唄を忘れたカナリヤ
その4


(こんなことをしていては、自分がダメになってしまう)

アパートに帰った八十は、一生懸命、歌の言葉を考えました。

でも、長い間歌を作らなかったので、いい言葉が、なかなか浮かんできません。

八十は、生まれて間もない赤ん坊を抱いて、近くのお宮へ散歩に行きました。

お宮さんの木はすっかり黄色くなり、風が吹く度に、ハラハラと飛び散ります。

落ちていく葉っぱをじっと見ていた八十の頭に、自分の子供の時のことが浮かんできました。

それは、クリスマスの晩のことです。

クリスマスツリーには、赤や青や金や銀の飾りがいっぱい付いていて、電灯の明かりを受け、キラキラと光っていました。

ところが、ふと天井を見上げると、すみっこにある電灯がひとつだけ消えていました。

八十は、その電灯が、なんだか、みんなの仲間外れにされているように見えました。


唄を忘れたカナリヤ
その5につづく