長い 長い
廊下の 冷たく固い石畳の上で
コツコツと足音が
ひとつ進みゆき
またひとつ進みゆく
規則正しく歩む音は
時の刻みと同じようで
人によって忙しく刻む音がして
人によっては引きずるように刻む音がする
時の流れは同じなのに
歩む歩調は どうしてこんなにも違いがあるのか
順番通りにいかないこともある
停滞することもある
ヒタヒタと素足で通りすぎる
そんな足音もあるのだ
私はといえば
寄り道ばかりで 道筋定まらず
走り出しては立ち止まり
しゃがみこみ ボ~っと空(くう)を仰いで
まいっか~と腰を下ろしたまま
自分の歩調をなくした
ただ漫然と
他人の足音を聞いていた
しかし そのくせ
身近な人の足音は分からなかった
(分からないふりをしていた)
そのせいで
歩みを終えて 別な道に進んだことも知らないでいた
あ~だから
後悔するのだ
はたと我にかえり 見回したところで
その人の足跡しかない
それも いつか薄れて見えなくなるだろう
車の道ならば
行き先表示板が大きな文字で『この先』を
教えてくれている
人の道は
歩き進んだ先の結果で 掲示板として見れる限りだ