ふくしま学びのネットワーク 前川直哉先生の投稿からの転載です。

皆さんはどう思われますか・・?



ちょっと待て財務省シリーズ、その2です。

すでに各社が報じている通り、2011年度から小学1年生で導入された35人学級について、財務省は40人学級に戻すよう求める方針です。

財務省 35人学級の見直し求める方針示す(NHK)
http://www3.nhk.or.jp/ne…/html/20141027/k10015732661000.html

ここで財務省が根拠に挙げているのが、下記のデータです。
「小学校全体に占める1年生のいじめや不登校の割合は、35人学級の導入前の5年間の平均がいじめが10.6%、不登校が4.7%なのに対し、導入後の2年間はいじめが11.2%、不登校が4.5%であり(財務省資料)、35人学級の導入でも目立った改善がみられない」。

要するに、35人学級にしても不登校は微減、いじめはむしろ微増している、と言いたいようです。
しかしこれは、文科省が「いじめは発生件数ではなく把握した件数であり、いじめを早期に見つけ出そうという教職員の意識の高まりの結果だ」と反論している通り、いじめの「認知件数」を「発生件数」と誤読したために起こった、データの読み間違いです。
根拠とされている数値の元ネタは、文科省が毎年各学校で行っている「問題行動調査」です。これは各学校で教員が把握しているいじめ・不登校の数を集計したものであり、つまり「教員がいじめに気づいていればカウントされ、気づいていなければカウントされない」数値です。
ですから、この割合が上がっているということは、「35人学級の導入によって、小1段階でのいじめに教員が気づきやすくなった」という「改善」を示すデータに他なりません。
施行わずか2年で早々に改善の結果を挙げている施策を、誤ったデータによって葬ろうとしているのが、今回の財務省の提案です。

さらに言うと、このデータの「読み間違い」は単純ミスではなく、予算を減らしたいがための意図的な誤読ではないか、という疑念が付きまといます。
なぜなら、元データを見た財務省の担当者は、これが「発生件数」ではなく「認知件数」であると気づかないはずがないからです。その理由は、これです。

いじめ認知19.8万件=過去最高、2.8倍に(時事通信)
http://www.jiji.com/jc/graphics…

いじめの「認知件数」は2012年に19.8万件と、前年の3倍弱に急増しました。
これはもちろん、この年にいじめが急増したわけではありません。
2011年10月に大津市で起きた中学生のいじめ自殺事件を受け、各学校で「いじめ」の早期発見に努める動きが強まり、認知件数が増えたのです。
さらに言えばこのときの「問題行動調査」から、これまでボーダー上にあった事案も全て「いじめ」として認知し、対策をとろうという方針が徹底されるようになりました。
大津市のいじめ自殺事件という悲しい出来事を、文科省と学校現場は重く受け止め、「いじめ」の早期認知に努めるようになったのです(この辺りの事情は、私が当時、学年内の担当教員だったので、詳しく知っています)。

話を戻しますと、財務省の担当者は、データを見て2012年からいじめの件数が急増していること、そしてこれは「発生件数」ではなく「認知件数」であることを、当然知っていたはずです。
しかしそこを意図的に無視して、自分たちの都合に良いよう、データを加工している。こんな暴挙をまかり通らせてしまってはいけません。
改善すべきなのは、先に結論ありきで、その結論を支持するようなデータを無理やり捻り出して理論武装する、財務省の非科学的な態度のほうです。

現在出ているデータからは、「35人学級になって、教員の目が行き届くようになり、いじめを見つけやすくなった」という結論、すなわち「35人学級を継続し、さらに小1以外の他学年にも拡大すべき」という主張しか出てこないはずです。
要求の撤回を、強く求めたいと思います。