厚労省での不正郵便事件で無罪判決を受けられた村木厚子さんが,刑事事件での無罪判決が確定した後に行った国家賠償訴訟で得た賠償金を,長崎県雲仙市の社会福祉法人に寄付するとの報道を目にしました。



その社会福祉法人は,刑務所への出入所を繰り返す「累犯」障害者や高齢者の更生活動をされているということです(毎日新聞2012年2月16日配信の記事より)。




「<村木厚子さん>賠償金を全額寄付へ 長崎の社会福祉法人に



郵便不正事件で無罪が確定した村木厚子・元厚生労働局長(56)=現内閣政府統括官=が,違法捜査の責任を認めた国側から得た賠償金を長崎県雲仙市の社会福祉法人『南高愛隣会』(田島良昭理事長)に寄付すると明らかにした。



同会側は,刑務所への出入所を繰り返す『累犯』障害者や高齢者の更生を支える活動などに役立てようと,3月にも『共生社会を作る愛の基金』を創設する。



同会関係者などによると,約3770万円の賠償金から弁護士費用を除いた全額が寄付される。村木さんは捜査の真相を明らかにしたいと国家賠償訴訟を起こしたが,国側は昨年10月,捜査の責任を全面的に認めて賠償金を支払う異例の対応をとった。



村木さんは『お金をもらうのは本意ではない』として,累犯障害者の支援で知られる同会側への寄付を決めたという。



田島さんが公平に寄付金を役立てられるように基金創設を提案し,村木さんも賛同。具体的な使い道は,外部の実務からでつくる企画委員会が中心に検討するが,長崎県内で罪を犯した知的障害者の受け皿確保に必要な調査や調整を行う『障がい者審査委員会』(仮称)の運営支援などが柱になりそうだ。



村木さんは関係者に宛てたメールで『ハンディキャップを持った人が適正な取り調べを受け,公正な裁判を受けられるようにするための活動や,自立することを助ける活動を支援する基金を作っていただくことになりました』などと報告している。



田島さんは『村木さんがつらい思いをした中から生まれたものなので,社会に役立つよう最善の努力をしたい』と話す」








以前TVの報道で,次のようなアメリカの事件の話がありました。夫が不倫したことに激高した妻が,夫を殺害し,逮捕され,裁判でも長期の懲役刑を命じる判決が出されました。



その妻は模範囚として服役したのですが,服役が終了した後で,刑務所内に学校を作るための活動に尽力したのです。



妻は,「刑務所で服役している人達は,良い人生を送るためのきっかけとなる教育を受ける機会を得ていない。だから犯罪を犯したのではないか。」と考えたのだそうです。




以前のブログ記事「ヤクルトの小川監督と保護司」でも書きました。ヤクルトスワローズの小川監督のお父さんは保護司をされていて,小川監督が子どもの頃から「犯罪を犯す人は出会いが失敗したのだ」と繰り返し言われていたそうです。



村木さんは,無実であったにもかかわらず,逮捕・勾留されたのですけれども,おそらくその期間に接した身柄を拘束されている人たちが立ち直れるきっかけを作りたい,と思われたのだと思います。とても辛い思いをされたにもかかわらず,さらに得た賠償金を社会活動に使おうとされる村木さんの姿勢には頭が下がります。



寄付を受け,基金を運用していかれるのは社会福祉法人「南高愛隣会」ですね。「愛隣会」とは愛する隣人の会,という意味なのだと思います。罪を犯し,刑務所で服役する人も,いつかは社会復帰し,私達の社会における隣人として生活していくことになります。罪を犯した人がなぜそのような行動をしたのか,私達は隣人としてどのようなことができるのかを,私達も一緒になって考えるべきではないか。村木さんはそのような問題提起をされているように思います。