今年7月、Springは弁護士や報道関係者とともに、

英国の刑法や性暴力被害者支援について知るための現地視察を実施しました。

 

そこで得たものを、10/14(日)「イギリスに学んだ性暴力被害者中止の司法と支援」と題したイベントで、みなさんと共有します。

 

今回は、視察に参加し、イベントで登壇してくださる村田智子弁護士から寄せられた、視察を終えての雑感とをご紹介します。

 

*     *     *

 

私が英国視察で一番学びたかったことは、

 

・イギリスはなぜ強姦罪(強制性交罪)を不同意性交と定義することができたのか

・不同意性交と定義したことによって、どのようなメリットとデメリットが生じたのか

 

でした。

 

理由は、日本の強制性交罪等に構成要件として規定されている「暴行又は脅迫」を何とかしたかったからです。

 

日本では、強制性交罪等の「暴行又は脅迫」は、「被害者の反抗を著しく困難にさせる程度の強度の暴行又は脅迫」と解釈されています。

それによって、明らかに被害者が同意していないのに不起訴となったり、無罪となったりしています。

暴行脅迫要件の撤廃または緩和は、性犯罪・性暴力被害者支援に携わる日本の弁護士にとって、悲願なのです。

(英国の裁判所)

 

他方で、英国の性犯罪規定については、

 

「英国の強姦罪においては、不同意を要件としており、暴行・脅迫は要件ではないが、顔見知り間の性犯罪の通報が増えたことによって、同意の有無が争われやすくなり、有罪率が下がったという。同意の認定は非常に厳しいのでむずかしいのでそうなってしまったのではないかと思われ、結局、暴行・脅迫要件の撤廃は被害者の保護につながらないのではないかと思われる」(法務省の「性犯罪の罰則に関する検討会 取りまとめ報告書」より)

 

という指摘がされています。

 

実際のところどうなっているのか、私はそれを知りたいと思っていました。

 

英国で最初に学んだのは、英国では、かなり前、なんと19世紀半ばから、強姦罪が不同意性交と定義されているということでした。

つまり、不同意性交と定義される前と後の比較しようがないのです。

 

次に学んだのは、英国では、そもそも起訴された件が無罪になる確率が日本よりずっと高く、かつそれを問題視する風潮がないということでした。

 

日本では「99.9」というドラマがありましたが、検察官が起訴する件はほとんどが有罪となります。

これは、検察官が起訴するかどうかを決める際に、有罪判決を得られる可能性を吟味し、厳しく絞り込んでいるからなのです。

これに対し、英国では起訴の段階で絞り込むべきという文化がないようでした。

 

これに関連しますが、英国では、性犯罪の有罪率が下がっていることは問題とされておらず、むしろ被害の「申告率」を上げることがよいこととされていることもわかりました。

これは、日本にはまったくない発想だと思いました。

 

それから、英国では、加害者が「被害者に同意があったと信じた」と主張した場合、被害者に同意があったと信じる合理的な理由が求められますし、その合理的な理由がどのような場合に認められるのかについての規定もあります。

 

「被害者が同意していたと思っていた」という加害者の弁解が容易に通ってしまう日本からみると画期的です。

ただ、実際の裁判においては、合理的な理由の有無の認定の判断基準は、陪審員の判断にゆだねられており、やはりむずかしい認定であるということでした。

 

さらにいえば、英国ではアレインメントという制度があり、被告人が有罪答弁をした場合には直ちに量刑の手続きに入ること、事実認定をするのは一般人から選出された陪審員であり事実認定の理由は開示されないこと等、日本の刑事訴訟とは大きく異なる点がいろいろあることもわかりました。

 

日本に、英国の性犯罪規定をそのまま持ってくるのがよいとは限らないのだと実感しました。

 

(ケンジントンパレスの近くで)

とはいえ、英国から学びたいことはたくさんあります。

 

たとえば、さまざまな性犯罪について詳細に規定していること、特に年少の被害者や障がいを持つ被害者への性犯罪に厳しい態度で臨んでいること、社会全体で被害者をサポートしようという機運があること、支援団体の支援が充実していること等です。

 

法制度の改正という面でいえば、日本の刑法改正だけでなく、子どもへの虐待防止の分野の法改正や制度改正に活かせるのではないかと思います。

 

最後に。私たちは、さまざまな、性犯罪被害者支援に携わっている方たちから話をお聴きすることができましたが、どこでも「決して英国が日本より進んでいるからすごいというわけではない」、「お互いにがんばりましょう」といわれました。

 

いただいた暖かいメッセージを胸に抱きながら、私も日々の性暴力・性犯罪被害者支援に携わっていきたい、また刑法改正を目指していきたいと願っています。

 

 

10/14のイベントでは、村田弁護士にさらに詳しくお話いただきます! 

その他、「子どもへの性教育」「被害者支援」「ムービー上映」など、充実した内容でお届けいたします。

 

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Spring視察報告会

「イギリスに学んだ性暴力被害者中心の司法と支援」

日時…2018年10月14日(日) 13:45~16:30(開場13:20)

場所…お茶の水女子大学 共通講義棟2号館 101教室

    東京都文京区大塚2-1-1 http://www.ocha.ac.jp/access/index.html

          ※当日は、護国寺駅寄りの南門が閉門しています。

          茗荷谷駅寄りの正門をご利用ください。

参加費…500円(英国視察報告冊子代)

お申し込み方法…下記のリンク内「チケットを申し込む」からお手続きください。

申し込み完了後、通知メールが届きます。

https://spring181014.peatix.comb

 

【後援】外務省  / 駐日英国大使館

 

「性暴力の現状を何とかしたい」「英国の制度を知りたい」「Springの活動に関心がある」

みなさんのお越しをお待ちしております!

イベント詳細は、こちら

 

*本視察は、「大和日英基金」様からの助成、及び、

「Springを支える在英日本人の会」ボランティアの皆様のご協力で実現しました。

*本イベントは、「平成30年ボランティア・市民活動支援総合基金「ゆめ応援ファンド」 東京ボランティア・市民活動センター」様からの助成により開催されます。

 

*「英国視察」に関する記事はこちらから、一気読み頂けます^^

*チラシダウンロードはこちらから!ご自由にお使いください。

   

 

▼本件に関するお問い合わせ先:一般社団法人Springイベントチーム

event@spring-voice.org

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