こんにちは、院長です。
ここ数日、朝は冷えますが日中はコートがいらないほど暖かくなりましたね。
さて、当院の皮膚科診療においては、西洋医学による加療だけでなく、東洋医学である漢方薬も処方することが(少しずつ)増えてきています。
漢方、というと
何となくぴんとこない、飲みにくそう、うさんくさい???(実際、患者さんにいわれたこともあります)
そんなイメージがある方もいらっしゃるようです。
私自身も、漢方に初めてふれたときは、やはりピンときませんでした。
本当に効くんだろうかと疑問を感じたことすらありました。
しかし実際に患者さんでの効果を目の当たりにしたとき、また漢方に関するさまざまな症例報告、医学的根拠に基づいた実験データ、論文などを勉強するにつれ、漢方の奥深さ、自然から得た力の凄さを感じずにはいられませんでした。
私自身いくつも漢方を試してみて、一部(黄の文字が成分に含まれるもの)を除いてはそんなに 美味しくない事もない ことを確認しました。
飲み始めるとなかなか癖になる風味?で、よく服用しています。
そんなこんなで、漢方は今となっては私の診療に欠かすことができない薬となっています。
(もちろん西洋医学の薬は従来通り使用し、必要な方のみに漢方を処方しています)
このところ特に、ニキビで受診される方が多くなっています。
漢方はニキビ治療にはなくてはならない選択肢の一つで、しばしば処方しています。
ニキビの治療薬としては近年優れた外用薬が次々に保険適応となり、軽症(~中等度)のニキビであれば、抗生剤の内服なしでもかなり改善が見込めるようになってきています。
(ただし外用方法にコツが必要です)
しかし実際には、中等度~重症のにきびとなると、西洋医学のみだと、外用剤に加えて抗生剤の内服を併用しないとなかなか改善できなかったり、
良くなったと思って中止したらすぐ再燃したり、、と治療に難渋することもあります。
内服の抗生剤は確かに効くけれど、腸内細菌に少なからずよくない影響を与え、また耐性菌の問題もあるため、使用はできるだけ最小限に抑えたい。
そのようなとき、漢方が力を発揮します。
漢方は腸内細菌を乱すこともなく、それどころか調子を整える作用を持つものもあり、比較的長期に使用できるものが多いのです。
では実際に、漢方はニキビに対してどのようにアプローチしてくれるのでしょうか。
ニキビの原因としてはおおまかに
・毛穴がつまりやすくなる(毛孔角化)
・皮脂の分泌過剰
・アクネ菌の活性化による炎症
が挙げられますので、特に赤いニキビに対しては、漢方の
・抗菌作用
・抗炎症作用
で炎症をおさえていくこととなります。
また一部の漢方では女性ホルモンであるエストロゲンに似た作用を持つものもあり、
・皮脂の過剰な分泌を抑制する
・毛穴が硬くなってつまってしまうのを防ぐ
など、にきびの原因に対して多角的にアプローチすることができる、優れた作用を持ち合わせているものもあります。
ニキビ痕に対して(時間はかかりますが)効果を発揮してくれるものもあります。
そして、一般的な処方である程度は治るけれど、その先のあと一歩が治りにくい場合、
あるいは、ニキビそのものの治りが悪いときなどは、
改めてその方の体の体質を見極め、処方を変更または追加して、一層の改善を期待することもできます。
例えば
・血の流れが滞ってそう(お血という) ➡ 血の流れをよくする(駆お血剤) 投与
・便秘がひどい ➡ 便秘改善の作用を持つ 駆お血剤
・冷えがベースにある ➡ 血の流れをよくする 駆お血剤
・いらいらしてニキビを潰してしまう ➡ 気持ちを落ち着ける漢方の使用 など
漢方には、体質からのアプローチによって、通常の西洋医学的なニキビ加療ではできない改善を見込めることもあります。
特に大人の方のニキビでは、お一人お一人の悪化する原因や悪化要因は異なり、その悪影響の程度も人それぞれです。
漢方の強みとしては、 この病気にはこの薬 、といった、西洋医学的な 1対1 対応ではなく、個々の患者さんの体質などを考慮して病気の状態をとらえ、それに対しての薬の選択を行えることかと思います。
漢方はニキビ治療にはかかせない、大切な薬です。
そしてニキビには睡眠不足、お菓子の食べ過ぎ、野菜不足などの偏食、間違ったスキンケア、、 などの生活習慣も当然大きく影響しますので、
外用や内服治療以外の、日常生活の改善も大事な治療となります。
治療しているのに治りが悪いと感じられる方、治療して調子がしばらくよかったのに最近また悪化した方、、
今一度生活を振り返ってみて、思い当たることがあるときは、少しでも可能な範囲から改善を試みることも必要です。
最後に、
病院を受診すると にきびがすぐになおる!と期待してこられる方にしばしばお会いします。
また、にきびがすぐにきれいに治る薬をください!と言われたこともあります。
そのような薬があったらどんなにうれしいか私たち医師も考えるのですが、残念ながら実際には存在しません。
にきびは慢性の炎症が続く状態であるため、急に治ることはなく、少しずつ改善をしていく病気です。
根気はいりますが、治ったときの自分を想像してみて、後でにっこりと笑えるように、一緒に治療を頑張っていきましょう!
(きわめて重症な方、漢方等使用にても改善ない方などの場合は、ご希望の方には保険外診療を含めた別の治療法を提案することもあります)
浄水皮ふ科クリニックHP http://josui-hifuka-clinic.com/