おはようございます。今日から11月ですね。


10/25付けの山本内閣府特命担当大臣記者会見要旨に、職務発明の改正に関する話も載っています。


色々な意見がありますが、企業側が主張するような法人帰属とした場合であっても、発明者へのインセンティブは必要という意見が多数のようです。


特許料金の減免についても言及されています。


なお、以下の意見、本当にその通りだと思います。


「例えば細野先生がおっしゃっていたんですが、発明の源泉は、スーパー研究者などの属人的な能力だと。だから、本当に科学技術イノベーションを生み出すような1%の研究には資源を投入して、例外的にスーパー研究者はきちんと処遇してほしいという話がありました。」


http://www.cao.go.jp/minister/1212_i_yamamoto/kaiken/2013/1025kaiken.html

 最初に職務発明制度の話をしたいと思います。
 知的財産政策ビジョン、今年の6月にまとめました。今後の10年間を展望して世界最高水準の知財立国を実現することを目標に掲げたビジョン、これは今まではずっと知的財産戦略本部の本部決定だったんですね。担当大臣の強い強い意向で、知財ビジョンのエッセンスを基本方針として閣議決定しました。一段格上げをしたということを思い出していただきたいと思うんです。

 このビジョンで、確か私の記憶では200ぐらいの施策を並べているんですが、特に主なものは、産業界から強い要望が寄せられていた職務発明、営業秘密保護等について、この制度の抜本的見直し。それから、これも一つの大きな目玉ですが、任期付審査官の維持・確保。特許庁のですね。それから、これは後で触れますが、特許料の大幅な引下げ、あるいは放送コンテンツの海外展開、こういうことがビジョンの中の主な施策だったということを思い出していただきたいと思います。


 この知財ビジョン、書いただけではしようがないので、これをしっかり実現していかなければいけない、PDCAサイクルを回さないといけないということで、今日、どこかにこれも出ていたかもしれませんが、検証・評価・企画委員会を設置することにしました。これは今日、知財戦略本部で決定ということですが、これは持回りで行わせていただこうと思っています。
 まず、この評価委員会のメンバーは今人選中なんですが、知財戦略本部の有識者本部員10人ぐらいは、参加をしてもらい、加えて各界からメンバーを集めたいと思います。第1回目は11月5日に計画をしています。


 その中で今日のテーマなんですが、本年8月に、今の知財ビジョンの中にも含まれていましたが、職務発明制度の見直しについて、これも私の強い希望を受けて、「イノベーション推進のための知財政策に関する検討ワーキンググループ」、職務発明制度に係るワーキンググループなんですが、これを作りました。これまで3回行いました。各界から一流の研究者とかCEOの有識者を呼んで非公開で行わせていただいているんですが、中身はかなり激しく議論をしていまして、今、政務三役と、それから知財本部有識者本部員の方々にも参加をしていただいて、先程申し上げた著名な有識者を呼んで行っています。今日は、私の所感も含めた概要を皆さんにお配りをしていると思います。


 それで、今まで話を聞いたゲストスピーカーは、科学技術政策担当大臣という強みを生かして、それぞれ本当にすばらしい方なんですが、例えば長我部さん(長我部信行日立製作所中央研究所所長)とかですね、これは企業研究者として本当に一流の方ですが、島津製作所のノーベル賞受賞者の田中耕一所長、この方も本当にノーベル賞候補だと思いますが、東工大の細野先生(細野秀雄東京工業大学応用セラミックス研究所教授)、こういう方々を呼んで、今議論をしています。政府の会議としては珍しく、本当に熱い議論になっているので、このワーキンググループ、本当に立ててよかったなと思っています。


 この議論を行ってきて、来年ぐらいから本当に職務発明制度の話は知財では話題になってくると思うので、少し御説明したいと思うんですが、いくつか感じたポイントがあるんですね。
 一つは、どういう制度にするにしても、例えば今の発明者帰属というものを企業・法人の帰属にするにしても、やはり研究者のインセンティブというものをきちんと確保しなければいけない。これは大前提だと思います。それで、研究者の方々もいろいろな意見があると思うんですね。ものすごい報酬をもらえるということがインセンティブだという人もいるかもしれませんが、研究者のインセンティブは、処遇というか、研究の自由度、予算、研究開発環境を向上させることが、決定的に重要だということを言っている人が多いです。


 これに対して企業の側は、後で触れますが、いわゆる対価請求権というものが発明についてあろうとなかろうと、発明者のインセンティブを高めるのは大事なので、企業としてはできるだけいろいろなことをやりますよと、こういう話をしています。もう一度言いますが、制度設計の検討の前提としては、産業界がどのような対策を、インセンティブをしっかり確保するために打ち出すのかという具体的な知恵が必要だと。これを示すことが大事だということが一つわかりました。


 ポイントその2なんですが、これもいろいろ意見が分かれたんですが、産業界と企業研究者の意見、一流の方々からお話を聞いてきたんですが、この人たちは、発明、例えばイノベーションに結びついて、それが何か死の谷を越えて、ダーウィンの海を泳ぎ切って、大ヒットになって企業にものすごい収益をもたらすような、そういう発明の源泉はチームの強みだと。同じ給料をもらっていて、いろいろな部署の人たちが努力をした結果、発明に結びついているので、これはチームの強みだという意見が多かったんですが、大学の研究者の意見、例えば細野先生がおっしゃっていたんですが、発明の源泉は、スーパー研究者などの属人的な能力だと。だから、本当に科学技術イノベーションを生み出すような1%の研究には資源を投入して、例外的にスーパー研究者はきちんと処遇してほしいという話がありました。


 一言で言うと、やはり柔軟な制度設計が必要だと。企業と大学というのは環境が違いますから、資金も違う、スタッフもサポートの環境も違うということなので、これは分けて考える方がいいのか、あるいは共通の部分もあるから、その辺をどうするのか。あるいは、法人帰属として、しかし例外を容認するとか、もしかしたらそういう仕組み立てでもいいのかという、このような議論がありました。


 もう一つ、元々この職務発明制度のワーキンググループを立ち上げた時の問題意識は、大体経済界の人たちは何を言うかというと、やはり今の制度だと、いわゆる対価請求権があって、対価についての予見可能性が低いので、これでは、例えば海外の研究拠点のようなものが、「いや、こういう何か不確実な制度では外に出て行ってしまいます。みんな海外に行ってしまいます。来てくれません。」という話が一つありました。もう一つは、主に研究者のサイドからだと思うんですが、もし今の発明者帰属というものを法人帰属にしたら、優秀な研究者はみんな海外に逃げてしまうのではないかという、大体このような2つの話がありましたが、どうもファクトとしてきちんと検証されていない部分があるので、これは一つの具体的な成果だと思うんですが、客観的なデータを示してもらいたいということで、こちらの方から強く要望して、特許庁に対して大規模なアンケート調査を行ってもらうことになりました。


 できるだけ偏りのない方法で行ってもらうということで、今までいろいろ何か調査があるんですが、例えば、外国の製薬企業がこう言ったとか、この研究者がこう言ったとかではなくて、1.4万人の研究者に、研究者にとって何がインセンティブかという、アンケート調査を行ってもらいます。企業も2,000社選んでもらって、職務発明制度の運用実態について、これは聞くということで、ただ、偏りを防ぐために、研究者だったら例えば分野とか、あるいは年齢とかをきちんと分けるとか、企業だったら資本金の規模、中小企業なのか大企業なのかとか、そういうところをしっかり分けて、緻密に調査をしたいと思います。


 今後の議論ですね。まだこれは、問題になっていませんが、もし特許法の改正が話題に上ったときに、これから今の3点を踏まえて、まず一つは法人帰属なのか、発明者帰属なのかという問題が一つあります。もう一つは対価請求権というものですよね。発明に対する対価請求権の扱いをどうするのかということがポイントになると思うんですね。そうすると、法改正だとどのような形になるのかなと考えてみたら、おそらくそのような議論に来年ぐらいに本格的になってきた時に出てくると思うんですが。三つぐらいの流れかなと。


 一つは、法人帰属、会社が持っていて対価請求権がない。これはスイスですが、これが今、日本の産業界の主張なんですね。これだと、明らかに対価に関する予見可能性はすごく高まる。でも、これを行うと、おそらく研究者のインセンティブを削がれるような議論が出てきて、何か研究者の処遇を下げるようなイメージになりますから、これは相当研究者のインセンティブを高めるメニューを企業側から出してもらわないといけないということになると思います。


 それから、法人帰属で対価請求権があるというイギリス、フランス。これだと予見可能性というか、研究者のインセンティブというものは法的に担保されますが、スイスに比べると、やはり対価請求についての予見可能性は下がるだろう。


 これはアメリカ。このようにしたらどうかという議論も結構出ました、ワーキンググループで。これは発明者帰属で契約に委ねる、もう自由にやってもらうと。これはいいと思うんですが、やはりアメリカのような契約社会と日本は違うという議論もあって、特に中小企業で本当にそのような適切な契約が結べるかという議論もあります。


 それぞれメリット、デメリットがあって、参考に言うと、今は発明者帰属で対価請求権ありというのが日本とドイツと韓国なんですが、少し日本の社会の状況とか企業の文化とかをよく考えながら、どうやって発明者のインセンティブを確保するかということも踏まえて検討していかなければいけないと。


 今3回行いましたが、これで一旦閉じますが、必要があればまた行えばいいと思うんですが、これは特許庁の方に申し入れてありますので、特許庁で更に議論を重ねてもらって、更に背中を押す場合もあると思うんですが、案をまとめて、できれば来年の臨時国会辺りに出したいと思うんですが、それが無理なら再来年の通常国会とか、少し具体的な法改正を頭に入れながら進めていくべきだと思っています。


 最後に、今回、産業競争力強化法案に入りました。これは知財ビジョンで一生懸命言っていることなので、ある程度反映されたと思っているんですが、特許料の減免措置。一言で言うと、これが通れば、中小企業、ベンチャーは大体特許申請について大企業の3分の1ぐらいになるだろうと、こういうことです。


(問)科学新聞の中村です。職務発明制度なんですけれども、これ、今後は特許庁が主体となって検討していくと。
 まず一つは、特許庁に要請したアンケートなんですけれども、いつぐらいまでに。
(答)これは、もう多分準備に着手していると思うので、できるだけ早くお願いしたいと思います。年末ぐらいまでには出てくると思います。これは初めてのアンケートだと思うんですね。

(問)あとは、スイス型とか、いろんなタイプが法制化する場合にはあると思うんですけれども、山本大臣としては、今回ヒアリングを通じて、どういうタイプが日本に合っているんだと思いましたか。

(答)いや、これはなかなか一言では言えませんね。ただ、私は、まず前提にしているのは、知財ビジョンの中に担当大臣の相当強い意思として盛り込んだ一節があって、職務発明制度については、法人帰属とか、あるいは、雇用者とそれから使用者の自由な、例えば契約に委ねるとか、そのようなことも含めて産業競争力の強化につながる方策を実施するようなことを書いてあるので、やはりラインは崩さないでいきたいと思いますね。それは別に経済界だけの話をうのみにするわけでもないし、研究者が今言われている意見をそのままとるわけでもないし、バランスよく組み合わせて考えなければいけないと思うんですが、基本は、安倍内閣の哲学である、産業競争力の強化につながる仕組みにしたいと思います。
 それはしかし、発明者のインセンティブを何かないがしろにするということではないです。発明者のインセンティブもきちんと確保しないと、競争力につながらないと思います。


(問)大学と企業で随分状況が違うと。それについて、分けた方がいいというふうに考えていますか。

(答)それは、共通の部分もあるので難しいんですが、やはりある程度柔軟に対応した方がよいと思うんですよね。大学の研究者と企業の研究者は違いますよね。企業の研究者は皆、例えば同じ給料を会社からもらって、それぞれの分野で協力して発明を生み出しているという意識はすごく強いし、大学の研究者はまたいろいろ、その研究者の方によっても意見は違うと思いますが、例えばスーパー研究者だったら、やはりこれは属人性だと言う方も多いので、少しそこは柔軟に考えた方がいいのかなという気はしています。