イトコやオイやメイを加えて
新しくフィンガー5ファミリーをつくるンだ
アキラの変声期は来年の夏以後にくる
「高い声が出なくなったよ!」
晃が悲痛な顔でそう訴えたのは、ちょうど3か月前、
「とうとう変声期が来たのかナー?」
ハッとして顔を見合わせました。
リードヴォーカルの晃がここで変声期になっては一大事。
早耳の週刊誌がさっそくこの話を聞き込み
『変声期になった晃。フィンガー5はどこへ行く』
と大々的に書き立てました。
彼らの事務所や自宅には、
「グループを解散するの?」と心配したファンからの問い合わせが殺到してテンワヤンワ。
「とにかく医者に診てもらおう」ということになり、晃はこわごわ病院に出かけました。
「これは変声期のせいじゃないね、声を酷使したからだよ。
子供の声帯は大人にくらべるとか弱いんだ。
それを、大人と同じように使えば声が出なくなるのは当然だね」
という話にメンバー一同もほっと一安心。
「変声期にしてはちょっと早すぎると思ったよ」と一夫くん。
「ぼくが声変わりしたのは14歳の夏から秋にかけてだったからな。
いくらアーちゃんがマセているにしても、あのヤセっぽちの体で声変わりするなんておかしいよ」
『ベイビーブラザーズ』時代には見事なボーイソプラノぶりをみせていた正男くんが、美しいバリトンで、一人頷いています。
「そういえば、マーちゃんが声変わりしたときには、もっと大人っぽかったよな。
ニキビだって花ざかりだったし・・・」
と当時を思い出しながらニヤニヤする光男くん。
「ともかく、少しアーちゃんを休ませることにしようよ」
ということになりました。
といっても、晃をメンバーから外すわけにもいきません。
そこでステージでは、高音部のところは妙ちゃんがカバーし、その他のパートは出来るだけ正男くんが担当するなどして、晃の負担を軽くするようにしました。
その結果、晃の声帯はメキメキと回復し、
9月10日に発売された新曲『恋の大予言』『上級生』は、予定通りに晃のリードヴォーカルで吹き込むことができました。
来年の夏から秋にかけてか、あるいはそれ以降になるかはわかりませんが、晃の声変わりはいつかは必ずくるわけです。
その時になったらフィンガー5はどうするのでしょうか?
「心配してはいませんよ。
マーちゃんがあの美しボーイソプラノがでなくなった時にも、“ぼくの出番だ!”とアーちゃんが張り切ってくれましたからね。
今度は大将がアーちゃんの代わりに頑張ってくれると思うから…」
と、その日に備えて着々と準備を進めています。
また、彼らが所属するレコード会社の方でも、
いずれは晃のボーイソプラノがでなくなる日を予期して準備をおこたりません。
「夏休み沖縄でチャリティーショーをやったが、
それまで時々音を外した妙ちゃんが、全然音を外さず安定して来ましたからね。
年末に発売する次のレコードぐらいから
妙ちゃんのパートを少しずつ増やし、晃の声変わりに備えてゆこうと考えているわけなんです」(井岸ディレクター)
ちょうど、ジャクソンファイブのように、
マイケルが変声期になれば次の子が・・・・と、
フィンガー5の場合もバトンタッチをしてゆこうというわけです。
「変声期に無理して高い声を出したりすると、
声変わりしてから声が完全に出なくなってしまいますからね。
もし、アーちゃんが本当に声変わりの時期になったら絶対にムリはさせません。
でも、彼の場合は体つきからいって、マーちゃんが声変わりしたよりも遅れると思いますね。
だから、それまでは大いに頑張ってもらおうと考えています」(井岸ディレクター)
週刊誌で騒がれたように、晃のボーイソプラノがもう聴けなくなるといったことは、ここ当分は心配はないわけです。
また、たとえ晃が声変わりしたとしても妙ちゃんが立派にそのあとを埋めてくれることでしょう。
というわけで、フィンガー5の前途に不安はないわけです。
来年はヨーロッパ公演をと
夢はでっかく広がる
9月28日から10月1日にかけて、
フィンガー5はハワイに出かけます。
沢田研二さんと一緒に『日米親善コンサート』を開くのです。
「来年はヨーロッパに進出させたいですね」
と、井岸ディレクターの夢は限りなく広がっていきます。
それというもの、先ごろ来日したイギリスの10歳の少女歌手
リーナのマネージャーがこんな事を言ったからです。
「フィンガー5のスケジュールを年内に8週間あけてくれませんか。
そうすればヨーロッパに連れて帰り、リーナに負けないミリオンセラー歌手にしてみせます。
彼らならそれが必ず出来ますよ」
ところが、年内のスケジュールはもうびっしり詰まっていて、とても8週間もあけるわけにはいきません。
「大人の歌手の場合、よほどの実力があっても外国ではなかなか成功しませんが、子供の歌手の場合には向こうの人は歓迎しますからね。
可能性は大いにあるわけです。
それに、フィンガー5の場合には、演歌や歌謡曲と違い、彼らの曲自体外人にも通じるリズムですからね。
それに歌詞だって英語まじりの内容ですからね。
何とか外国に出し、国際的にも通用するグループにしてやりたいんですよ」(井岸ディレクター)
今年のスケジュールはもう動かせませんが、
来年ならなんとかなるだろうというわけで、
フィンガー5がヨーロッパに進出するプランが俄然、具体化しはじめてきたわけです。
もちろん、フィンガー5の面々も大張り切り。
「外国で通用するグループになることが、
ぼくたちの長年の念願だったんです。
来年はまずヨーロッパに殴り込みをかけ、
ゆくゆくはアメリカにも進出し、
ミリオンセラーのレコードを出したいもんです」
そのためにも、晃が変声期になる前に
ヨーロッパ行きを実現させたほうがいいわけです。
事務所の方でも、スケジュール表とにらめっこしながら、早くもやりくりをはじめているだとか。
ただ一つ困ったことは、晃と妙ちゃんが義務教育を受けているため、春休みとか夏休み中でないと長期間外国に行くのは無理だということです。
「日本の音楽界の将来のためにも、
ぜひ彼らに成功してもらいたいですね」
という声は、彼らのレコード会社の人たちも期待しているのです。
沖縄から7歳の甥が上京、メンバーに入るかもよ!!
近く、沖縄にいる7歳になる甥の具志堅実くんが上京してフィンガー5の家族の仲間入り。
「もしミノルがやる気があったら、メンバーに入れようか」
といった話が5人の間で進められています。
というのも、5年先、10年先のことを皆が考えているからです。
「10年~15年経てば妙ちゃんはいい人を見つけてお嫁に行っているかもしれないし、今のメンバーのままグループとしてやっているとは思えないからね」
一夫くんの夢は、将来はプロダクションの経営だし、
光男くんは作詞、作曲を専門的にやって行こうという夢を抱いています。
「俺が曲を作ると寂しい内容のものになりそうだが…」
正男くんは一人立ちのミュージシャンとして作詞をしたりステージに立ったりしているでしょう。
それに晃はソロシンガーとしてスローバラードでも歌わせたら、今以上にうける歌手になっているかもしれない――というのがフィンガー5の壮大なバラ色の未来図であるわけです。
では、それまでの間はどうするのでしょうか?
「その時々の年齢にあった歌をうたわせていけばいいと思いますね。
あの『学園天国』があんなに売れたのは
晃のボーイソプラノが受けたからではなく、
小学生にしては抜群に歌がうまかったからでしょう。
声変わりしたとしても歌がうまければ十分やって行けると思いますからね」(井岸ディレクター)
これに対して、5人の兄妹たちは“フィンガー5・ファミリー”に自分たちのグループを育てていきたいと考えています。
「うちの両親には音楽好きがいっぱいいますからね。
イトコたちなんかが…
我が家にいる4歳の姪の美香ちゃんなんかも、
“私も仲間にいれてよ!”としきりに言ってますからね」
ジャクソンファイブの場合、バックで演奏しているのは彼らのファミリーではなく、赤の他人たちです。
ところが、フィンガー5はバックのバンドも出来ればイトコたちにしてゆこうと考えているわけ。
「バックバンドまでファミリーというのは、
世界でもまだないんじゃないかな」と、5人の夢は広がっていきます。
もし、これが実現すれば、世界でもたった一つの大ファミリーグループになるわけ。
このようにフィンガー5の未来は輝かしいものです。
ところで、このフィンガー5が『個人授業』でデビューしてちょうど1年になりますが、
この1年間に出したシングル盤が4枚。
そして、このレコードの売上が全部でなんと500万枚にも達しています。
なお、最近フィンガー5専用の大型バスが完成しました。
バスの中には2段ベットが2つと、引き出し付きのソファーベットが一つ、それに冷蔵庫もついています。
「このバスさえあれば、北は北海道から南は鹿児島までラクラクと行けるね」と、メンバーたちは大喜び。
そのバスの胴体には赤い文字でくっきりと、
Finger5と描いてあるのです。
このバスに乗って、全国律々浦々まで彼らの歌声が響き、やがては外国までその歌が届くことでしょう!