くじらの島の少女 | 文学と映画

くじらの島の少女

くじらの島の少女


ニュージーランドの島々のなかの、ある病院。普通の現代的な施設。そこに集うのは、ありきたりの家族。息子夫婦の、出産に立ち会っているのです。


それは、とてもありきたりなのですが、実は、おじいちゃんになろうとしている、頑固そうな親父は、ニュージーランド先住民のマオリ族の族長なんです。そして、男の子が生まれることを確信して病院に来ていました。


絶対に男の子でないとイケナイのです。その男の子が、部族を救う預言者となる、血筋を受け継ぐ者だから。その親父の息子は、親父の期待を裏切って生きてきました。だから、親子の中はとてもギクシャクしている。それを繋ぎとめていたのは、優しいおばあちゃんになる、母親とこれから生まれるはずの男の子だっのですが。


実は、双子でした。そして、双子の男の子の方は、生きて生まれることは出来なかった。そして、生母も一緒にあの世に旅立って、残ったのは、女の子だったのです。


お祖父ちゃんの落胆は激しく、そして、生まれた女の赤ちゃんを、「こんなもの」といって、病院を去りました。そんな身勝手な親父に対して、父親(長男)は、赤子に「パイケア」という名をつけました。それは、おじいちゃんへのあてつけだったのです。


なんとなれば、預言者として生まれた子は、代々、「パイケア」という名をもらう伝統になっていたからです。