特許庁より、「特許異議の申立ての状況、手続の留意点について」が公表されました。

今日の公表分には、特許異議の申立ての取消・訂正割合も記載されています。

 

まだ申立の処分が確定していないものもありますが、平成27年分については、訂正なしの維持決定が144件、訂正ありの維持決定が124件、取消決定が35件でした。

特許が取消ないし訂正(減縮)された割合は約52%となります。

 

平成28年分については、訂正なしの維持決定が268件、訂正ありの維持決定が108件、取消決定が20件でした。特許が取消ないし訂正(減縮)された割合は約32%となります。

 

平成28年分について、訂正なしの維持決定割合が高いのは、取消理由がない場合は6ヶ月以内に決定がされるためです。

反対に、特許が取消される場合には、取消理由通知→訂正請求→申立人の意見書→訂正予告→訂正請求→取消決定と、多数のプロセスを経る必要があり、時間がかかります。

 

弁理士会のパテント誌2017年2月号には、異議申立て復活直後の決定のみを分析し、特許が取消・訂正される割合が24%しかないという論文が掲載されていました。

しかし、特許庁の平成27年統計より明らかですが、上記記事は誤解に基づいています。

 

http://www.jpo.go.jp/tetuzuki/sinpan/sinpan2/igi_moushitate_ryuuiten.htm

平成29年2月 特許庁審判部

特許異議の申立ての件数は、平成27年4月に特許異議申立制度が開始され、同年10月より申立てが本格化して以降、累計で1,578件となり、そのうち712件(約45.1%)が最終処分に至っています(平成28年12月末時点)。

  • ※特許異議の申立てがされた特許権単位の件数です。したがって、一つの特許権に対して複数の異議申立てがされた場合も、1件として数えています。

なお、依然として特許異議申立書等の不備が多く発生しており、手続を行う際は、以下2.から5.の点に留意ください(今回更新した留意点は太字になっています。)。また、特許異議申立書等の不備については、特許庁から、確認、相談させていただくことがありますので、連絡が取れるよう、電話番号の記載をお願いいたします。

1.  特許異議の申立ての状況(申立日が平成28年12月末までのもの)

(1)  特許異議の申立年月毎の処理状況(平成28年12月末時点)

特許異議申立制度においては、同じ時期に申立てがされた事件のうち、合議体が取消理由がないと判断した事件については、取消理由を通知することなく、先行して維持決定されます。そして、取消理由が通知された事件のうち、特許権者の意見や訂正の請求を認めて特許を維持する場合には、その段階で維持決定されますが、取消決定がされる事件については、再度の取消理由通知(決定の予告)を行うため、最終的に取消決定がされるまでには一定の期間を必要とするという特徴があります(【グラフ1】参照。特許異議申立制度の主な手続のフロー図はこちらを参照してください。)。

(2)  特許異議の申立年毎の処理状況(割合及び件数)(平成28年12月末時点)

平成28年までに申立てがされた事件のうち、約45.1%が最終処分に至っています(【グラフ2】参照)。平成27年に申立てがされた事件については約84.3%が、平成28年に申立てがされた事件については約33.4%が、それぞれ最終処分に至っています(【グラフ2】参照)。

なお、ある申請年の維持決定と取消決定の比率は、その申請年の全ての事件が最終処分に至るまで確定しないことに留意ください。