イスタンブールで流血 | 旅中毒

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バックパックと少しのお金とパスポートがあればいい。行けば行くほど行きたい場所が増え、人生狂って後悔なし!

1998年だったかに訪れた初トルコでの思い出です。


ツアーでしたので、いいホテルのバスルーム付きの部屋に泊まっていました。それもバスタブ付き。


最後の日は一日フリー。好きに市内を周ることになっていました。朝起きてシャワーを浴び、洗面台の上に置いていたバスタオルを取ろうと、バスタブの中に立ったまま上半身を乗り出して手を伸ばす。そして足を滑らせました。


口元にガツンという衝撃!


反射的に押さえた手の指の間から流れ落ちる鮮血!


バスタブの縁で下唇を強打して、歯で内側をザックリと切ってしまったのです。あまりの痛みに動くこともできず、しばらくは裸のまま息を詰めてうずくまっていました。プロレスラーとは気の知れん商売だと思ったりしつつ。


やがて血が止まったのでバスルームを出て部屋に戻り、冷蔵庫に入っていた水のビンを取り出しました。冷却材の代わりです。唇に押し当てて、タラコのように腫れ上がった唇を冷やしました。口の中じゃ薬をつけるわけにも絆創膏を貼るわけにもいかないし、冷やすくらいしかできないもの。


が、鎮痛剤を飲んだら良かったんじゃないかなと何年も経ってから気付きました。


水のビンが緑色だったことや、ベッドに座って何気なく見ていた部屋の光景を、今でもよく憶えています。


その後、ホテルのレストランに朝食を摂りに行きまして (「痛いから食べない」 というアイデアは無かったようだ)、ツアーメイトがいたので 「さっきこんなことがあってさあ」 と報告しまして。その人たちからはその後何年もの間、「朝一番に言うことがあれなんだもん」 と笑われましたが、仕方ないじゃない、朝一番に事故ったんだもん。


さて、前述したようにその日は旅の最終日でして、夜にイスタンブールを発つことになっておりました。やりたいことはその日のうちに済ませなければ後がない。名物のサバサンドだって食べてみたい…。


ジンジンと疼く痛みはどうしようもないけど (だから鎮痛剤をだね)、食べ物を噛みちぎったり咀嚼したりする時に、食べ物が傷口に当たらないようにさえすれば、なんとかなるだろう…。ってことでサバサンド食ったんですが、何故やってみるまでわからないのか私は。レモンをたっぷりかけたら傷口にしみるということが。


口の奥の方に放り込み、顎を上げて奥歯のみで噛み、飲み込める状態になったら即飲み込みました。味わうどころではありませんでしたわ。


何年も経ってから気づいたけど、食べるのを諦めると言う選択肢もありましたね。


傷がふさがっても、傷のあった場所には中に何か入っているかのようなしこりが残ったままでした。それが消えるまでには2年以上の歳月を必要といたしました。