先日テレ朝の「世界が驚いた日本!スゴーイデスネ視察団」という番組を見た。フィンランドとアメリカの小学校の校長が日本の小学校の教育システムを視察し、双方の違いや長所や短所など感じたことを率直に語る内容の番組である。


フィンランドは世界教育水準ランキングでトップクラスで日本からも多くの教師が視察に出かけているほど世界から注目されている国だ。また非常に親日国でもある。私も一度訪れたことがあるが、シャイで実直な国民性は日本人と似たところがある。


そのフィンランドから視察にやってきた校長は、いいずらいことでもストレートにいう校長だった。給食についてはフィンランドでは食堂でバイキング形式で食べる。日本では給食当番が給食室まで取りに行って教室で食べることに驚いた様子だった。


ただフィンランドの人口はわずか520万人。一クラス20~25人。小学校の平均全校生徒100人というのも日本との大きな違いを念頭に置く必要がある。ちなみに今回取材した千葉県船橋市立W校は全校生徒約450人ということだ。


実際にその日の給食を生徒と一緒に食べるのだが、フィンランドの校長は自分の給食が配られるといきなり食べ始めて、生徒に制止されるという場面があった。全員行き渡り当番か先生の「いただきます」の合図で食べ始めるという日本の学校給食の「ルール」を知らなかったからだが、バイキング形式のフィンランドでは食事の用意ができた順から食べ始めることになっているといっていた。まあ生徒数の差がこれだけあるしスタイルの違いがあって当然だろう。


私も中学校の先生の補助的な仕事をしていたことがあるので、学校給食の実態を知っている者として言えるのは、一人ひとりが協力して取り組むことの大切さを給食一つにしても日本の学校は教えているように思う。牛乳のパックも飲み終わった後、洗ってたたんで乾かしてリサイクルに出している。


校内ハーフマラソンで順位をつけたり、成績がいい人は表彰することに対しフィンランドの校長はがっかりしたと不満を述べた。昨年より少しでも成績を上げようと本人の努力を評価してやろうとする日本の教師に対し、結果しか見ようとせず、成績が悪い生徒は自信をなくすのでよくないというファインランドの校長、良し悪しは別として目標を目指して頑張るのは無駄にはならないと思うのだが。


フィンランドの校長はそれだけにとどまらず生徒に教室の掃除やトイレ掃除までさせることに、いささか呆れた様子だった。それも毎日と聞いて言葉に窮していた。そこには先生が生徒に強制して掃除をさせている、と感じているむきがあるが、先生も一緒になって掃除をしていることを忘れては困る。フィンランドでは掃除は業者の仕事で生徒は勉強しに来ているんだという感じだ。


そういえば私が勤務していた中学校の職員トイレは当番制で先生が交代で掃除をしていた。やはりそこに生徒だけに押しつけるのではなく自らもトイレ掃除もするという謙虚さを感じさせられた。欧米の学校では考えられないことだと思う。


ヨーロッパなどでは3K(汚い、きつい、危険)の仕事はアフリカ移民の仕事という意識がある。学校は生徒が勉強するだけの場だという意識が教師はもちろんのこと父兄にも強い。


いっぽう日本の小学校は自分たちが使う教室や机は自分自分たちできれいにするという気持ちを養うことによって公共の施設を大切にする気持ちを育てることに大きく貢献している。教科書の勉強だけでなく社会に出る前の集団生活の躾を学ぶ場でもある日本の学校は、ときにはわが子の躾も出来ない親の無責任な放任主義の肩代わりにもなっている面もある


サッカーの国際大会で試合に負けても日本の応援団は掃除をきれいにして帰ったことで世界から大きな評価を得たのはこうした学校教育のよさにあると思う。中東のサウジアラビヤでは日本の小学校の自分たちで教室を掃除するシステムに感銘を受け、早速、これを採り入れ父兄に絶賛されている外、世界から多くの評価を得ている。


(株)ローヤル(現イエローハット)の創始者の鍵山秀三郎氏は社長でありながら、毎日自ら会社の便器を素手で磨いていた。今や日本のトイレ文化は最先端をいっているが、トイレ掃除は「自分の心を磨く礎」という教育こそ日本の教育のよさだと思う。まさに「実るほど頭を垂れる稲穂かな」の精神に通じるものだと思う。