ワインと日本酒の消費数量が接近(わずか1.5倍の差に)

~平成29年3月国税庁統計調査データ「酒のしおり」からの比較

 
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酒のしおり

 
平成29年3月に国税庁から「酒のしおり」という資料の最新版がでました。
 
この「酒のしおり」とは、日本の酒類に関する監督官庁である国税庁が作る、日本における酒類全般における販売、消費その他の状況を整理したものです。
 
「酒のしおり」という可愛らしいネーミングの資料ですが、非常に充実したものであり、日本における酒類の状況を知るための最も重要かつ唯一と言っても良い統計資料といえます。
 
ただ、あまりにもデータが多すぎるため、比較して検討するためには、少し情報を減らして整理しながら行う必要があります。
 
 

ワインと日本酒の比較

 
さて、日本酒とワイン、よく比較されるこの2つですが、統計上、この2つのみを比較したデータは、「ワイン 日本酒 比較 統計」といったワードでインターネット検索しても見当たりません。
 
そこで、この度、「酒のしおり」のデータからワインと日本酒に絞って抽出し、グラフを作成しました。
 
 

日本の酒類販売(消費)数量の推移(ワインと日本酒)

 
日本の酒類販売(消費)数量の推移について、ワインと日本酒とで整理してみますと、次のグラフの通り、日本酒の消費量は年々減少しているのに対して、ワインの消費量は年々増加しています。日本酒とワインの消費数量が接近していることがわかります。
 

ワイン・日本酒・ビールの酒類販売(消費数量)の推移 2017年3月発表

作図:筆者
 
さらに、このデータから、ビールを除き、ワインと日本酒だけにすると、更に両者の接近の様子がわかりやすくなります。
 

ワイン・日本酒の酒類販売(消費数量)の推移 2017年3月発表

作図:筆者
 
これをみると、日本酒とワインの消費数量が非常に接近しており、数年後には逆転するのではないかという状況です。
 
私の生まれた1970年代の消費量を比較すると、日本酒が非常に多く飲まれているということがわかります。これに対し、その当時のワインの消費量について言えば、ほぼゼロに近い位の消費量でした。日本酒とワインなど比較にはならないものでした。1970年の消費量で比較するとワインが6キロリットル。日本酒が1532キロリットルでした。倍数で言えば、
  ワイン:日本酒=1:255
と255倍もの差がついていた状況でありました。
 
これが2000年代に入ると、その差は徐々に小さくなりました。2000年の消費量で比較するとワインが266キロリットル。日本酒が977キロリットルでした。倍数で言えば、
  ワイン:日本酒=1:3.67
と3倍程度の差にすぎない状況となりました。
 
そしてこのたび平成29年3月の酒のしおりのデータで明らかになった、最新の2015年の消費量を比較すると、ワインが370キロリットル。日本酒が556キロリットルとなりました。
 
倍数で言えば
  ワイン:日本酒=1:1.50
と1.5倍程度の差にすぎない状況となり、過去の統計の中で最も接近した内容になりました。
 
このグラフを見ると、数年後には、ワインの消費量が日本酒を上回る可能性が極めて高いということがいえます。
 
ワインも日本酒も両方好きな筆者としては、日本酒の消費量をワインが超えたら嬉しいと言う事ではありません。日本酒もワインも、もっともっとたくさん消費されるような世の中になってほしいと願っています。 

そしてワインの消費量の増加を支えることが出来るように、日本ワイン、特に国産ぶどうをたくさん安定的に作ることが出来るような環境作りを、国策としてしていただけることを願っています。

そして日本酒の消費量の減少に伴い、日本酒の消費が増加するような販売促進策、そして何より、世界的に日本酒に対する期待が高まっている現状において、日本酒の輸出の増進策そして日本酒ブランドの保護を含めた方策がより積極的に取られることを期待しています。