今月、2020年までに温室効果ガス排出量を1990年比で25%削減する目標を明記した「地球温暖化対策基本法案」が閣議決定され、国会に提出されました。

この法案は今年の通常国会に提出されましたが、国民生活や経済成長への影響などを明確にすることもなく、
委員会での質疑を打ち切って強行採決し、衆院では可決しましたが、参院審議中の鳩山元総理の辞任により一度廃案となった経緯があります。

日本も責任ある国際社会の一員として環境問題に取り組むことに異論はありません。
しかし、世界の二酸化炭素排出量の約4割は米国と中国の二カ国で占めており、環境先進国の日本は5%以下に過ぎません。
すでに世界最高水準の環境対策を行っている日本にとって、乾いた雑巾を絞るような限界に近い状態です。
欧米と比べ同じ目標を達成するには8倍から10倍程度の国民負担が必要で、日本だけ突出した削減を達成するためには国民が大きな犠牲を払うことになります。
25%削減を実現するために、鉄鋼業界では生産の2割削減が必要になるなど、製造業に大きな影響が出ます。
エネルギー価格が大幅に上がるため、国民生活にも直接的な影響があります。
国民負担は世帯当たり年間77万円になるとの試算もあります。
このような大きな負担を伴う目標設定に対して、国民に全く説明されず、現実的な実現策も十分な議論もないままに国際的に公言したことは大きな問題です。

菅総理は所信表明で「一に雇用、二に雇用」と言っておきながら、実際には厳しい国際競争を闘う日本企業を海外に追い出すような方針ばかりです。
民主党政権は、この法案に加え、製造業への派遣禁止、最低賃金の引き上げなど、企業の投資意欲を減退させる施策を数多く提言してきました。
事実、今年上半期の国内工場新規立地は過去30年で最低の水準となってしまいました。
日本経済は、大企業を下支えする中小零細企業が多いのですが、大企業が海外に移転したら壊滅的な打撃を受けます。

このような日本経済にブレーキをかけるだけの法案は必ず阻止しなければなりません。
今、最も必要な政策は、企業の活力を引き出し、国際競争力を高める成長戦略を構築し、成長が雇用をもたらす経済活性化策を具体的に進めていくことです。
そのためにも、法人税率の低減や、規制緩和の促進、自由貿易協定の推進などこそ急がなければなりません。