2022年5月7日
保護依頼があって急遽引き取ることになった猫はどう見ても純血種でした。

 


(2kgほどの小柄な猫さん)


民家の玄関前に突然現れたとのことですが、現場は富山市でもかなり山間の集落です。
四方を山に囲まれていて、少し歩けば森や林がそこかしこにたくさんある自然豊かな田舎、、、つまり言い換えれば、野生動物に襲われる危険性がかなり高い場所です。
私が住んでいる市街地ですらタヌキやイタチは普通に出るので、ここなら熊、イノシシ、キツネ、ハクビシンなんかも出るでしょう。
飢えや暑さで弱ったとき、ケガをしたときに襲われればひとたまりもありません。

 


(周りは全部山です)

純血種をペットとして購入したなら外飼いにすることは考えにくいため、保護依頼主さんが一軒一軒近隣の家を回って聞き込みをしてくれましたが、どの家からも「見たことない」「うちの子ではない」と言われたそうです。
住宅密集地が一部あるほかは、田んぼの中にポツンポツンと民家があるだけの田舎なので、猫が移動できる範囲内に民家はそれほど多くありません。
ほぼ間違いなく遺棄だろうと思いました。

そういう場所なので、飢えて死ぬこともあり得ます。「誰かに拾われてほしい」ではなく、「死んでもいい」という気持ちで捨てていることは明らかです。
※愛護動物を遺棄した者→1年以下の懲役または100万円以下の罰金

体を見ると毛艶が悪くてみすぼらしく、広範囲にわたって毛が薄い箇所や毛玉がありました。
おなかやしっぽには杉の枝が何本も絡みついていて、おしりにはひっかき傷(受傷後2~3日?)のようなものもありました。
※毛玉については保護依頼主さんが見るに見かねて少しだけカットしてくれました。

 

(おしりの傷)

便検査で寄生虫は見つからなかったので、野良猫でないことは確定です。
捨てられてからの日数はせいぜい2~3日ではないでしょうか。
つまりハゲも毛玉も毛艶の悪さも放浪前からのものと考えるのが自然です。
傷は放浪前なのか後なのかはわかりませんが、化膿していないので野生動物に襲われたのではなく、捨てられる前に別の猫から受けた傷かも知れません。
被毛の状態だけで言えば、たまに見るあの嫌な感じとよく似ていると思いました。
いわゆるブリーダー放棄猫に“あるある”な状態です。

警察と保健所に問い合わせたところ、それらしい猫の迷子届は出ていないようでした。
ネット上の迷子猫掲示板をいくつも見て、他県までしらみつぶしに検索しましたが、似た猫はどこにも掲載されていませんでした。
誰も届け出を出していない。
探していない。
遺棄で間違いないでしょう。

この子の名前は「シトラス」にしました。
爪切りや受診は嫌がって暴れますが、近づくだけでゴロゴロと喉を鳴らし、布団をモミモミする人馴れした子です。
シェルターで2週間の隔離期間を終えたあと、長毛種の扱いに慣れた経験豊富な預かりさんのところへ移動させました。
移動後、背中の毛玉の下に瘤があることが分かり、これが後日、出血・化膿しはじめたので受診し、治療済です。

 

(背中の傷。今は完治しています)

そして、8月7日でシトラスの拾得物申請を終えてから3か月が経ちました。
飼い主(所有者)からの届け出がなかったので、所有権を取得する手続きを終えて、8月15日付でしっぽのこころの子になっています。


ここからが本題です。
長いですが、お時間がある方は最後まで読んでください。

実はシトラスの身元は判明しています。
どうやってたどり着いたのかは伏せます。
また、この記事では検索除けとして猫種をあえて伏せています。
あとから「個人を特定できるように誹謗中傷した!名誉棄損!」とか言われたらめんどくさいんで。

全体的な雰囲気が似ているとか、大きさがだいたい同じとか、そういうふんわりしたものではなく、完全な一致点があるので100%同じ猫であることだけは確かです。

その情報源からシトラスについて出来る限り調べました。
遺棄の理由は「高齢になって繁殖に使えなくなったから」が該当するのではないかと推測しています。

 

そうです。

シトラスはブリーダーに遺棄されました。(おそらく)


動物の愛護及び管理に関する法律の《(6)動物を繁殖の用に供することができる回数、繁殖の用に供することができる動物の選定その他の動物の繁殖の方法に関する事項》では《猫の雌の交配時の年齢は6歳以下、ただし7歳に達した時点で生涯出産回数が10回未満であることを証明できる場合は、交配時の年齢は7歳以下とする。》とあります。
そして経過措置として《雌の出産回数と交配年齢については令和4年6月から適用》と記載されています。

【シトラスの出産記録】
1回目 2015年8月 2匹出産
2回目 2015年12月 2匹出産
3回目 2016年5月 5匹出産
4回目 2016年9月 3匹出産
5回目 2017年4月 3匹出産

シトラスは2015年8月に1回目の出産をしており、おそらく2014年以前生まれと推測できます。
もし2014年生まれだとすれば今年で8歳です。
記録によれば出産回数は5回なので、7歳なら上記の通りまだ繁殖に使えますが、8歳以上は《高齢》となり使えません。
つまり、今年6月には不用品となることが確定していたので、5月上旬に遺棄したものと思われます。

猫は年に2~3回の妊娠出産が可能な生き物ではありますが、母体のためには次の妊娠までは最低でも8か月以上空けることが望ましいとされています。
しかしこの記録では1回目と2回目の間は4か月、2回目と3回目の間は5か月、3回目と4回目の間は4か月しか空いていません。

猫は出産後2か月は子育てをします。生まれた子猫が離乳するまでです。
そして猫の妊娠期間は約2か月です。
これがどういうことか分かりますか?
子育てが終わるか終わらないかの時期に、すでに次の妊娠をしている(させられている)ということです。
猫は子宮の修復が早く、繁殖による子宮へのダメージは少ないと言われていますが、それにしても4か月スパンは酷使しすぎだと思います。

しかし年齢が分かったことは大きな収穫でした。
おかげで今後、年齢にあったフードやケアなどが行いやすくなります。

残念ながら、捨てるところをこの目で見たわけではないので、「捨てた」というのはあくまで客観的事実に基づいた憶測です。

客観的事実は
・同一猫が親猫として紹介されていること
・ブリーダーの猫舎から8km以上離れた場所で発見されたこと
・3か月もの間、誰からも届け出や問い合わせがなかったこと
この3つです。
※保護後すぐ迷子ペットNETに掲載しましたが、どなたからも問い合わせはありませんでした。8/16削除済

迷子になったのであれば、「探しています」だの「いなくなってしまいました」だのと投稿するかもしれないと思って、毎日のようにブリーダーが発信している情報を確認しに行きましたが、ついぞシトラスに関する投稿は1度もアップされませんでした。
5月半ばに「最近の写真が見たい」というメッセージを送りましたが、それにも反応がありませんでした。
そもそも、シトラスがそこに登場したのは2021年の1月が最後です。
掲載しなくなって1年以上経っている猫を捨てても誰も気づかない、判らないと思ったんでしょうか。

8/16に保健所を通じて、ブリーダーに電話で確認を取ってもらったところ「そのくらいの時期に1匹いなくなった猫がいる」と答えたそうです。
保健所にも警察にも届け出ず、「いなくなった」でおしまいですか。
「いらなくなった」の間違いでは?ムキーむかっ

 

このブリーダーはいわゆる高齢ブリーダーではありません。

そこそこ若いことを確認済です。

インターネットを使って情報発信もしてらっしゃいます。

探し方が分からなかった、いなくなったことを発信できなかったわけではないのです。

しかし「自分なりに探してはいた」と言われれば、それ以上は追及できません。
このブリーダーを罪に問うことはできないでしょう。
残念ですが、こういう記事を書くだけで精一杯です。証拠がないものはどうしようもありません。

とても悔しいです。

 

さほど数は多くありませんが、猫舎には他の猫もいるはずです。

残っている子たちが適切に管理されているか、保健所に立ち入り調査を行ってもらう予定です。

みんな元気でいると良いのですが。

 

 

シトラスちゃん、里親募集を開始しました。

これまでの生活を鑑みて、なるべく穏やかに過ごせる環境の里親様の元へ送り出したいと思っています。
お問い合わせ、お申し込みお待ちしております飛び出すハート

 

【追記】2023年6月現在

シトラスちゃんは2022年9月に里親さんが決まり、大切に可愛がられています。

忖度抜きで厳正な審査を行い、保護主さんのおうちの子になりましたラブラブ

 

また、当該ブリーダーがこの記事に気付いたらしく、WEBや記事を全削除されたようですが、証拠となり得る投稿はすべて保存してあります。

無かったことにはさせません。

一生許しません。