東京、愛知などからsimpさん、とっぷりんさん御一行がやってきた。
「福島リンクサーキットの軽自動車草耐久レースでesseを走らせてますが、挙動が不安定なのでなんとかならないか」
おー、エッセは楽しそうだね。
聞けば、旋回中に3輪走行。しかも、フロントがインリフトだそうな。
それは勿体ない。前進まないよね。
仕様は、
・フロントには転がっていたクスコのねじ式車高調(車高合わせにプリロード多め)
・リヤは純正スプリング+容量の大きいパッソ純正ダンパー
の、組み合わせだそうだ。
ふむ、なるほど。そりゃフロントインリフトするわ。
これには2種類の問題が絡んでいる。
1.フロントの伸び側ストローク不足。
ねじ式とは言えノーマルよりは短小ダンパーに、強めのバネとプリロード。
鼻先の動きは俊敏だろうけど、この脚を潰し切るにはかなりの荷重が必要。
そこまで荷重が掛けられない場合は、少ししか脚が縮まない分「しか」伸びないので、
すぐに脚が伸びきってタイヤの接地圧が損なわれてしまう。
ステアレスポンスは良いが、粘りが無い脚と言える。
2.リヤのキャパシティ/レート不足。
エッセ純正スプリングは、お買い物ドライブ向け仕様なので、当然モータースポーツ向きでは無い。
低いレート、長大なストローク。
快適?かどうかは判らないが走行させると破綻こそしないものの、まったりした動きと転びそうなロール。
前後共ノーマルサスの場合は、クイックな運転を受け付けず、丁寧に操作をしてもロールアンダーが出る味付け。
これを現仕様のようにフロントのみ強くすると、バランスが崩れて動的な荷重変動がリヤ寄りになる。
加速時にリヤが沈み込み過ぎてフロント荷重抜け。
旋回中も破綻はしないものの終始アンダー。
怖くは無いが、つまらなくて遅い。
曲がらないのでフロントタイヤのショルダーばかり痛め付ける事になる。
このような症状を改善するには、モータースポーツ向けなら当然「リヤ側強化」なのだが、
エッセは意外にwebにもそのような記述が少ないんだよね。
お買い物やドレスアップに使う人が多いのか、レバー比やストロークなんて数値が皆無。
こりゃ難易度は高いね。
レースに強いエッセを作る店は、ネタを秘密にしてるんだな。
「こちらでも色々検討しましたが、どこのパーツを使えば良いのか判らなくて。」
simpさん達がそう思うのも尤もだよね。
さて、んじゃざっくりと実測で調べてみましょうかね。
そこからアームをジャッキアップして行って、バネやダンパーのストロークする推移を診る。
その実測値を元に、電卓と脳内補正を頼りに「スプリングとダンパーのレバー比を弾き出す」ワケ。
フルバンプまでストロークさせて、残りのスプリングの空間も計測し、ベターな交換用スプリングのスペックも導き出す。
「リヤスプリング別置き式のサスでは、サポートプログラムは出来ない」と言っているのはこの為なんだ。
さて、おおまかに計測したデータを車検証に照らし合わせて策を練る。
これにより、おおまかにリヤの最適スプリングと自由長が把握出来たので、皆さんにそれを報告。
フロント側のセッティングも合わせて処方。
今後、皆さんでそれを行う事となった。
フロントの車高調を活かし、コストは最低限で改善。
浮いたお金で楽しくモータースポーツ。イイね!
見物に来た3人も、このような作業は初めて見るらしく、一同感心していた。
さて、ここからが始まり。
今後もサポートしますから、とりあえず組み上げてまた連絡くださいね。
このチームは、あの「クラゴン部屋」の門下生の方々だそうで、
・鍛錬
・プレイ
などのクラゴン用語が飛び交っていた。
きっと運転に関しては問題ないだろう。
アレなクルマだったとしても、それなり乗りこなしてしまう。
だがそこが問題で、乗りこなせてしまうからこそ、道具の根本的な問題点に気付きにくいし、気づいても運転で合わせようとするクセも発生する。
「道具より腕前。下手な改造よりも修行」
それは研鑽というスタンスなら正解の心得。
だけど、
「足りない道具の性能を腕前だけで上回るのは不可能。やはり道具と腕前はどちらも大事」
というのが現実。
うえしま的には、
「自分の腕前よりも、ちょっと高い限界性能の道具を手に入れて、それを使いこなせる様に努力するのが楽しい」
と思っている。
さて、今後の皆さんの報告が楽しみだ。
なのでお土産にヨシムラ号試乗会をした。
「やればエッセもこんなような動きになりますヨ」と。
皆さんそれぞれに思うところはあったようだ。
さぁ、レースは始まったばかり。
今後の動向が楽しみな うえしまである。
おしまい。