女性漫画では恋愛が常に圧倒的なメインテーマです。少年漫画でも、思春期を迎えた少年にとって、バトルものやスポーツものと並んで恋愛ものは人気あるジャンルです。ヤング・青年漫画では、切ないくらいに恋愛やセックスがメインテーマに浮上、成年漫画でようやく、少し減ってくるくらいでしょうか。
中には男同士の恋愛や女同士の恋愛もジャンルとして成立しています。人間と人間以外の魔物との恋愛も人気ありますね。
まず、恋愛に関心のない人はいないと思います。(自ら行動するかどうかは別として)
これから漫画を描こうとしている人にとって、このおいしいジャンルをまったく無視してしまうのは、もったいないですので、ちょこっとでも意識してみてはどうでしょうか。新しいタイプの恋愛漫画が出来るかも知れません。